南北アメリカの経常収支(USD)は、輸出主導型経済の国ほど黒字傾向にあるが、価格変動や財政赤字の影響で変動が大きい。ペルーやエクアドルは資源輸出で高水準を維持する一方、グアテマラやガイアナは減少傾向にある。ニカラグアやトリニダード・トバゴは健闘するが、ハイチのように急激に悪化する例もある。今後は資源価格の変動、観光回復、海外送金の動向が重要で、安定性を重視した経済政策が鍵となる。
南北アメリカのデータとグラフ
経常収支(USD)、国別今年の予想
2025年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
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名称 | ペルー | エクアドル | グアテマラ | ガイアナ | トリニダード・トバゴ | ニカラグア | ジャマイカ | ハイチ | セントルシア | ベリーズ |
最新値[億USD] | 51.36 | 43.02 | 27.28 | 23.06 | 21.18 | 12.11 | 1.87 | 1.47 | -0.26 | -0.57 |
前年比[%] | -18.95 | -39.25 | -9.519 | -62 | +18.86 | +48.23 | -6.5 | -201.4 | -23.53 | +9.615 |
経常収支(USD)の推移


詳細なデータとグラフ
経常収支(USD)の現状と今後
経常収支(Current Account Balance)とは、貿易収支、所得収支、移転収支を合計したものであり、1国の対外経済活動の健全性を示す重要な指標です。黒字であれば、対外的に稼いでいることを意味し、赤字であれば海外からの資金に依存していることを示唆します。南北アメリカでは、天然資源・農産物輸出や海外送金、観光収入がこの指標に大きな影響を与えています。
高い経常収支を記録する国々の特徴
ペルー(51.36億USD)
銅や鉱物の輸出が経常収支黒字の主因。2024年と比較して約19%減と鈍化しているが、それでも依然として地域最大級の黒字国である。価格の下落や輸入増加が原因と見られる。
エクアドル(43.02億USD)
原油輸出が中心。価格変動に弱く、前年比では大幅減(-39.25%)となっており、外貨収入の多様化が今後の課題。
グアテマラ(27.28億USD)
農産物輸出と海外からの送金(特に米国)が経常黒字の源。やや鈍化傾向で、国内消費の増加が影響か。
減少・赤字傾向にある国の課題
ガイアナ(23.06億USD)
新興の石油輸出国だが、前年比62%もの大幅減。インフラ投資による輸入増や価格下落が影響。
ハイチ(1.47億USD、前年比-201.4%)
壊滅的な経常悪化。政治不安、インフレ、輸入依存など複合的な要因が背景にあり、安定回復は難航する見通し。
セントルシア(-0.26億USD)、ベリーズ(-0.57億USD)
観光業依存が高く、パンデミック後の回復が鈍く、輸入増で赤字傾向が続いている。航空需要や国際観光の戻り具合がカギ。
予想外の健闘を見せる国々
ニカラグア(12.11億USD、+48.23%)
輸出好調と外貨送金の増加が大幅黒字化の要因。政治的孤立にも関わらず、経常収支は比較的堅調。
トリニダード・トバゴ(21.18億USD、+18.86%)
天然ガス輸出が主力。欧州向けLNG供給の増加が追い風となっている。
南北アメリカの経常収支の全体的傾向と構造的課題
南北アメリカの経常収支は、次のような構造的特徴を持っています:
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天然資源依存型(ペルー、エクアドル、トリニダードなど):価格変動の影響を受けやすい
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送金依存型(グアテマラ、ニカラグアなど):米国経済や移民政策に左右されやすい
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観光依存型(セントルシア、ベリーズなど):パンデミックや自然災害に脆弱
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制度的不安定性(ハイチ):慢性的な赤字体質
これらの国々に共通するのは、「外部ショックに対して脆弱」である点です。1方、内需主導型経済は総じて少なく、経常収支を自国の需要や生産性向上で支えている国は限られています。
今後の展望と政策的対応
今後の経常収支の動向は以下のファクターに左右されます:
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1次産品価格の動向(特に鉱物・原油・LNG)
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観光需要の完全回復と新たな観光モデルの構築
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移民政策と送金額の安定性
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通貨価値と為替政策の信頼性
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国際的な金融環境(金利、資金流入)
今後の政策としては、以下が有効と考えられます:
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輸出品の多角化と付加価値化(加工産業の育成)
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外貨収入源の分散化(観光・農業・工業)
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経常黒字のうち、健全な内需拡大への再投資
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経常赤字国では、輸入代替政策やFDIの戦略的導入が求められる
まとめ:持続可能な経常収支を目指して
南北アメリカの経常収支は、資源や送金、観光など外的要因に依存しやすい構造であるため、安定性に欠ける1面があります。経常黒字は1時的な外貨流入ではなく、持続可能な経済構造の結果として維持されるべきです。そのためには、内需拡大、産業多角化、制度の安定化という「3本柱」が不可欠であり、これらを進めることで経済の体力と柔軟性を養う必要があります。
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