卸売・小売業の労働者数は937.5万人と国内最大規模で、女性やパート層の活躍が際立つ。非正規依存や若年層の定着難が課題だが、デジタル化や柔軟な勤務制度の整備により、今後は多様な人材の活用が期待される。
男女別の労働者数の推移
最近の労働者数データ
合計 | 一般労働者 | 女性計 | 男性計 | パートタイム労働者 | |
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最新 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 |
最大期 | 2023年12月 | 2021年4月 | 2023年12月 | 2021年12月 | 2019年12月 |
最新値[万人] | 937.5 | 514 | 497.8 | 439.6 | 423.5 |
最大値[万人] | 965.6 | 559.8 | 509.4 | 476.5 | 425.5 |
前年同月比[%] | 1.469 | 0.3883 | 1.913 | 0.9699 | 2.812 |
卸売・小売業の労働者数の推移


詳細なデータとグラフ
日本の全産業の労働者数の特徴
卸売・小売業は国内最大規模の雇用産業の一つであり、全国の店舗・物流網を通じて経済を支える重要なセクターです。消費スタイルの変化やEC(電子商取引)の普及により、労働力の質・量ともに大きな転換期を迎えています。本稿では、2025年1月時点の統計をもとに、労働者数の特徴と問題、今後の展望を解説します。
業界全体の労働者数動向
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総労働者数:937.5万人(前年比 +1.469%)卸売・小売業はコロナ禍後の消費回復やインバウンド需要に支えられ、微増傾向にあります。一方で、業態による差が大きく、ドラッグストアやディスカウント業態の人員増に対し、百貨店や中小個人商店の人員減も目立ちます。
雇用形態別の特徴と課題
一般労働者(常勤)
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514万人(前年比 +0.3883%)常勤雇用は増加幅が小さく、慢性的な人手不足のなかでもコスト抑制や業務の外注化が影響しています。販売職・在庫管理職・バイヤー職など、現場を支える役割を担っていますが、負荷は高め。
パートタイム労働者
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423.5万人(前年比 +2.812%)業界の人材を大きく支えているのがパートタイム層で、主に女性を中心にシフト勤務で店舗運営を支援しています。時間帯ニーズに応じた労働力確保がしやすい反面、待遇やスキル継承に課題があります。
男女別の構造と課題
女性労働者
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497.8万人(前年比 +1.913%)業界の労働力の過半を女性が占めており、レジ、商品補充、接客対応において重要な役割を果たしています。一方で、正社員化の比率が低く、キャリアアップが限定的な状況が続いています。育児・介護との両立支援が進んでいる一方、店舗間異動や長時間勤務には課題も残されています。
男性労働者
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439.6万人(前年比 +0.9699%)卸売分野やマネジメント職に男性の比率が高く、総合職的な立場で多店舗管理や仕入れ業務を担う傾向があります。ただし、業務の属人化や高齢化が進んでおり、若手人材の定着が課題です。
現在の課題と背景
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人手不足と過重労働:営業時間の長さと週末稼働の必要性から、ワークライフバランスが取りにくい職場も多い。
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非正規依存の構造:待遇格差の是正や教育制度の整備が急務。
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EC市場の拡大と店舗の縮小:実店舗の役割が変わり、接客スキルや商品提案力がより求められるように。
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高齢化と若年離職:特に中小店舗では若年層の定着が難しく、ベテラン頼みの現場が多い。
今後の推移と展望
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DX(デジタル化)による省人化と業務効率化:無人レジ・AI在庫管理などにより、一部業務が自動化され、正社員への業務集中が緩和される見通し。
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女性の正社員登用の拡大:柔軟な勤務体系や在宅型事務業務の拡充により、女性のキャリアパスが広がる可能性。
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外国人労働者の活用:特にコンビニ、ドラッグストア、観光地の小売店舗での多言語対応ニーズが高まっている。
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スキル重視の雇用へ転換:単純作業から提案型販売やCRM(顧客管理)業務への移行が進むことで、育成型の雇用政策が重要に。
まとめ
卸売・小売業は依然として日本最大規模の雇用源であり、女性やパート層を中心に支えられています。今後は、デジタル化や業務の多様化に対応した人材育成、正規・非正規間の格差是正、若年層の定着促進が、持続的な成長に向けて重要な鍵を握るでしょう。
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