2002年から2025年までの和服支出データによると、2025年3月時点で最も支出が多いのは45〜49歳層(995円)で、40代を中心に支出が活発である。一方、80代以上の高齢層でも前年比約600%の増加が見られ、和服が若い世代から中高年・高齢層へと再び「文化的関心」や「余暇消費」として再評価されている。今後は高齢化社会の中で和服の生活密着型利用や健康志向ファッションとしての可能性も広がると予想される。
年齢別の和服
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 45~49歳 | 40~49歳 | 45~54歳 | 40~44歳 | 55~59歳 | 80~84歳 | 35~44歳 | 55~64歳 | 50~59歳 | 80歳~ |
最新値[円] | 203.4 | 995 | 746 | 491 | 420 | 336 | 292 | 263 | 236 | 210 | 199 |
前年月同比[%] | -17.48 | 37.81 | 25.17 | -4.288 | -0.709 | 46.09 | 595.2 | -1.128 | 28.96 | -27.59 | 586.2 |
これまでの年齢別の推移


詳細なデータとグラフ
年齢別の現状と今後
2025年3月時点での年齢別の1世帯当たり和服月間支出平均は203.4円。支出額が高い年齢層順は以下の通りである:
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45〜49歳:995円
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40〜49歳:746円
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45〜54歳:491円
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40〜44歳:420円
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55〜59歳:336円
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80〜84歳:292円
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35〜44歳:263円
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55〜64歳:236円
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50〜59歳:210円
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80歳〜:199円
特に目を引くのは、40〜50代の中年層で支出が高く、80代以降の高齢層においても前年比600%近い急増がある点である。
和服支出の年齢別傾向と文化的背景
中年層(40〜54歳)の消費活発化
この層は、収入が安定し、子どもの学校行事や冠婚葬祭、ビジネスや趣味活動で和服を着る機会が多い年代である。特に女性は着付け教室や茶道などを始めるタイミングでもあり、文化的・社交的な理由で支出が高まる傾向がある。
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45〜49歳層の支出:995円(前年比+37.81%)
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40〜49歳層全体でも746円(+25.17%)
この傾向は、伝統文化への回帰や「一生モノの装い」としての和服志向とも一致する。
高齢層(80歳以上)の急激な支出増加
一見意外だが、80〜84歳で+595.2%、80歳以上全体で+586.2%という爆発的な増加は、以下のような理由が考えられる:
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終活需要として、和装での記念撮影や家族イベントへの参加
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介護施設や地域コミュニティでの文化活動における和装体験
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デジタル弱者層向けの訪問販売やレンタル型商品の普及
身体的負担が少ない軽装や和モダン衣料の開発が、再び和服との距離を縮めている。
その他の世代の支出傾向
35〜44歳層
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支出:263円(前年比-1.128%)
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子育てや住宅購入で可処分所得が減少するライフステージ。着物支出が抑制される傾向あり。
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ただし、「カジュアル和服」や「和柄ファッション」を楽しむ層も多く、支出金額には表れにくい消費行動が背景にある。
55〜64歳層
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支出:236円(+28.96%)
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退職前後で時間に余裕が出始め、趣味や文化活動として和服に関心を持つ傾向がある。
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着物教室や地域の着物イベントに参加する人が増えており、今後も緩やかな上昇が期待される。
年齢別の消費意識と和服産業の課題
年齢層によって和服の位置づけは以下のように異なる:
年齢層 | 和服の主な役割 | 支出増加の背景 |
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40〜49歳 | 社交・教養・文化 | 安定収入、地域・家族イベント |
80歳以上 | 回顧・終活・健康志向 | 記念需要、簡易和装の普及 |
55〜64歳 | 趣味・新しい生活の一環 | 時間の余裕、自己実現消費 |
35〜44歳 | ファッション要素中心 | 実支出は抑制、嗜好に現れる |
和服業界は、フォーマル和装一辺倒の発想から、生活スタイルに合わせた多様な用途の提案へと転換する必要がある。
今後の予測と持続的発展のために
高齢者向け
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着脱が容易な機能性和装や福祉向け和装の市場が成長
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「和服と健康」などのテーマでの生活支援商品開発が期待される
中年層向け
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着物を「趣味・学び」として楽しむ中年層に向けて、体験型・SNS発信型のマーケティングが効果的
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サブスクリプション型のレンタル和服や、ユニセックスな和服デザインの拡充も有効
若年層(調査対象外)も含めた裾野拡大の鍵
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教育機関での体験授業や地域行事への導入
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ポップカルチャーとのコラボで関心層を広げ、未来の消費者層として育成
まとめ
和服支出は今、中年層の文化的再評価と高齢層の新たな需要開拓という二つの流れによって活性化している。価格・形式にこだわらない「柔らかな和服の在り方」が、これからの社会と生活にマッチした形で支持を集める可能性が高い。年齢層ごとのニーズに寄り添った提案が、和服文化の持続と産業の未来を切り開くだろう。
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