家計調査によれば、二人以上世帯における和服支出は平均35.28円と極めて低く、消費が限られた特殊衣料となっています。都市別では大津市や山形市など伝統文化が根強く残る地域で支出が高く、都市部や南西日本ではゼロに近い水準です。世代間では高齢者層の購入が中心であり、若年層はほとんど関心を持ちません。今後も継続的な減少が予測され、行事や観光との連携が鍵となります。
和服の家計調査結果
和服の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 大津市 | 山形市 | 岐阜市 | 広島市 | 大分市 | 全国 | 松江市 | 長野市 | 那覇市 | 宮崎市 |
最新値[円] | 35.28 | 786 | 600 | 161 | 95 | 90 | 56 | 29 | 26 | 13 | 8 |
前年月同比[%] | -74.87 | -38.46 | -66.67 |
和服の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | さいたま市 | 京都市 | 仙台市 | 佐賀市 | 前橋市 | 北九州市 | 千葉市 | 名古屋市 | 和歌山市 | 大阪市 |
最新値[円] | 35.28 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
前年月同比[%] | -74.87 | -100 | -100 | -100 | -100 |
これまでの和服の推移


詳細なデータとグラフ
和服のその他被服現状と今後
和服は「その他被服」の1項目として家計調査に分類され、主に着物、浴衣、袴、帯、小物(和装下着など)などが対象です。しかし、現代においては日常着としての役割をほぼ失っており、購入は冠婚葬祭、成人式、伝統行事、観光イベントなど特殊な機会に限られます。そのため、支出は不定期かつ世帯ごとの差が極めて大きく、全国平均は35.28円と非常に低水準となっています。
都市別支出の特徴 — 大津市・山形市とゼロ支出地域
データによると、2025年3月時点で最も和服支出が高かったのは大津市(786円)、次いで山形市(600円)、岐阜市(161円)と続きます。これらの都市に共通するのは以下の点です:
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伝統文化の継承:大津市は京都に隣接し、茶道・華道など和装と結びつきが強い文化活動が盛んです。山形市もお祭りや伝統工芸とのつながりが深い地域です。
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地域行事との関係性:着物を着用する地域行事や冠婚葬祭の文化が根強く、地場の着物産業(例:紬など)との連動性が見られます。
1方で、和服の支出がゼロまたは極端に低い都市(仙台市、佐賀市、前橋市、大阪市など)は、以下の傾向を示しています:
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都市化と洋装化の進展:大阪市のような大都市では洋服中心のライフスタイルが定着しており、和装の必要性がほとんど存在しません。
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行事での着用回避:和服を着る場面でもレンタル利用が主流となり、購入に結びつかない傾向が強まっています。
世代別の支出傾向と生活スタイルの変化
和服支出は明確に世代による傾向が見られます。
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高齢層(60代以上):自前の着物を持ち、今もなお茶道・歌舞伎・邦楽など文化的趣味に和装を用いる人が1定数存在します。
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若年層(20〜40代):成人式や観光地での浴衣着用は見られるものの、レンタルが中心。和服購入はほとんど行われていません。
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中年層(40〜60代):生活の中で和装文化が乏しく、購入は冠婚葬祭に限定されがちです。
結果として、和服は「使い回す衣類」であるため、世帯支出としては継続的な消費行動にはなりにくい衣料品です。
和服支出減少の背景と問題点
全国平均の支出が前年比-38.46%、特定地域では-100%と激減している背景には、以下の要因があります:
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価格の高さと維持コスト:和服1着は数万円〜数十万円と高額であり、クリーニングや保管も手間がかかります。
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着付けのハードル:自力で着用できないという問題があり、着付けサービスや時間的負担が敬遠されています。
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消費の変化:ミニマリズムや物を持たないライフスタイルが広がる中で、和服は「保管が難しい、重い、使わない」衣類となりつつあります。
今後の推移と可能性 — 和装文化は消えるのか?
和服の消費は今後も減少傾向が続くと見られますが、以下の可能性が新たな展開をもたらすかもしれません:
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観光資源としての活用:京都・金沢・川越などではレンタル和服が観光客に人気で、これを購入支出へ転換する可能性はあります。
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和モダンのファッション化:デニム着物やワンタッチ帯、洗える着物など、簡易化・日常化した和服製品が若者層に浸透すれば支出が1定程度回復する可能性があります。
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学校教育との連動:家庭科や日本文化教育の1環として、和服文化を知る機会が設けられれば、将来的な需要回復の芽になるかもしれません。
まとめ
和服の家計支出は、文化的意義と現代生活の乖離の中で急速に縮小しています。特定の地域や世代には1定の消費が見られるものの、全国的にはレンタル化・着用機会の減少・維持コストの高さといった壁が存在します。和装を未来につなげるには、観光・教育・ファッションといった多様な文脈で再定義される必要があるでしょう。
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