家計調査によると、宿泊料の全国平均は2,916円である一方、秋田市や長野市では4〜7千円台と急増し、岐阜市や静岡市では1千円未満に落ち込むなど、地域差が顕著です。背景には観光需要の回復や高齢世帯の動向、インバウンド、地域経済力の違いが影響しています。特に秋田や長野の急騰はイベントや地元誘客策が影響し、逆に岐阜・静岡の大幅減は宿泊控えや地元回帰が要因と見られます。今後はインフレと高齢化、国内旅行志向の高まりがカギとなります。
宿泊料の家計調査結果
宿泊料の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 秋田市 | 山形市 | 盛岡市 | 相模原市 | 長野市 | 北九州市 | 浜松市 | 松江市 | 東京都区部 | 福岡市 |
最新値[円] | 2916 | 7692 | 5987 | 5457 | 5418 | 4527 | 4432 | 4172 | 4134 | 4013 | 3762 |
前年月同比[%] | +22.99 | +420.1 | +121.1 | +35.75 | +33.88 | +549.5 | +29.89 | +59.6 | +151.5 | +22.01 | +52.18 |
宿泊料の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 岐阜市 | 山口市 | 堺市 | 松山市 | 宮崎市 | 仙台市 | 静岡市 | 高松市 | 宇都宮市 | 広島市 |
最新値[円] | 2916 | 462 | 723 | 763 | 765 | 768 | 835 | 996 | 1014 | 1113 | 1284 |
前年月同比[%] | +22.99 | -70.91 | -29.26 | -73.8 | +28.57 | -19.07 | -22.47 | -75.14 | -61.66 | -77.85 | -24.65 |
これまでの宿泊料の推移


詳細なデータとグラフ
宿泊料の現状と今後
総務省の家計調査では、2025年3月時点で全国平均の「宿泊料」支出額は2,916円とされています。これは観光業界の回復傾向や、コロナ禍後の外出機会の増加を反映した結果です。ただし、都市ごとの数値には極端な差がみられます。秋田市では7,692円、長野市で4,527円など、全国平均を大きく上回る地域がある一方、岐阜市(462円)や静岡市(996円)などでは1,000円未満に落ち込んでいます。
この背景には、以下のような社会的・経済的な要素が複雑に絡み合っています。
宿泊料が高騰する都市の特徴
観光需要とイベントの影響
秋田市や長野市、山形市など宿泊料が突出して高い都市では、観光資源や季節イベントが誘因となっていると考えられます。秋田市は竿燈まつりなどの地域イベントが観光を刺激しており、長野市も善光寺詣など国内観光地としての再評価が進んでいます。
高齢世帯の支出パターン
これらの都市では高齢者単身・夫婦世帯の割合が高く、リタイア後の生活の中で「近場の宿泊を含む旅行」を楽しむ傾向が支出に反映されている可能性があります。
コロナ後のリベンジ消費
特に前年同期比で+549.5%(長野市)、+420.1%(秋田市)という極端な伸びは、コロナ禍で抑制された旅行・帰省需要の「反動増」とも読み取れます。
宿泊料が低迷する都市の特徴
岐阜市・静岡市などの急減要因
岐阜市(-70.91%)、静岡市(-75.14%)などでは、宿泊需要そのものの減少や、無料あるいは格安な日帰り施設利用の増加が背景にあると推測されます。
また、高齢者が支出を控える「節約志向」や、「地元に泊まらず日帰りを選ぶ」傾向も、これらの都市ではより顕著です。
地域経済の停滞と移動コスト
地方都市においては宿泊ニーズの発生要因が限られ、移動の主目的が「用事」や「家族訪問」に偏ると、宿泊が省略される傾向もあります。
世代間の差異と家計構造の影響
若年層 vs 高齢層の宿泊支出行動
20〜30代の若年層は宿泊を伴う旅行を積極的に行う反面、宿泊先は「格安」志向が強く、支出額を抑える傾向にあります。一方、高齢者は旅行頻度は少ないものの、質を重視するため一回あたりの宿泊支出が高額になりがちです。
世帯構成と支出平均への影響
家計調査は1世帯単位での平均を示すため、単身世帯や高齢者世帯の多い地域では、支出の変動が極端に現れる傾向もあります。
今後の宿泊料支出の予測と課題
インフレと価格上昇の影響
燃料費・人件費の高騰を背景に、宿泊業界では今後も価格の上昇が予想されます。これにより、宿泊料支出は全国的に緩やかに増加していく可能性が高いといえます。
地域間格差の固定化
都市によっては観光資源や誘客策により宿泊料が上がる一方、アクセス性が低く観光資源の乏しい都市では引き続き低迷が続くと予想され、格差はむしろ広がる可能性があります。
公的支援と観光政策の役割
自治体の旅行補助や「ふるさと納税」の宿泊券の導入など、政策的な仕組み次第で宿泊料支出が一時的に増減する場合もあります。こうした支援策は特に中小都市の宿泊需要を左右する要因となり得ます。
結語:地域の個性が映し出される「宿泊料」
宿泊料の支出額は、単なる家計の一部ではなく、地域経済・文化・観光資源・世代構造が複雑に絡み合う「社会の鏡」とも言えます。都市によって極端な増減が見られる現状は、日本の地域格差や旅行・消費に対する意識の違いを浮き彫りにしています。今後もこの動向を丁寧に読み解くことで、観光政策や家計支援のヒントが得られるでしょう。
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