勤労世帯における諸雑費(勤労)は、都市間で支出額や増減率に大きな差があり、横浜市などでは大幅な増加が見られる一方、神戸市や秋田市では大きく減少している。これには都市別の経済構造、物価、家計構成の違いが影響している。今後は高齢化、物価上昇、生活様式の変化により、支出項目の質的変化が進むと予測される。
諸雑費(勤労)の家計調査結果
諸雑費(勤労)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 横浜市 | 山形市 | 大分市 | 仙台市 | 広島市 | 大津市 | 新潟市 | 宮崎市 | 高松市 | 千葉市 |
最新値[万円] | 2.996 | 5.238 | 4.97 | 4.878 | 4.202 | 4.143 | 3.85 | 3.591 | 3.531 | 3.467 | 3.464 |
前年月同比[%] | -2.575 | +91.79 | +56.1 | +90.01 | +40.42 | +42.51 | +68.12 | +32.67 | +35.12 | +29.74 | -2.136 |
諸雑費(勤労)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 神戸市 | 那覇市 | 北九州市 | 秋田市 | 札幌市 | 青森市 | 松江市 | 津市 | 浜松市 | 甲府市 |
最新値[万円] | 2.996 | 1.807 | 1.93 | 2.029 | 2.075 | 2.238 | 2.241 | 2.27 | 2.307 | 2.378 | 2.394 |
前年月同比[%] | -2.575 | -34.19 | -9.453 | -13.6 | -48.53 | -5.578 | +2.888 | -25.77 | -4.142 | -22.66 | +3.542 |
これまでの諸雑費(勤労)の推移


詳細なデータとグラフ
諸雑費(勤労)の諸雑費現状と今後
諸雑費(勤労)とは、家計調査における「勤労者世帯」が支出する中で、食費や住居費、光熱費など主要支出に含まれない雑多な支出をまとめたカテゴリであり、交際費、たばこ代、新聞・書籍、パーソナルケア、日用雑貨などが含まれる。この項目は生活の余裕や社会活動、生活文化の表れでもあり、地域経済の性質をよく反映する支出項目でもある。
平均支出額の推移と2025年3月時点の状況
2025年3月時点の勤労世帯の諸雑費(勤労)の全国平均は2.996万円。過去20年で大きな増減を繰り返してきたが、特に2020年以降のコロナ禍とその後のインフレ進行により構成内容と支出額に変化が出ている。現代では物価の上昇や生活必需品の高騰により、余剰支出にあたる「諸雑費」の中身も実質的に変容している。
支出が高い都市の特徴分析
1世帯あたりの諸雑費(勤労)が高い都市には横浜市(5.238万円)、山形市(4.97万円)、大分市(4.878万円)などが並ぶ。これら都市に共通するのは以下の点である。
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都市規模と可処分所得の高さ(横浜市、仙台市など):都心型で娯楽・交際・サービスの支出が多い。
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地方での家計支出の偏り(山形市、大分市):物価は比較的安価でも、娯楽や交際費に重点を置く世帯構成が目立つ。
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前年同期比の急増:横浜市(+91.79%)、大分市(+90.01%)などは急激な伸びを見せており、これは1時的なイベント支出(進学、転勤等)や物価上昇の波及効果も関係している可能性がある。
支出が少ない都市の特徴分析
逆に神戸市(1.807万円)、那覇市(1.93万円)、北9州市(2.029万円)などでは支出額が大幅に低く、しかも前年同期比で減少している。
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都市再開発の停滞や購買力の減少:神戸市や北9州市は高齢化が進み、若年層の購買力が低下している。
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生活費優先傾向:沖縄(那覇市)などでは低所得層が多く、雑費にまわせる可処分所得が限られている。
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生活スタイルの保守性:秋田市や青森市など東北地方では堅実な家計管理が根強く、支出の抑制傾向が強い。
都市間の差異の要因
都市間でこれほどまでに支出額が異なるのは、主に以下の要因による:
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所得水準の差
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生活スタイルの違い
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物価の地域差
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年齢構成や世帯構成の違い
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地域イベント・行政支援の有無
特に、生活コストが高い都市では「防衛的支出」が増える1方で、物価が安定している地方都市では支出が比較的安定している。
世代間の支出傾向の違い
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若年勤労層:趣味・交際・外食などに支出を振り向けやすく、諸雑費の割合が高い傾向。
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中年層(子育て世代):教育費などの固定支出に追われ、雑費は抑制傾向。
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高齢者含む世帯(定年延長者など):新聞・健康関連支出が多く、内容の傾向が異なる。
今後の予測と展望
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今後の平均額の推移:インフレ基調が続けば、名目額としては上昇が続く可能性が高い。ただし内容は「選択的支出」から「準必需支出」へと移行していく。
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AI・IT化による構成変化:書籍→サブスク、交際→SNS・オンライン交流、たばこ→電子タバコなど、支出形態が変容する。
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都市間格差の拡大懸念:経済成長の格差、地域間人口構造の差がより支出の2極化を招く。
まとめ
勤労世帯における諸雑費は、単なる「雑費」ではなく、地域経済の鏡であり、家計の余裕や社会との接点を映す指標である。今後は物価・生活様式・人口構造の変化により、額面の変動以上に「質」の変化が進むと予測される。
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