自家産物の都市別格差と今後の生活スタイルへの影響分析

食料



自家産物とは家庭菜園などで収穫された食材を指し、地方都市で多く、金沢市や北九州市では全国平均の数倍にのぼる。高齢世帯や農業文化の根強い地域では増加傾向が顕著。一方で都市部では住宅事情やライフスタイルの制約から依然として少ない。今後は物価上昇や高齢化の進展を背景に、地方を中心に一定の増加が見込まれる。

自家産物の家計調査結果

自家産物の多い都市

2017年12月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 金沢市 北九州市 高松市 新潟市 奈良市 熊本市 岐阜市 佐賀市 高知市 福島市
最新値[円] 193.8 662 486 485 477 463 386 383 361 356 339
前年月同比[%] -16.67 +94.13 +89.11 -27.83 +120.8 +180.6 -30.82 -38.72 +310.2 +4.706 +70.35

自家産物の少ない都市

2017年12月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 川崎市 札幌市 東京都区部 横浜市 那覇市 盛岡市 大阪市 名古屋市 宇都宮市 相模原市
最新値[円] 193.8 0 0 20 39 39 40 44 46 50 53
前年月同比[%] -16.67 -62.26 +680 +85.71 +5.263 +2100 +206.7 -12.28 -78.71

 

これまでの自家産物の推移

自家産物の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

自家産物の食料費現状と今後

自家産物とは、自宅の畑や庭などで栽培・収穫した農作物や、自家捕獲した魚介類などを指し、金銭を介さず消費された食料として家計調査で特に記録されます。これは単なる食費の節約手段というだけでなく、生活スタイルや地域文化の表れでもあります。特に高齢世帯や地方部においては、収入の補完手段や生きがいとしても重要な役割を果たしています。


2008年から2017年の自家産物の動向

2008年から2017年の間、自家産物の全国平均はおおよそ200円前後で推移しています。2017年時点での平均は193.8円で、これは一日あたり約6〜7円分の食料を「自家調達」している計算になります。この間、都市化や共働き家庭の増加により、全体としては横ばい、またはやや減少傾向がみられましたが、地方では根強く自家栽培文化が残っており、平均を大きく上回る地域も多数存在します。


自家産物が多い都市の特徴と背景

金沢市、北九州市、高松市など

金沢市(662円)や北九州市(486円)、新潟市(477円)などの自家産物高水準地域には共通して、次のような特徴があります:

  • 持ち家比率が高く、家庭菜園や庭先農業の余地がある

  • 高齢者世帯の比率が高く、時間的余裕がある

  • 地域的に農業文化が根付いており、家庭での野菜栽培が一般的

たとえば金沢市の+94.13%や奈良市の+180.6%という増加は、都市部からのUターンやシニア層の生活見直し、あるいは物価高騰への対応として家庭菜園が再評価された可能性を示唆しています。

また、佐賀市の+310.2%という急増は、地域の取り組み(地産地消や都市農業支援)との関連も推察され、地方自治体の方針が住民の行動に影響を与えた例とも解釈できます。


自家産物が少ない都市の生活実態

東京都区部、横浜市、大阪市など

一方、東京都区部(20円)や横浜市(39円)、大阪市(44円)などでは自家産物はほとんど見られません。これには以下のような理由があります:

  • 住宅事情(マンション暮らしや庭なし戸建て)

  • 通勤・通学の忙しさから家庭菜園に割く時間的余裕がない

  • 気候や土壌条件が都市型で栽培に不向き

  • 若年層中心で、農作業に関心が薄い

ただし、横浜市や大阪市での急激な増加(それぞれ+680%、+2100%)は、マンションベランダ菜園や市民農園の利用者増加など、微細ながらも「都市農業」への関心の高まりを映している可能性もあります。


世代間の差とライフスタイルの影響

高齢者世帯では、リタイア後の時間と経験を活かして家庭菜園に取り組む人が多く、自家産物の金額は高くなりがちです。健康志向や趣味性、そして年金暮らしにおける節約意識も拍車をかけています。一方で若年・中年層の世帯では、家庭菜園に対する関心は限定的で、食料調達は基本的にスーパーやコンビニに依存しています。


今後の推移予測と課題

人口減少と高齢化、地方定住促進政策の影響で、地方を中心に自家産物は今後も一定の役割を果たすと考えられます。また、物価高が続く限り、家庭での自給努力が再評価される可能性も高いです。

ただし、都市部では限られた空間や時間の制約から急激な増加は難しく、「ベランダ菜園」や「市民農園」のような代替的な形式で少しずつ増加するにとどまるでしょう。自治体による農体験支援や補助金制度が増えることで、都市型自家産物の拡大にも期待が持てます。


政策と地域戦略の必要性

今後、食料自給率や生活防衛の観点から、自家産物の重要性は再評価されるべきです。特に地方では高齢者の生きがい対策、都市では子ども向け教育・体験の一環として、自家産物に関する制度設計が求められます。自治体主導の市民農園支援、道の駅との連携、自産自消運動の普及など、暮らしと地域経済を結びつける施策が効果的です。

 

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