都市差が顕著な子供用下着支出の実態と今後の見通し

家計調査によると、二人以上世帯での子供用下着支出は全国平均で約93.68円と低水準ながら、都市間の格差が非常に大きい。盛岡市や岡山市などでは急増する一方、宇都宮市や宮崎市などではほぼ消費が見られない地域もある。背景には少子化や育児スタイルの変化、地域経済、物価差などが絡んでいる。今後は支出動向がさらに二極化し、人口減少地域では支出が一段と減少する可能性が高い。

子供用下着類は、2人以上世帯の家計支出の中でも比較的小さな項目に見えるが、家族構成や育児スタイルの変化を反映する指標の1つである。2008年から2025年までの長期的データを概観すると、子供用下着類の全国平均支出額は年々減少傾向を見せていた。しかし2024年〜2025年にかけては1部都市で急増が見られ、平均もわずかに持ち直している。

背景には、以下のような構造変化がある：

• 少子化の進行により、子供のいる世帯自体が減少している。

• フリマアプリや中古衣類の普及により、新品購入機会が減少。

• 下着類をセットで購入する「まとめ買い」傾向の拡大と、1枚単価の把握困難化。

• 子供用下着に対する品質意識の変化と、安価商品志向の進行。

都市間の支出格差とその背景

今回のデータでは、最も支出が高い盛岡市（272円）と最も低い宇都宮市（12円）では実に20倍以上の差がある。この大きな都市間格差は偶然ではなく、いくつかの地域要因が絡んでいると考えられる。

高支出地域の特徴：

• 盛岡市・岡山市・津市など：近年の人口回復や、地場企業の子育て支援策などが奏功し、子育て家庭の消費活動が活発化。

• 横浜市・名古屋市など：都市部における消費回復と、共働き世帯の増加が影響。利便性重視で新品購入を選ぶ傾向。

低支出地域の特徴：

• 宇都宮市・宮崎市・福井市など：少子化の進行が早く、実需が減少。祖父母など親族からの衣類支給が主流となっているケースも。

• 札幌市・奈良市：物価高騰の中で支出抑制が強まっている可能性も。

また、山口市・山形市・相模原市・神戸市・青森市では、前年同期比で「-100%」、つまり支出がゼロとなっており、調査上の統計外となった可能性すらある。

世代間・家族構成の変化と子供用下着の消費行動

かつては親が「成長に合わせて毎年買い替える」ことが当然だったが、現代では以下の変化が見られる：

• お下がり文化の継続：兄弟姉妹間や親戚間でのお下がり利用は根強く、支出を抑制。

• フリマアプリ（メルカリ等）の普及：わずかな使用感のあるブランド下着が安価で入手できるようになり、新品購入を避ける家庭が増加。

• 学校指定下着の存在：地域や学校によっては、色・素材の指定があるため、専用店でまとめ買いされ、家計支出に表れにくくなる。

これらの要素は世代間でも異なる。若年層の親はネット購入に抵抗が少なく、中古活用にも積極的だが、年配層は店頭購入を優先する傾向があり、その分価格は高く出やすい。

今後の見通しと政策的示唆

今後、子供用下着類の家計支出はどうなるか。次のような予測が立てられる：

• 支出の2極化が進行：都市部や子育て支援の充実した地域では支出が増えるが、地方や過疎地域ではゼロ近辺まで落ち込む可能性。

• リユース・サブスク型衣類サービスの拡大：育児世代の合理化志向により、定額制や貸出型の下着提供サービスも浸透するかもしれない。

• 物価高騰が影響：仮に消費税引き上げなどがあれば、必需品である下着でも購入タイミングをずらす行動が増加し、支出はより不安定化する。

1方で、子供用下着を含む育児関連支出は、地域経済の健全性や人口構成の間接的指標でもある。今後、自治体単位での子育て支援策が功を奏すれば、都市別に支出傾向が明確に2極化する可能性も高まる。

まとめ

子供用下着類の家計支出は、単なる衣類消費の問題にとどまらず、少子化・家族構成・地域経済・育児文化など多様な要因が交錯する象徴的な支出項目である。今後も都市間格差や支出傾向の分化は進むだろうが、その背後にある社会構造の理解と支援が必要不可欠である。