南北アメリカでは政府歳入(GDP比)の水準に地域差が大きく、カナダやアメリカは比較的安定しているが、中南米では政策や政情により変動が激しい。ドミニカやブラジルのような高比率国も存在するが、徴税の非効率や経済構造の脆弱性が課題。今後は歳入基盤の改革と持続可能な財政運営が重要となる。
南北アメリカのデータとグラフ
政府歳入、国別今年の予想
2025年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
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名称 | ドミニカ | カナダ | ブラジル | アルゼンチン | セントクリストファーネイビス | ジャマイカ | アメリカ | グレナダ | トリニダード・トバゴ | セントビンセント・グレナディーン |
最新値[%] | 48.55 | 42.37 | 39.18 | 33.12 | 32.45 | 31.73 | 31.39 | 30.8 | 29.23 | 28.65 |
前年比[%] | -12.61 | -0.453 | +0.904 | +2.685 | +4.417 | -5.114 | +3.488 | -29.82 | +11.25 | +7.353 |
政府歳入の推移


詳細なデータとグラフ
政府歳入の現状と今後
南北アメリカにおける歳入構造の基本傾向
南北アメリカでは、カナダやアメリカのような先進国と、中南米諸国とでは政府歳入の規模やその使途に大きな違いがある。カナダは42.37%、アメリカは31.39%と比較的高い水準にあるが、それでも欧州諸国に比べればやや抑えられている。1方で、ドミニカ(48.55%)やブラジル(39.18%)は公的部門の影響が非常に強い国家であることがわかる。
歳入の伸び・減少の背景にある政治経済要因
データから見ると、ドミニカ共和国の前年比-12.61%という大幅な減少は、税制改革や自然災害による経済収縮、公的収入の1時的減少などが背景にあると考えられる。逆に、トリニダード・トバゴ(+11.25%)やセントビンセント・グレナディーン(+7.353%)の増加は、天然資源価格の回復、観光収入の増加、新たな課税制度の導入などが寄与した可能性がある。
また、グレナダ(-29.82%)のように急激に歳入比率が減少するケースは、GDPの急拡大と歳入の横ばい、あるいは租税回避や不正経済の拡大などが関連している可能性がある。
アメリカとカナダの比較 ― 安定した歳入とその課題
アメリカ(31.39%)とカナダ(42.37%)は歳入規模で差があるが、どちらも比較的安定した財政基盤を持つ国である。アメリカでは法人税や所得税の減税政策が歳入比率を抑える1因となっている。対してカナダは社会福祉制度が手厚く、それに応じて高い課税水準が維持されている。
ただし両国とも高齢化の進展による医療・年金財政の拡大圧力があり、今後の持続可能な財政運営には歳入の更なる安定化と効率化が求められる。
中南米諸国に見られる歳入の脆弱性と構造的課題
ブラジルやアルゼンチン、ジャマイカなどでは、政府歳入がGDPの3割を超えているにもかかわらず、社会インフラや公共サービスの質が追いついていない。これは税収の偏り(間接税依存)、徴税効率の低さ、非正規経済の広がりなどが原因である。
また、政治的不安定や汚職の蔓延が財政政策の実効性を損ない、必要な歳入改革を阻害しているという構造的問題もある。
今後の予測と展望 ― 成熟経済と新興経済の2極化
今後、南北アメリカにおける政府歳入(GDP比)は2極化が進むと考えられる。北米の先進国は高齢化と格差是正への対応から、漸進的に歳入比率を高める方向へ。特に、富裕層・企業課税の見直しが注目されている。
1方で中南米諸国は、インフォーマル経済の縮小やデジタル課税などを通じた徴税基盤の強化が急務だが、政情不安や制度的弱さにより進展は限定的となる可能性が高い。
まとめ ― 持続可能な財政のための鍵は制度改革
南北アメリカ諸国が持続可能な財政を実現するためには、短期的な歳入増ではなく、徴税制度の抜本的改革や租税回避対策、透明な財政運営の実現が必要である。歳入の質と量を両立させる戦略が今後のカギとなるだろう。
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