国内パック旅行費の地域別支出では、関東・近畿など都市圏が高水準を維持する一方、地方では九州・東北のように大幅減も見られます。東海や北陸ではアクセス改善などで支出が急増しており、今後の成長が期待されます。物価上昇下では支出の地域格差が固定化しやすく、柔軟な地域支援と観光戦略の再構築が求められます。
地域別のパック旅行費(国内)
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 関東 | 近畿 | 大都市 | 中都市 | 東海 | 全国 | 小都市A | 九州・沖縄 | 東北 | 北陸 |
最新値[円] | 1950 | 2545 | 2434 | 2353 | 2341 | 2179 | 2177 | 2123 | 1822 | 1757 | 1637 |
前年月同比[%] | -5.097 | -0.43 | 5.186 | -9.916 | -4.953 | 108.9 | -1.76 | 23.29 | -30.62 | -17.74 | 16.93 |
これまでの地域別の推移


詳細なデータとグラフ
地域別の現状と今後
旅行支出は、所得水準、物価、交通利便性、生活環境、そして娯楽の選択肢に強く左右されます。国内パック旅行費の地域別データを分析することで、地域経済の成熟度や生活余力、さらには観光志向の傾向まで見えてきます。以下では2004年以降の長期的な流れと、2025年3月時点での最新データを踏まえ、地域ごとの支出構造と今後の動向を考察します。
地域別支出の現状と特徴
関東(2545円、前年比 -0.43%):高水準維持も横ばい
関東は国内最大の都市圏を抱えるエリアであり、平均所得が高く旅行先の選択肢も豊富です。支出は依然として全国トップですが、前年比ではわずかに減少しています。これはすでに支出が高水準にあることから伸びしろが小さいことや、インバウンドとの競合や物価高で近場志向が強まり、遠方のパック旅行が敬遠された可能性が考えられます。
近畿(2434円、前年比 +5.186%):安定した需要と観光意識
近畿圏は京都・大阪を中心とした国内有数の観光・文化圏であり、支出額は関東に次いで高くなっています。前年比でも安定した増加を見せており、観光に対する関心が根強い地域性が伺えます。また、パック旅行を通じて歴史的名所を再訪する動きや、地方再発見の機運が寄与していると考えられます。
大都市(2353円、前年比 -9.916%):都市生活の中で旅行の優先度が低下
大都市圏は支出額が高い一方で、前年比では大幅なマイナス。これは物価上昇に加え、都市部の生活コストの上昇、またレジャーの多様化(近場の娯楽やショートトリップ)により、パック旅行の魅力が薄れているためと考えられます。
中都市(2341円、前年比 -4.953%):支出額は高水準だが伸び悩み
中都市においても、大都市と同様に生活利便性が高く、近場でのレジャー選択肢が豊富なため、長距離移動を伴うパック旅行の頻度はやや減退傾向にあります。また、世帯構成の変化(単身や高齢者世帯の増加)も影響している可能性があります。
東海(2179円、前年比 +108.9%):突出した急増
今回最大の注目は東海地域です。前年比で2倍以上の支出増という驚異的な伸びは、コロナ禍以降のリベンジ旅行需要の高まり、また地元観光振興策(愛知・岐阜・三重などの割引キャンペーン)の効果が表れていると考えられます。大都市と地方の中間的な位置にある東海は、旅行アクセスの柔軟性とコストのバランスが取れており、今後も注目される地域です。
小都市A(2123円、前年比 +23.29%):健闘する地方都市
小規模都市においても、支出の底上げが見られます。高齢化が進む一方で、地域の観光資源や移動支援策が功を奏している可能性があり、シニア層の旅行需要が動いたことが考えられます。日帰りよりもパッケージの方が安心という需要の現れかもしれません。
九州・沖縄(1822円、前年比 -30.62%):大幅減で地域観光への逆風
大きな減少率が示された九州・沖縄地域は、観光資源が豊富でありながらも、航空料金や物価の上昇、災害リスクなど複合的な要因が影響したと見られます。また、観光地としての混雑回避や移動の困難さが旅行意欲を下げた可能性も否めません。
東北(1757円、前年比 -17.74%):観光復興の停滞
東北は震災以降の観光支援施策により一時的に需要が高まった時期もありましたが、今回は支出が大きく減少。人口減少や地域経済の低迷が影響しており、若年層の旅行意欲が低下していることも背景にあります。
北陸(1637円、前年比 +16.93%):堅調な増加だが水準は低め
北陸地域は観光地としての認知度がやや低く、全体的な支出水準は全国平均を下回ります。ただし前年比ではプラスであり、北陸新幹線延伸などの交通インフラ整備が効果を上げていると考えられます。
パック旅行の地域別格差と政策的課題
支出格差の固定化
関東・近畿といった大都市圏では旅行支出が高水準を維持している一方で、地方では大きく減少する傾向が見られます。これは所得格差だけでなく、アクセスの困難さや地域内消費志向の違いにも起因しています。
地域振興策の波及不足
観光支援キャンペーンが一部地域に集中していたり、情報が行き渡らなかったりすることで、支出の増加が地域ごとに偏っている現象も起きています。今後は地域の特性に応じた柔軟な観光政策が不可欠です。
今後の見通し
東海・北陸の台頭
今後はアクセス性が改善された東海・北陸地域における旅行支出の増加が期待されます。新幹線延伸や観光資源の再評価が後押しとなるでしょう。
大都市圏での支出停滞
物価上昇や娯楽の多様化により、大都市圏では今後も旅行支出の伸び悩みが予想されます。代わりに日帰り旅行や短距離移動型レジャーが主流になる可能性があります。
地方再生における旅行支出の活用
地方経済の再生には、パック旅行の需要喚起が重要です。移動支援や観光体験のパッケージ化などを強化することで、地域の旅行支出を底上げする施策が求められます。
まとめ
国内パック旅行費の地域別支出には、経済力、アクセス環境、政策対応といった複数の要因が影響しています。関東や近畿といった大都市圏では支出水準が高いものの伸び悩み、地方では格差が広がる中、東海や北陸のように今後の成長が期待される地域もあります。今後の旅行支出の地域間格差を是正するには、交通・宿泊・観光資源を一体化した新たな観光戦略が必要とされます。
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