地域別に見ると、北海道や大都市では挙式・披露宴費用が大きく増加し、コロナ後の反動や会費制文化が影響している。一方、近畿や四国では支出は低く、合理的な価値観や経済状況が影響。今後は地域ごとの価値観や経済格差を反映した支出の二極化が進むと予測される。
地域別の挙式・披露宴費用
1世帯当りの月間支出
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 北海道 | 九州・沖縄 | 大都市 | 中国 | 小都市B | 関東 | 全国 | 四国 | 中都市 | 近畿 |
最新値[円] | 541.9 | 1813 | 1035 | 843 | 820 | 647 | 475 | 454 | 397 | 265 | 135 |
前年月同比[%] | +51.14 | +1914 | -21.11 | +94.69 | +960.7 | +43.5 | +57.64 | +463.8 | +40.63 |
これまでの地域別の推移


詳細なデータとグラフ
地域別の現状と今後
日本では地域によって文化・慣習・経済状況が異なり、冠婚葬祭への支出にも違いが見られます。特に挙式・披露宴費用は、地域の価値観や人口構成、式場の供給状況、物価水準などが複雑に影響し合っています。ここでは2025年3月までの総務省家計調査(2002年〜)に基づく地域別支出データから、傾向と背景、そして今後の見通しを丁寧に読み解いていきます。
支出が高い地域 ― 北海道・九州・大都市の特徴
最新の月間支出で最も高いのは北海道(1世帯あたり1813円)です。前年同期比では+1914%という驚異的な伸びを記録しています。この背景には、コロナ禍で延期・中止された挙式の反動や、「会費制披露宴」など北海道独自の形式による実施率の高さがあると考えられます。
また、九州・沖縄(1035円)も高水準を維持していますが、前年比は-21.11%と減少。これは一時的な需要減や、若年層の地元離れによる婚礼機会の減少などが影響している可能性があります。
大都市圏(843円)は都市部ならではのブライダル産業の競争激化や多様なスタイルの選択肢が後押しし、前年比+94.69%と回復傾向にあります。多様なニーズに応える柔軟なサービスの提供が、支出増の要因とみられます。
中位層の地域 ― 小都市B、中国、関東の動き
小都市B(647円)は前年比+960.7%と急上昇。これはコロナ後の反動に加え、地方都市での「地元回帰婚」や「地元応援型ブライダル」の普及が影響していると推測できます。
中国地方(820円)も高水準を維持し、地元密着型の文化が強く残る地域であることが関係していると考えられます。
関東(475円)は全国平均をやや上回る程度ですが、前年比+43.5%と堅調な伸び。首都圏では結婚式の簡素化が進んでいた一方で、最近では「再びしっかり祝いたい」ニーズが徐々に戻ってきていることを示唆しています。
支出が低い地域 ― 中都市、近畿、四国の慎重な消費
近畿地方(135円)は地域別で最も低く、前年からの伸びも+40.63%にとどまります。大阪・京都・兵庫など都市が多いものの、「お祝いは家族で済ます」という合理的志向が根強いこと、物価高で消費全体が抑制されていることが影響しているとみられます。
四国(397円)も支出は控えめで、慎重な家計運営が特徴です。中都市(265円)も前年比+463.8%と反動的な回復は見られるものの、まだ全国平均には届かず、景気回復の地域差を反映しています。
今後の展望 ― 二極化と地元回帰の広がり
今後も、都市部や北海道のように「祝いごとには投資する地域」と、近畿・四国のように「質素を良しとする地域」との価値観の二極化は継続すると予測されます。
一方、地方都市では「親や祖父母の意向」や「地元経済支援」の意味を込めて、結婚式を実施するカップルが増えており、支出の回復余地がある地域も多く見られます。
挙式形式や費用のかけ方は、もはや一律ではなく、地域文化と経済の縮図ともいえる動きになりつつあるのです。
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