北陸や四国で急増中:地域別に見る自賠責保険料の格差と今後の推移

自動車



2025年3月時点の自動車自賠責保険料の地域別月間支出は、全国平均801.6円。北陸が1334円と突出し、四国、東北、小都市部も高水準。一方、北海道や九州・沖縄では支出が減少傾向。背景には地方の車依存、公共交通の脆弱さ、高齢化と人口減少などがあり、今後も地域間格差は拡大する可能性が高い。政策的支援やモビリティの多様化が課題となる。

地域別の自動車保険料(自賠責)

1世帯当りの月間支出

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 北陸 四国 小都市B 東北 小都市A 東海 九州・沖縄 中国 中都市 北海道
最新値[円] 801.6 1334 966 934 901 874 834 786 774 755 724
前年月同比[%] +5.708 +42.52 +33.06 -8.521 -19.19 +4.048 +11.8 -10.58 +30.52 +14.92 -8.701

 

これまでの地域別の推移

自動車保険料(自賠責)
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

地域別の現状と今後

自賠責保険料(強制保険)は自動車を保有する限り必ず必要な経費であり、その支出は車の保有率使用頻度、さらには地域の交通インフラ状況を反映しています。2002年以降の長期データを見ると、地域によって自賠責保険料の支出傾向に大きな違いがあり、これは単なる所得や物価の違いではなく、暮らしそのものの構造の差異によって生まれていると言えます。


2025年3月時点の地域別データと傾向分析

最新のデータ(2025年3月)では以下の通りです:

地域 月間支出(円) 前年比増減率
北陸 1334 +42.52%
四国 966 +33.06%
小都市B 934 -8.521%
東北 901 -19.19%
小都市A 874 +4.048%
東海 834 +11.8%
九州・沖縄 786 -10.58%
中国 774 +30.52%
中都市 755 +14.92%
北海道 724 -8.701%

このように、地域によって1世帯当たりの支出は最大600円以上の差が見られ、特に北陸と四国では著しい増加が確認されています。


地域別の特性と自動車依存度

北陸(支出:1334円|+42.52%)

  • 冬季の降雪地域であり、鉄道・バスの便が悪い地域が多い

  • 高齢化と若年層の都市流出により、車が生活インフラとして必須

  • 家族単位での複数台保有が一般的(1人1台)

四国(支出:966円|+33.06%)

  • 地方中心都市が小さく、交通網が脆弱

  • 車通勤が標準で、通学にも用いられる

  • 高齢者の車利用継続が支出増加の一因

小都市A/B(874~934円)

  • 地方中核都市に近く、比較的若年層の車保有率が高い

  • ただし人口減少が進行しており、支出の増減は地域経済に強く依存

東北(支出:901円|-19.19%)

  • 高齢化率が非常に高く、免許返納が進んでいる地域も多い

  • 降雪や山間部での移動手段としての車の必要性は高いが、高齢世帯の減車傾向が影響

九州・沖縄、北海道

  • いずれも車社会ではあるが、カーシェア導入や若者の車離れが進行

  • 特に北海道は観光地としてレンタカー利用が中心で、地元世帯の車所有率が相対的に落ちてきている可能性がある


保険料支出の変化に影響を与える要素

高齢化と免許返納

  • 特に東北や北海道では、高齢者の免許返納が車保有減少の主因に

  • 北陸は反対に、高齢者でも車を手放せない生活圏が広がっており、保険支出が増加

公共交通インフラの有無

  • 都市部や中都市では鉄道・バス網が整っており、代替手段の選択肢が豊富

  • 地方や小都市では、自家用車以外に現実的な移動手段がない

若者の車離れ

  • 都市部で顕著な傾向だが、地方では車が就職や生活の必須条件となっており、支出は維持されやすい

  • ただし、所得低下や非正規雇用の増加で車の維持自体が困難な世帯も増加中


今後の推移予測と課題

今後の予測

  • 北陸・四国:支出は今後も高止まり~緩やか増加傾向

  • 東北・北海道:高齢化進行とともに支出は徐々に減少

  • 都市部:カーシェアや電動モビリティの浸透で支出減へ

  • 地方小都市:人口流出により一時的に支出が不安定化する可能性

想定される課題

  • 地域間格差の固定化:交通弱者の孤立が進むリスク

  • 保険制度の公平性:地方と都市で「必要性」が異なる中での一律徴収

  • 多様なモビリティ環境への移行支援:公共交通との接続性をどう補うか


政策的対応と社会的意義

今後、地域によっては自家用車の保有が「自由な移動の権利」に直結する時代へと移行していく可能性があります。以下のような取り組みが求められます:

  • 地方交通維持のための保険料還元制度

  • 高齢者・低所得者向けの保険料補助制度

  • 地域モビリティ政策と保険制度の連携設計

  • データに基づいた保険料設定の地域差検討

とくに保険会社や国は、単に保険料を徴収するだけでなく、その使用実態や地域特性を踏まえた柔軟な制度運用が必要です。


まとめ

自動車自賠責保険料の地域別支出は、その地域における生活様式・インフラ整備状況・人口動態を如実に反映する社会指標といえます。北陸・四国など車依存の強い地域では支出が急増し、逆に東北や北海道では高齢化に伴い減少傾向が見られます。今後は、地域格差の固定化を防ぐ政策と、モビリティの多様化への対応が不可欠となるでしょう。自賠責保険は単なる負担ではなく、「暮らしの足を守る制度」としての再設計が問われています。

 

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