婦人用スーツ・ワンピース支出の年齢別傾向と今後の予測｜年代ごとの特徴を分析

婦人用スーツ・ワンピースの年齢別支出では、45〜49歳層が突出して高く、約2675円と他年代を大きく上回る。一方、60〜64歳では787円と大きく落ち込む。近年は多くの年代で支出が減少傾向にあり、特に50代後半〜60代前半にかけては顕著である。背景には職場環境の変化やカジュアル化、リモートワークの影響、ファッションへの関心度の年齢差などがある。今後は中高年層での実用品化と若年層での非購入傾向が進む見通し。

物価上昇が生活支出に影響する中、衣料費においてもその影響は顕著である。特に、婦人用スーツ・ワンピースといったフォーマル要素の強いアイテムは、使用目的が限定的であるため、支出額の変動は年齢層やライフスタイルに強く左右される。

年齢別支出額の現状分析

2025年3月時点のデータでは、全体平均は896.5円。しかしながら、年齢別に見ると、45〜49歳が2675円と最も高く、他年代を大きく上回る。これに対し、60〜64歳はわずか787円で、30代後半〜40代前半も相対的に低い。

上位層：

• 45〜49歳：2675円（+5.3%）

• 45〜54歳：2438円（-7.7%）

• 50〜54歳：2248円（-17.4%）

下位層：

• 60〜64歳：787円（-30.9%）

• 35〜44歳：1084円（-14.2%）

この支出差には、職業活動の中心世代かどうかが大きく関係していると考えられる。

年齢層ごとの背景と行動傾向

45〜49歳層：キャリア全盛期と身だしなみ意識

この層は管理職・中堅層として、職場での見た目に最も気を遣う時期であり、ビジネススーツやワンピースの購入頻度が高い。復職や再就職組も多く、投資的に衣類購入を行う傾向がある。

50代前半〜後半：役職継続と実用主義

50代前半は支出がまだ高めだが、徐々に減少。昇進や定着が一段落し、買い替えより“長く着る”傾向が出てくる。50代後半からは職場リタイアが視野に入り、必要性が急減。

60代前半：引退と衣料支出の低下

定年退職や再雇用終了に伴い、スーツ・ワンピースの購入は大幅に減少。目的が失われることで、支出自体が激減。これが最も支出の少ない年代となる要因である。

30代後半〜40代前半：育児期・在宅勤務の影響

この層は育児や在宅勤務が重なり、フォーマル衣料のニーズが相対的に低い。加えて、服飾に対するコスト意識も強く、節約傾向にある。

ここ10年の傾向と問題点

婦人用スーツ・ワンピースの支出は、ここ10年でカジュアル化とフォーマル需要の減退により減少している。とくにコロナ以降は、在宅勤務やオンライン会議が増えたことで、スーツ着用の必要性が激減。さらに、服のサブスクや中古市場の活性化により、「購入せず借りる」ニーズも増加した。

また、スーツスタイルの多様化も要因の一つで、「セットアップ風カジュアル」など安価な選択肢が増えていることも支出抑制に寄与している。

今後の支出傾向の予測と課題

減少傾向が続く層（50代後半〜60代）

この年代では着用シーンが減るため、支出減は続くと予想される。さらに、年金生活への移行で支出全体が見直され、フォーマル衣料は「後回し」になりやすい。

増加可能性のある層（30代後半〜40代後半）

育児明けや職場復帰により、需要の回復が期待される層。ただし、価格重視傾向が強いため、選ばれる商品は「高品質低価格」「着回し力の高い」ものに限られるだろう。

分極化の進行

富裕層・管理職層では高価格帯のスーツ購入が継続される一方、若年・退職層では支出が極端に少なくなる。“必要な人が買う”時代が一層強まっていく。

企業側の対応とマーケティングの課題

企業は、年齢層に合わせた商品企画が求められる。たとえば、

• 45〜54歳層向けにはラグジュアリー＆機能性重視

• 30代には安価で着回しの効くセットアップ

• 60代には礼装や通院向けなど限定需要に特化

また、カスタマーの価値観が「見た目」より「快適さ」「価格」にシフトしていることを踏まえ、店舗・オンラインでの訴求方法を再検討する必要がある。

まとめ

婦人用スーツ・ワンピースの支出は、年齢によって大きく差があり、その背景にはライフスタイル、職場環境、意識の変化が複雑に絡み合っている。今後は特定層への集中消費が進み、広く普及する衣料から“選ばれた人の服”へと変化していくだろう。