家計調査のデータを基に、2008年から2025年までの女性用シャツ・セーターの支出動向を分析。全国平均は1230円だが、高知市や広島市などでは2000円超を記録し、都市間で大きな開きがある。一方で、北九州市など低迷する地域では800円未満の水準が目立つ。本稿では、このような支出額の地域差の背景、世代ごとの志向、ファッション意識や購買経路の変化に着目し、今後の推移についても予測する。
女性用シャツ・セーターの家計調査結果
女性用シャツ・セーターの多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 高知市 | 広島市 | 徳島市 | さいたま市 | 富山市 | 山形市 | 名古屋市 | 川崎市 | 熊本市 | 静岡市 |
最新値[円] | 1230 | 2731 | 2556 | 2493 | 2127 | 2049 | 2038 | 1891 | 1797 | 1642 | 1575 |
前年月同比[%] | -4.677 | +314.4 | +27.99 | +75.69 | +3.857 | +108.4 | +26.51 | +87.6 | +40.5 | -23.02 | +24.21 |
女性用シャツ・セーターの少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 北九州市 | 千葉市 | 長崎市 | 秋田市 | 和歌山市 | 前橋市 | 佐賀市 | 新潟市 | 福島市 | 長野市 |
最新値[円] | 1230 | 371 | 533 | 544 | 647 | 678 | 695 | 698 | 721 | 774 | 838 |
前年月同比[%] | -4.677 | -86.71 | -65.43 | -45.27 | -37.06 | +11.7 | -50.04 | -69.09 | -15.08 | -50.73 | -9.405 |
これまでの女性用シャツ・セーターの推移


詳細なデータとグラフ
女性用シャツ・セーターのシャツ・セーター現状と今後
女性用シャツ・セーターへの支出は、生活の質やファッション志向、また都市ごとの商業環境を反映する鏡のような存在です。2025年3月時点での全国平均は1230円であるものの、都市によってその金額は大きく異なり、高知市は2731円と突出し、北9州市は371円と10分の1以下という格差が見られます。この格差の背景や推移には、単なる物価や流行の変化以上のものが存在しています。
過去から現在までの女性用シャツ・セーター支出の推移
2008年から2025年までの期間、女性用シャツ・セーターの支出額は年によって増減を繰り返しています。以下のような傾向が確認できます:
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2008年〜2012年:リーマンショック以後の経済低迷期にあり、ファッション支出は全体的に縮小。ファストファッションの台頭もあり、単価が抑えられる傾向。
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2013年〜2019年:消費税増税とともに1時的な買い控えが見られたが、ユニクロやGUなどのブランドが中価格帯で支持を集め、支出が安定。
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2020年〜2022年:コロナ禍により外出機会の減少、在宅勤務の定着により、着飾る目的の支出は減少傾向に。
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2023年〜2025年:経済活動の正常化とともに反動的な需要回復。特にファッション回帰が始まり、1部都市では大幅な増加。
都市ごとの支出格差とその要因
都市によって支出額にこれほどまで差が出る理由には、以下のような地域的・文化的要因があると考えられます。
高支出都市の特徴(高知市、広島市、徳島市など):
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地元百貨店や地域ブランドへの依存度:価格が高めのシャツ・セーターを扱う店舗が多く、選択肢が限られる傾向。
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中高年女性の比率が高い:品質や素材にこだわる層が多く、1点当たりの単価が上がりやすい。
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購買回数より単価重視:安価なものを何枚も買うより、よい物を数枚という購買傾向。
低支出都市の特徴(北9州市、千葉市、長崎市など):
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若年層中心で支出抑制傾向:ファストファッションへの依存や節約志向が強い。
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EC依存度の高さ:Amazon、楽天などで安価に調達する動きが都市部やネット環境の整った地域で進行。
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衣料品全体の支出圧縮傾向:生活必需品や食費へのシフトで、衣料支出が後回しになる傾向。
世代間の支出傾向の違い
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若年層(20代〜30代):ECを活用し、価格重視。トレンド変化が早く、1着にかける金額は低め。
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中年層(40代〜60代):素材・着心地・長持ちを重視。百貨店や専門店の利用が多く、支出額が高くなる。
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高齢層(70代以上):衣類自体の買い替え頻度が減少。リユース・リサイクル利用が進む1方で、必要な際は質重視。
女性用衣料品を取り巻く構造的変化
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ファッションの「カジュアル化」:職場や外出着のドレスコード緩和により、セーターやシャツの使い回し需要が増加。
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気候の影響:温暖化で厚手の衣類の需要が減る1方、通年着られる軽量なセーターなどが人気。
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アパレル市場の寡占化とEC化:ユニクロやZARAなどが市場を席巻する中、価格競争が激化。地方の小売は価格設定が割高になる傾向も。
今後の見通しと予測
今後、女性用シャツ・セーターの支出は以下のように推移すると予測されます:
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短期(2025年〜2027年):物価上昇や円安の影響で価格はやや上昇。都市ごとの差は維持されつつ、全国平均はやや上昇傾向。
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中期(2028年〜2030年):サステナブルファッションの浸透により、高単価でも長く使える商品への支持が広がる。リユース市場も成長。
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長期(2031年以降):人口減少・高齢化が進む中で、衣料消費全体が縮小傾向。ただし高齢者層の「質重視」が支出の下支え要因に。
おわりに
女性用シャツ・セーターという1つの衣類カテゴリを通しても、都市・世代・時代によって支出の在り方は大きく異なります。単なる金額の大小ではなく、その背後にあるライフスタイル、価値観、消費行動の違いを読み取ることで、家計調査データはより豊かな解釈を可能にします。今後も衣料支出を通して、日本の消費の姿を見つめていく必要があります。
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