日本の医療費支出の実態:診療代・入院費の地域差と今後の動向

住宅・医療



日本の世帯支出における診療代・入院費の合計(保健・医療費)は、平均で8,060円と安定しているものの、地域によって差があり、北海道や北陸、中国地方で高めです。直近では支出額はやや減少傾向にある一方、支出世帯の割合は増加しており、特に四国や九州・沖縄で顕著です。高齢化や慢性疾患の増加により今後も医療支出は底堅く推移する見込みで、地域格差や予防医療の拡充が課題となります。

家計調査結果

計(保健・医療)の相場

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 北海道 北陸 中国 小都市B 関東 四国 大都市 全国 九州・沖縄 中都市
最新値[円] 8060 8864 8502 8470 8447 8355 8299 8133 8060 7956 7929
前年同月比[%] -6.332 +3.082 -8.057 -12.93 -12.6 -4.065 -0.825 -5.099 -5.61 +0.0755 -5.596

計(保健・医療)支出の世帯割合

2025年4月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 関東 大都市 中都市 全国 近畿 四国 九州・沖縄 小都市A 東海 中国
最新値[%] 11.54 15.1 14.63 13.04 12.58 12.46 12.13 11.65 11 10.91 9.97
前年同月比[%] +4.219 +4.571 +4.799 +3.002 +4.053 +1.548 +28.22 +12.34 +3.676 +6.128 +1.321

 

計(保健・医療)の推移

計(保健・医療)の支出額
支出世帯の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

計(保健・医療)の診療代・入院費現状と今後

日本では高齢化の進行と医療制度の持続可能性が社会的関心を集めています。世帯支出に占める診療代・入院費の比重も年々無視できないものとなり、特に経済的負担や地域格差が顕著になっています。今回は、2020年11月から2025年4月までのデータを基に、保健・医療費の動向と今後の課題を整理してみます。


現在の支出状況 ― 平均額と地域別の違い

2025年4月時点での診療代・入院費の合計支出の全国平均は8,060円です。地域別に見ると、北海道(8,864円)や北陸(8,502円)、中国地方(8,470円)が比較的高く、1方で中都市(7,929円)や9州・沖縄(7,956円)はやや低めです。

これには、都市部と地方の医療アクセスや医療機関の密度、住民の健康意識、医療依存度の違いが関係していると考えられます。北海道のように医療機関が限られており、重症化しやすい環境では支出が高くなりやすい傾向が見て取れます。


最近の変化 ― 支出額の減少と支出世帯の増加

前年同月比では、支出額は平均で-6.332%とやや減少しています。特に中国地方(-12.93%)、小都市B(-12.6%)などで顕著ですが、北海道(+3.082%)や9州・沖縄(+0.0755%)では微増しています。これは、新型コロナウイルス流行後の受診控えが和らいだ1方で、物価上昇を受けて1部サービス利用を抑える傾向があることの表れです。

1方、医療費を支出した世帯の割合は平均で11.54%と高水準で、4国(12.13%)、近畿(12.46%)などで上昇が目立ちます。特に4国は前年比+28.22%と急増しており、慢性的な医療ニーズの高まりや高齢世帯の割合が背景にあると考えられます。


地域ごとの課題と格差

地域差の背景には、医療機関の数、交通手段の有無、年齢構成、さらには自治体の医療費助成制度の違いも大きく影響しています。特に地方部では、医療機関が遠方にあるため重症化する前に受診しづらく、結果的に入院など大きな支出が発生しやすい傾向にあります。

また、近年の高齢者単身世帯の増加により、通院や診療のサポートが困難になるケースも増えており、訪問医療やオンライン診療の整備が求められています。


今後の展望 ― 医療費はどう推移していくか

今後、診療代・入院費は高齢化と慢性疾患の増加に伴って、長期的には上昇傾向が予想されます。国全体の医療費負担を抑制するためには、予防医療や生活習慣病対策への支援を強化することが重要です。

また、保健分野の支出を減らすには、リモート診療の普及、ヘルスケアアプリの活用、自治体との連携による健康教育など、受診行動の効率化とセルフケアの促進が必要です。診療費の増加を「費用」ではなく「投資」と捉える視点の転換も求められています。


おわりに

診療代・入院費に関する世帯支出は、全国的には安定しつつも地域差が顕著であり、今後の高齢社会を支える政策と直結する重要な指標です。持続可能な医療制度の実現には、個人の健康管理意識向上と、地域医療体制の再構築が鍵となるでしょう。

 

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