2025年3月の家計調査によれば、勤労世帯における自動車等購入の全国平均は2.099万円で、富山市が29.07万円と突出。他にも鳥取市や津市など地方都市で高額な支出が見られる。一方、佐賀市や前橋市などでは前年から支出ゼロ。都市部ではカーシェア普及や公共交通機関の整備により購入が減少し、地方では生活インフラとしての車の重要性が高いため支出が集中する。今後はEV化やサブスクリプション型サービスの浸透により、購入行動の再構築が予想される。
自動車等購入の家計調査結果
自動車等購入の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 富山市 | 鳥取市 | 津市 | 岡山市 | 甲府市 | 長崎市 | 金沢市 | 北九州市 | 千葉市 | 名古屋市 |
最新値[万円] | 2.099 | 29.07 | 17.61 | 14.5 | 9.309 | 9.031 | 8.85 | 7.874 | 6.934 | 6.02 | 5.888 |
前年月同比[%] | +8.84 | +2345 | +84.09 | +60.09 | +6.987 |
自動車等購入の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | さいたま市 | 京都市 | 仙台市 | 佐賀市 | 前橋市 | 和歌山市 | 大分市 | 宇都宮市 | 宮崎市 | 山口市 |
最新値[万円] | 2.099 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
前年月同比[%] | +8.84 | -100 | -100 | -100 | -100 | -100 |
これまでの自動車等購入の推移


詳細なデータとグラフ
自動車等購入の現状と今後
家計調査における「自動車等購入費」とは、新車・中古車を含む四輪車・二輪車の購入にかかる一括費用やローンによる支出を指します。これは耐久消費財の中でも非常に高額な部類に入る支出であり、年単位での変動が大きい特徴があります。また、購入のタイミングや地域の交通事情、生活インフラの整備状況によって支出の分布に大きな差が出やすいのも特徴です。
都市間格差 ― 地方に偏る高支出の実態
2025年3月時点で、最も自動車購入費が高かったのは富山市の29.07万円でした。これは全国平均(2.099万円)と比べて10倍以上の水準であり、地方都市における自家用車依存の現実を如実に示しています。次いで鳥取市(17.61万円)、津市(14.5万円)など、いずれも公共交通の選択肢が限定されている地域です。
これに対し、佐賀市や前橋市、和歌山市、大分市、宮崎市では自動車購入費がゼロ(前年比-100%)となっており、これは統計的な「購入者がいなかった」または「購入がローン等で分割支払いのため当該期間に発生しなかった」ことを示します。
世代間で異なる車購入の価値観と動機
若年層(20~40代)は、都市部では車を「持たない選択」を重視する傾向があります。カーシェア、サブスクリプション、ライドシェアなど「所有しない移動手段」の台頭によって、購入という行為自体が縮小傾向にあります。特に都市圏では駐車場代や維持費の高さがネックとなっており、「免許は持っているが車は所有しない」というライフスタイルが一般化しています。
一方で地方在住の中高年層(50代以降)では、通勤・買い物・医療機関への移動など生活の基盤が自家用車に依存しているため、一定周期での車買い替えが必要不可欠です。高齢化の進行により、安全性能の高い新車(特に軽自動車や小型車)への移行が進んでいることも高額支出の一因です。
自動車購入を取り巻く社会的要因と経済的背景
富山市のように自動車支出が高額な都市では、生活圏の広がりに加え、雪道・山間部といった交通環境が影響しています。四輪駆動車やスタッドレスタイヤ装備車など、地域特性に適した車種の需要が高く、これが車両単価を押し上げます。
また、近年は中古車価格の高騰や新車納車遅延、EV(電気自動車)やHV(ハイブリッド車)への需要増が家計に新たな負担を加えています。エコカー減税などの一時的な政策支援はあるものの、ローン金利や保険料の上昇が購入意思にブレーキをかけている側面もあります。
今後の予測 ― 所有から利用へ、そして再び所有へ?
今後、自動車等購入に関する家計支出は「二極化」が進むと考えられます。一つは都市部における「所有しない層」の増加です。特にZ世代以降では、車への愛着よりもコスト効率を優先する傾向が強く、必要なときだけ使うサービス型消費が主流になります。
もう一つは、地方部での「所有継続層」のさらなる安全志向です。自動ブレーキや自動運転支援など、安全技術の進化に対するニーズが高まり、それに応じて車両単価も上昇傾向が続くと見込まれます。
加えて、EVへの転換が本格化する中、充電インフラの整備が進む都市とそうでない地方との「自動車選択格差」も拡大する可能性があります。EVは初期費用が高く、地方の低所得世帯では選択肢になりづらいため、政策的な支援の拡充が求められます。
【結語】
勤労世帯における自動車等購入費は、住んでいる地域の交通環境、家族構成、世代によって大きく異なります。所有を前提とする地方と、利用を前提とする都市部の二極化は今後も進み、支出構造に地域性と世代性がより色濃く反映されるでしょう。今後は、生活インフラとしての車の役割を維持しつつ、持続可能な移動手段への移行をどのように進めるかが大きな課題となります。
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