2025年のIMFデータによると、南北アメリカで最も失業率が高い国はコロンビア(10%)で、他にもスリナム、バハマ、チリなどが続く。多くの国で前年比減少が見られる一方、コスタリカやブラジルでは失業率が悪化しており、地域ごとの経済回復力や構造問題の違いが浮き彫りに。今後の課題はインフォーマル雇用の縮小、若年層の雇用創出、教育とスキルミスマッチの解消であり、政策対応が成否を分ける。
南北アメリカのデータとグラフ
失業率、国別今年の予想
2025年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
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名称 | コロンビア | スリナム | バハマ | チリ | ウルグアイ | ホンジュラス | パナマ | バルバドス | コスタリカ | ブラジル |
最新値[%] | 10 | 9.5 | 9.329 | 8.128 | 8.025 | 8 | 8 | 7.824 | 7.5 | 7.154 |
前年比[%] | -1.555 | -7.767 | -1.061 | -3.947 | -1.931 | -0.0625 | -4.762 | -1.125 | +9.043 | +3.307 |
失業率の推移


詳細なデータとグラフ
失業率の現状と今後
失業率は景気の温度を計るもっとも敏感な指標の1つである。特に南北アメリカは、国ごとの経済構造や政策対応の違いが大きく、失業率にも顕著な地域差が見られる。本稿では、2025年のIMFデータを基に、過去から現在に至る失業率の傾向と、今後の予測について包括的に分析する。
2025年の失業率トップ国の顔ぶれと傾向
2025年の失業率で最も高いのはコロンビア(10.0%)であるが、前年から-1.555%と改善傾向が見られる。他にもスリナム(9.5%)、バハマ(9.329%)、チリ(8.128%)などが高水準に位置する。
1方、コスタリカ(+9.043%)やブラジル(+3.307%)のように失業率が急上昇している国もあり、国内の経済政策や国際情勢への反応に明暗が分かれている。
長期的推移から見る南北アメリカの失業の特徴
1980年代から南北アメリカ全体を俯瞰すると、以下のような傾向が見られる:
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北米(米国・カナダ):景気変動に応じて失業率も上下するが、全体としては低水準を維持。柔軟な労働市場が特徴。
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南米・カリブ諸国:構造的失業や季節雇用の影響を受けやすく、高い失業率が常態化している国が多い。
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自然災害や政治的不安定が失業に直接的な影響を与えている例も多く見られる(例:ハイチ、ベネズエラ、バハマ)。
失業の“中身”——若年層・女性・都市と地方の格差
高失業国では以下の構造問題が共通して存在する:
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若年層の失業率が非常に高い(特に都市部)
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女性の社会進出が進まず、非正規・短期雇用に偏る
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地方部では雇用の機会自体が少なく、「見えない失業」が存在
これらの問題は単なる雇用数の増減では解決できず、教育政策、産業構造転換、社会保障制度の強化が必要となる。
失業率改善の兆しとその背景
2025年の予測では、コロンビア、チリ、スリナムなど多くの国で失業率が減少傾向にある。これには以下のような要因が考えられる:
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COVID-19からの回復と経済活動の再開
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公共事業やインフラ投資による1時的な雇用創出
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観光業・輸出産業の回復
ただし、この改善が持続的なものかどうかはまだ不透明で、外的ショック(原材料価格高騰、政情不安)によって再び悪化する可能性もある。
なぜコスタリカやブラジルでは失業率が上がったのか?
2025年において、コスタリカ(+9.043%)とブラジル(+3.307%)の失業率悪化は特筆すべき事例である。
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コスタリカでは、観光業に依存する経済構造の不安定さが露呈。国際観光の回復が鈍化している影響を受けた。
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ブラジルでは政治的不透明感とインフレ対策による金融引き締めが企業の雇用抑制に直結しており、国内消費の鈍化も拍車をかけた。
インフォーマルセクターと失業率の“見えない数字”
中南米では、インフォーマルセクター(非正規・無登録雇用)がGDPの2〜4割を占める国もあり、公式失業率が実態を正確に反映していない可能性が高い。
つまり、仕事はあるが、保障も社会保険もない“非公式労働”が多く、失業の影には大きな不安定雇用が潜んでいる。
今後の展望と政策的対応の方向性
南北アメリカの失業問題に対し、以下のような中長期的対応が求められる:
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労働市場の柔軟性向上と職業訓練の充実
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若年層向けのインターン制度や職業教育の拡充
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グリーン・デジタル分野での新規雇用創出
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社会的セーフティネットの整備(失業保険、生活支援)
特に、グローバルなサプライチェーンの再編や気候変動対応が新たな労働需要を生み出す鍵となるだろう。
まとめ——“量”と“質”の両面で支える雇用の未来へ
南北アメリカの失業率は、1部の国で改善の兆しを見せているが、構造的な課題は依然として深刻である。単なる失業率の上下ではなく、「どの層が、どの産業で、どのように働いているのか」という視点が必要だ。将来の労働市場は、量だけでなく質を重視した包括的な戦略によってこそ持続可能となる。
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