家計調査にみる勤労世帯の通信費:都市別・世代別の違いと将来展望

交通費(勤労)



家計調査によれば、2025年3月時点の勤労世帯の通信費は全国平均で1.37万円ですが、大阪市や熊本市などでは1.7万円を超える一方、神戸市では0.7万円以下と大きな格差が見られます。都市構造、世帯構成、通信手段の多様化が影響しており、世代別にも支出傾向に違いがあります。本稿では2000年以降の通信費の推移、地域・世代による特徴、そして5Gやサブスクリプションの普及による今後の動向を考察します。

通信の家計調査結果

通信の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 大阪市 熊本市 相模原市 仙台市 水戸市 高松市 新潟市 金沢市 岐阜市 宇都宮市
最新値[万円] 1.37 1.743 1.688 1.672 1.66 1.652 1.616 1.61 1.608 1.567 1.547
前年月同比[%] +8.421 +21.27 +31.83 +20.65 +30.03 +5.96 +55.09 +47.13 +68.52 +12.45 +13.59

通信の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 神戸市 横浜市 浜松市 前橋市 長崎市 和歌山市 福岡市 さいたま市 松山市 千葉市
最新値[万円] 1.37 0.695 0.924 0.97 1.022 1.039 1.048 1.055 1.069 1.081 1.096
前年月同比[%] +8.421 -48.73 -14.36 -27.8 -13.54 -19.16 -5.816 -27.38 +1.926 -12.81 -22.68

 

これまでの通信の推移

通信の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

通信の現状と今後

通信費には、主に携帯電話・スマートフォンの通話・データ通信費、固定回線(インターネット)、プロバイダ料金、そして近年ではサブスクリプション型通信サービス(例:Wi-Fi付き動画視聴サービス等)も含まれます。これらはもはや「交通費」同様、生活・労働・教育のインフラとなっています。


2000年以降の通信費の推移と構造変化

増加傾向の背景

  • スマートフォンの普及(2010年代以降) 1人1台の通信端末時代により、世帯単位の通信支出が倍増。

  • 動画視聴・SNS利用の増加 データ通信量の大幅増加と高速通信(4G/5G)対応プランの加入。

  • 在宅勤務やリモート学習の定着(2020年以降) 固定回線やWi-Fi整備への投資。

減少圧力の存在

  • 格安SIM・MVNOの拡大 通信料金の最適化が進み、2020年代初頭には支出の抑制も。

  • 政府の料金引き下げ政策(2021年頃) 大手キャリアの価格競争とサブブランドの登場。


通信費が高い都市とその背景

大阪市(1.743万円)や熊本市(1.688万円)などの特徴

  • 家族世帯の通信端末所有数が多い 中高生や大学生のスマホ所有率が高く、1世帯あたりの回線数が増加。

  • 都市型リモート環境への投資 在宅勤務需要で高速回線契約やVPNサービスなどを導入。

  • 地方都市特有の「通信=娯楽・情報源」依存度 映画・ゲーム・SNSなど通信型娯楽の需要増。

高松市や金沢市の急増傾向(+50%以上)

  • 光回線エリアの整備進行 これまで未整備だった地域に高速通信サービスが普及。

  • 地元行政のデジタル施策推進 オンライン行政サービスや遠隔医療利用による通信需要の拡大。


通信費が少ない都市とその背景

神戸市(0.695万円)や横浜市(0.924万円)の特徴

  • 大都市圏の競争環境 MVNOや格安サービスが広く普及し、消費者が賢く選択。

  • 高齢化の進行とデジタルシフトの遅れ 高齢世帯が多く、通信端末所有数が少ない傾向。

  • 家賃や教育費とのバランス 家計内での他支出(特に住宅)とのトレードオフ。


世代間における通信費の差異

若年層(20〜30代)

  • 通信依存度が極めて高い 動画・SNS・モバイルゲームなどに日常的に支出。

  • 単身世帯でも1.5万円以上の支出が平均的

中年層(30〜50代)

  • 家族全員分の契約で支出が多い 子供のスマホ代、学習用タブレット、家庭用Wi-Fiなどが重なる。

  • 通信サービスの「束ね買い」志向が強い セット割・光回線・動画サブスク契約など。

高齢層(60代以上)

  • 支出額は控えめだが近年は上昇傾向 LINEやYouTube、オンライン診療などで徐々にデジタル参加。

  • 固定電話からスマホへの移行期にある


今後の展望と課題

期待される動向

  • 5G・6G対応サービスの拡大 新たな通信インフラ整備に伴う高額プランの増加。

  • スマート家電・IoTサービスの浸透 家庭内通信機器の増加で支出項目が複雑化。

  • サブスク中心型生活スタイルの定着 YouTube Premium、Netflix、音楽配信、学習アプリなど。

課題と抑制要因

  • 家計圧迫への警戒感 通信費が月1.5万円超に達することで見直し圧力。

  • デジタル格差の拡大 高齢者・低所得層が取り残されるリスク。

  • 環境負荷や情報過多問題への対応 常時接続社会のストレスやセキュリティ懸念。


まとめ

通信費は「インフラ型支出」としての位置づけが確立されつつあり、もはや贅沢品ではなく生活必需品の一部となっています。支出水準には都市構造や年齢層、生活スタイルが色濃く反映され、今後は通信サービスの多層化・高機能化によって「高水準化」と「最適化志向」の二極化が進むでしょう。各家庭がどのように通信を生活設計に組み込むかが問われる時代に入っています。

 

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