医薬品支出の動向と地域差:減少傾向と今後の見通しを分析

住宅・医療



2025年4月時点で、日本の医薬品支出の平均額は5,188円となり、前年同月比で7.6%の減少が見られます。地域によっては北海道や北陸で支出額が増加する一方、中国地方などでは大幅に減少しており、医薬品費用の地域差が浮き彫りです。支出世帯割合は微増傾向にあるものの、地域差が大きく、今後は高齢化やオンライン診療の普及などを背景に、支出構造や購買行動に変化が生じる可能性があります。

家計調査結果

医薬品の相場

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 関東 大都市 近畿 中都市 全国 小都市A 東海 東北 九州・沖縄 中国
最新値[万%] 0.000393 0.000605 0.000545 0.000492 0.000483 0.000459 0.000427 0.000366 0.000334 0.00033 0.000321
前年同月比[%] +1.646 +7.46 +2.251 +14.15 +4.095 +4.318 +10.34 -0.813 -9.239 -9.091 +17.15

医薬品支出の世帯割合

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 関東 大都市 近畿 中都市 全国 小都市A 東海 東北 九州・沖縄 中国
最新値[%] 3.926 6.05 5.45 4.92 4.83 4.59 4.27 3.66 3.34 3.3 3.21
前年同月比[%] +1.646 +7.46 +2.251 +14.15 +4.095 +4.318 +10.34 -0.813 -9.239 -9.091 +17.15

 

医薬品の推移

医薬品の支出額
支出世帯の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

医薬品の診療代・入院費現状と今後

2025年4月時点における日本の世帯による医薬品支出の平均額は5,188円となり、これは新型コロナ禍を経た後の医療費の1端として注目されるべき水準です。しかし、前年同月比では-7.637%の減少が確認されており、1般家庭における医薬品への支出はやや縮小傾向にあります。

医薬品支出とは、処方箋が必要な医療用医薬品と、市販薬(OTC医薬品)を含む薬局・ドラッグストアでの購入を含みます。これらは直接的な診療費とは異なり、家庭内での健康管理やセルフメディケーションの1環として行われる支出です。

地域別の医薬品支出とその差異

医薬品支出には明確な地域差が存在し、2025年4月時点では北海道が6,427円と最も高く、以下中国地方(5,830円)北陸(5,511円)、近畿(5,475円)が続きます。1方、最も低いのは小都市B(5,057円)です。全国平均(5,170円)と比較しても、1,000円以上の差が見られる地域があることから、医薬品支出は地域特性の影響を強く受けていることがわかります。

地域差の主な要因:

  • 気候と季節性疾患:寒冷地である北海道では風邪や感染症予防の薬の需要が高く、医薬品支出が増える傾向があります。

  • 高齢化率の違い:医薬品は高齢者ほど多く消費されるため、地域の年齢構成が支出額に直結します。

  • ドラッグストアの普及度や価格競争:店舗数や競争状況により市販薬の価格が異なり、支出額に影響します。

前年比から読み解く動向変化

前年同月との比較において、支出額が大幅に増加したのは北海道(+24.77%)北陸(+23.95%)であり、これは季節性インフルエンザの流行や気温の変動に起因する可能性があります。逆に中国地方(-38.71%)関東(-10.79%)では大きな減少が見られました。

このような急激な増減は以下のような要因が想定されます:

  • 感染症流行状況の変化:2023〜2024年のコロナ収束に伴うマスク・風邪薬需要の落ち着き。

  • 医薬品の価格改定:薬価制度の見直しや市販薬価格の値上げ・値下げ。

  • 医療アクセスの変化:オンライン診療や調剤薬局の利用拡大による支出構造の変化。

医薬品を購入した世帯の割合とその変化

医薬品を購入した世帯の割合(購入率)は全国平均で3.926%であり、前年同月比で+1.646%と微増しています。これは以下のような背景によるものと考えられます:

  • セルフメディケーション意識の定着:医療機関にかかる前に自分で治すという意識が1部で定着している。

  • 感染症対策意識の残存:コロナ禍の影響で、常備薬や健康維持サプリメントなどへの関心が続いている。

  • 医療費の節約志向:初診料や診察料を抑えるため、まず市販薬で対応しようとする傾向が強まっている。

ただし、北陸(-23.96%)東北(-9.239%)などでは支出割合が減少しており、これらの地域では処方薬中心への移行や、薬局の統廃合による購入機会の減少が要因と考えられます。

医薬品支出における社会的課題

医薬品支出の現状にはいくつかの課題が存在しています:

  • 高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)問題 複数の薬を長期間併用することによる副作用や無駄な支出の懸念。

  • セルフメディケーション税制の利用の低さ 控除制度があるにもかかわらず、認知度の低さから活用が進んでいない。

  • 薬価制度の変動と安定供給問題 1部の後発薬の供給不安や価格改定により、患者・消費者の選択肢が不安定になっている。

  • ドラッグストアの都市集中問題 地方では医薬品購入の選択肢が限られており、都市部とのアクセス格差が広がっている。

今後の医薬品支出の推移と見通し

今後の医薬品支出の動向には、以下のようなポイントが影響するでしょう:

高齢化の進行と支出の増加圧力

超高齢社会に向かう日本では、医薬品の需要は長期的には増加傾向にあり、医療費全体を押し上げる要因になります。

オンライン診療・調剤の普及

薬局に行かずに薬を入手できる仕組みが整えば、利便性は向上しますが、支出構造も変化する可能性があります(例:宅配費用や手数料の増加)。

ジェネリック医薬品(後発薬)の活用促進

費用抑制の鍵となるジェネリックの普及が進めば、全体としての薬剤費は抑えられる見込みです。

自然災害・感染症の再流行リスク

インフルエンザの大流行や新たな感染症の出現などがあれば、急激な支出増加が再び起きる可能性も否定できません。

まとめ

医薬品支出は日本の医療消費において比較的日常的な項目でありながら、その地域差や支出構造には多くの変動要因が存在します。2025年の時点ではやや減少傾向が見られるものの、支出世帯の割合は増加傾向で、生活に密着した医療支出としての重要性はむしろ高まっているとも言えます。

今後は、医療制度改革や健康志向の高まり、技術革新によって、医薬品支出の「質」や「方法」が変化する局面に入ると予想されます。家計負担の抑制と、適正な医薬品利用とのバランスをいかに取るかが、社会全体の課題となるでしょう。

 

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