家計調査から見る子供用洋服支出の都市間格差と今後の展望

家計調査から、二人以上世帯における子供用洋服の支出が都市によって大きく異なることが明らかになりました。川崎市や鹿児島市では大きな増加が見られる一方、神戸市や佐賀市では激減しています。本稿では、これまでの支出動向、都市・世代ごとの特徴、少子化や家計圧力の影響を整理しつつ、今後の支出傾向の予測を解説します。

2008年から2025年3月までの家計調査における子供用洋服の支出は、全国平均で440.9円と極めて低水準にあることが示されています。この金額は、過去十数年にわたり縮小傾向が続いてきた家庭支出の1部であり、特に少子化と家計の圧力を反映した項目の1つです。

背景には、以下のような要因があります。

• 少子化による「子供のいる家庭」自体の減少

• フリマアプリ（メルカリなど）の普及による中古衣料の活用

• 保育園・幼稚園・学校での制服やジャージ支給の普及

• 親の節約志向の強まり

これらにより、かつては家族のイベントごとに新調していた子供服も、いまや「できるだけ買わない」が前提になっています。

都市別支出額の極端な差異

最新データで最も支出が高かったのは川崎市（1670円）、次いで鹿児島市（1453円）、岡山市（977円）と続きます。逆に最も低かったのは神戸市（18円）、佐賀市（73円）と、1か月あたりとは思えない数字です。

この都市間の格差には以下のような背景があります。

高支出都市の特徴

• 川崎市・東京都区部などの都市部：高所得家庭が多く、ファッションへの意識が高い。新品購入が主流で、子供にも「見た目」を重視する傾向。

• 鹿児島市・岡山市：1部地域では、入園・入学シーズンの集中購入や、孫世代への支援（祖父母購入）の文化が支出を押し上げている可能性がある。

低支出都市の特徴

• 神戸市・佐賀市・千葉市など：前年同期比で大幅減。これは「買わない家庭が増えている」だけでなく、「買っても記録されないルート（中古品・フリマ）」の比率増加も影響。

• 地方都市：子供の数自体が少なく、必要最低限しか購入されない傾向が強まっている。

世代間・ライフスタイルによる影響

若年層の親（20〜30代）を中心に、以下のような傾向が顕著です。

• 節約志向と物の使い回し：兄弟間での「おさがり」活用、親族や友人からの譲り受けが1般化。

• サブスクリプション型子供服サービスの利用： 都市部では1定の広がりを見せており、「毎月定額で借りる」スタイルが普及している家庭もある。

• SNSでの見栄消費の減退： コロナ禍以降、外出イベントの減少とともに「映える服」を買う機会が減少。

また、祖父母世代が孫に洋服を贈る文化も地域によって濃淡があり、この有無が都市ごとの差にも関与しています。

問題と今後の予測

現状の課題

1. 家計支出の圧縮：食料品・公共料金の高騰が続く中で、可処分所得が圧縮され、衣料は「後回し」になりやすい。

2. 低価格・低品質化の進行： 低価格帯の商品が主流となり、耐久性や安全性に疑問を持つ声もある。

3. 地元商店街・子供服専門店の衰退： 消費の縮小は、地場の小売業者にも打撃を与えている。

今後の展望

• 持続的な低水準維持の可能性：子供の数の減少が止まらない限り、支出全体が劇的に増加することは考えにくい。

• 特定都市での変動： 高所得層が集中する都市（川崎市など）では今後も支出が持続的に高い水準で推移する可能性あり。

• フリマアプリのさらなる浸透： 地方でも中古活用が1般化すれば、都市格差はさらに広がる懸念がある。

• エコ・サステナビリティ視点の普及： 「新品を買わないこと」がむしろ倫理的選択として認識され、買わないことへの肯定感が高まる可能性も。

政策・社会的対応の必要性

子供服の支出が低迷し続けることは、貧困の可視化でもあります。

• 支援物資としての子供服供給：行政やNPOによる支援強化が求められる。

• 教育現場での意識改革： 制服やジャージに偏るのではなく、「着替え」や「衣類の選択」に対する教育も必要。

• 地域ごとの実態把握と政策設計： 都市による支出差は、そのまま家庭状況や教育環境の差でもあるため、家計調査の地域別分析は重要な手がかりとなる。

まとめ

子供用洋服の支出は、単なる消費行動ではなく、家庭の経済力・価値観・地域社会のあり方を反映した象徴的な指標です。これからの日本社会が「子供に何を与え、どう育てるか」を考える上で、家計調査の数値は、きわめて貴重な社会の鏡といえるでしょう。