女性用洋服の支出動向を家計調査から読み解く:都市差・世代差・今後の傾向

洋服



総務省の家計調査によれば、2025年3月時点で二人以上世帯の女性用洋服の平均支出は2,593円と、男性用を上回る。特に川崎市やさいたま市、水戸市など都市部で高く、北九州市や秋田市では著しく低い。過去の傾向や地域差には世代構成、都市の商業構造、物価感覚の違いが影響している。今後は高齢化やEC利用の拡大により、都市間格差や世代ごとの購買行動にさらなる変化が予想される。

女性用洋服の家計調査結果

女性用洋服の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 川崎市 さいたま市 水戸市 京都市 富山市 名古屋市 盛岡市 広島市 大阪市 徳島市
最新値[円] 2593 6103 5516 5165 4866 4511 4262 4247 4149 3828 3728
前年月同比[%] +3.503 +193.8 +29.88 +254 +174.1 +148.8 +254.3 -0.352 +9.184 +48.43 +95.49

女性用洋服の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 北九州市 甲府市 秋田市 大津市 那覇市 福島市 静岡市 佐賀市 仙台市 長野市
最新値[円] 2593 702 802 842 985 1130 1222 1249 1294 1319 1521
前年月同比[%] +3.503 -79.59 -23.62 -35.77 -54.75 -3.419 -41.19 -34.4 -39.53 -64.45 -1.362

 

これまでの女性用洋服の推移

女性用洋服の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

女性用洋服の洋服現状と今後

2025年3月時点の家計調査によれば、2人以上世帯における1か月あたりの女性用洋服への平均支出は2,593円となっており、男性用(1,762円)を大きく上回っています。これは従来から続く「衣服への消費意欲の性差」を反映したものであり、女性はライフステージに応じてTPO(時・場所・場合)に配慮した服装を求められることが多く、それが支出額に現れやすい傾向があります。


都市別支出額に見られる地域性

上位都市では、川崎市(6,103円)を筆頭に、さいたま市(5,516円)、水戸市(5,165円)など、主に首都圏およびその周辺都市で高水準が目立ちます。これらの都市に共通するのは以下の要素です。

  • 高所得層や共働き世帯の割合が高い

  • 商業施設が充実しており、衣料品の購買機会が多い

  • 首都圏志向のファッション感度が高い

1方、北9州市(702円)甲府市(802円)など、地方中核都市では支出額が1,000円未満にとどまり、格差は最大で8倍近くにもなっています。

このような地域間格差には、地元に根ざした消費文化、所得水準、店舗密度、若年層比率の違いが複雑に絡んでいます。


前年比から見る購買動機の変化

注目すべきは、名古屋市(+254.3%)水戸市(+254%)、京都市(+174.1%)などの急上昇です。これは1時的な特売や季節要因だけでは説明しきれず、以下の可能性が考えられます。

  • コロナ禍で控えていた購買の反動消費

  • 百貨店・モールでのリニューアルオープンやセールの影響

  • 地元のブランドやアパレルECの台頭

対して、北9州市(-79.59%)仙台市(-64.45%)では大幅な減少がみられ、購買意欲の地域的低下や実店舗の閉店、人口構成の高齢化などが影響していると考えられます。


世代構成と消費性向の影響

女性用洋服の支出傾向は、世代間の違いによっても大きく異なります。

  • 20〜40代女性:トレンド志向が強く、ファッションサブスクやネット購入が定着。支出は高め。

  • 50〜60代女性:品質重視の傾向が強く、高額商品を年に数回購入する傾向。

  • 70代以上:外出機会の減少とともに衣料品購入頻度が低下。

また、世帯主の年齢が高い都市では、全体として洋服への支出が抑えられる傾向があります。たとえば、秋田市や大津市などは高齢化率が高く、支出もそれに応じて少なくなる傾向が見て取れます。


EC市場の拡大と今後の展望

EC(電子商取引)の拡大は女性用洋服市場に大きな変革をもたらしています。特に地方都市では、実店舗に頼らない購買スタイルが増加しています。これにより、

  • 地域に関係なくトレンド商品を購入できる

  • 都市部と地方のファッション格差が徐々に縮小

  • 実店舗の役割が限定的に

なっています。ただし、ネット通販が主流になると「実物を見る・試着する」という購買体験が失われることもあり、アパレル業界ではオンライン・オフラインの融合が進められています。


今後の推移と注目点

今後の動向として以下のような展開が予測されます。

  1. 高齢化による購買額の安定化・低下傾向若年層人口の減少により、可処分所得が減り、ファッション支出は緩やかに低下する可能性がある。

  2. 都市別格差の縮小ECの拡充やファストファッションの定着により、地域間の価格差・購買意識差が縮まる。

  3. 多様なファッションスタイルの共存若者のジェンダーレス志向、高齢者の機能性重視といった価値観の多様化により、従来型の「女性用」カテゴリー自体が変化する可能性がある。

  4. サステナビリティ意識の広がり特に都市部では、環境負荷の少ない素材やリユース・リサイクル商品への支持が拡大しており、「買う服」の意味が変わりつつある。


まとめ

女性用洋服に対する支出は、都市の構造、世代構成、消費価値観、そしてデジタル技術の進化によって常に変化しています。今回の家計調査データは、単なる金額の増減だけではなく、「どう服を買い、どのように自分を表現しているか」を映す鏡でもあります。今後は、個人のライフスタイルや都市の機能に応じた多様なファッション消費が進むことが予想されます。

 

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