勤労世帯の調理品支出に見る都市差と世代傾向:今後の課題と展望

調理品・外食



2025年3月時点で勤労世帯の調理品支出は全国平均で1.32万円。大阪市や富山市などでは高水準を維持する一方、津市や金沢市では大幅に減少。都市間格差の背景には単身世帯比率、女性就労率、共働き形態の違い、そしてコンビニや中食市場の地域差がある。世代別では若年層ほど調理品の利用に積極的で、中高年層は節約志向が強い。今後は物価高や生活スタイルの多様化により、調理品支出の格差拡大が予想される。

調理品(勤労)の家計調査結果

調理品(勤労)の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 大阪市 富山市 浜松市 川崎市 東京都区部 相模原市 福島市 千葉市 静岡市 横浜市
最新値[万円] 1.32 1.686 1.683 1.681 1.662 1.644 1.624 1.601 1.548 1.535 1.525
前年月同比[%] +4.213 +20.76 +28.64 +6.58 +6.623 -5.255 +2.538 +19.4 +29.42 +3.73 -0.131

調理品(勤労)の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 津市 京都市 大分市 神戸市 札幌市 岐阜市 鳥取市 金沢市 奈良市 熊本市
最新値[万円] 1.32 0.917 1.013 1.024 1.078 1.083 1.093 1.093 1.095 1.099 1.102
前年月同比[%] +4.213 -25.01 -7.22 -11.24 -17.57 -7.823 -11.83 -6.286 -25.29 +6.398 -16.01

 

これまでの調理品(勤労)の推移

調理品(勤労)の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

調理品(勤労)の調理品・外食現状と今後

勤労世帯における「調理品」とは、スーパーやコンビニなどで販売される弁当、総菜、冷惣菜など、家庭内での調理を必要とせずに食べられる“中食”を指す。外食と内食の中間に位置し、共働き世帯や一人親世帯など、時間的余裕のない家庭の食生活を支える役割を担ってきた。

この調理品支出は、景気動向や物価変動だけでなく、ライフスタイルや働き方の変化にも敏感に反応する特徴を持つ。特に勤労世帯では、自炊時間の不足や健康志向を背景に調理品需要が高まっている一方で、節約志向や原材料高騰の影響を受けて支出が抑制される局面もある。


2000年以降の調理品支出の全体的な推移

2000年以降の勤労世帯における調理品支出は、次の3つのフェーズに分けられる。

  1. 2000年代前半〜リーマンショック前(~2008年) 景気拡大期では外食と調理品の支出は緩やかに増加。特に都市部では女性の社会進出とともに中食の利便性が評価され、支出が堅調に推移。

  2. リーマンショック以降〜コロナ前(2009年~2019年) 節約志向が強まり、外食の代替として調理品が注目される。特にスーパー総菜の充実により、健康・価格・量のバランスが取れた中食が主婦層・単身勤労者に支持される。

  3. コロナ禍以降(2020年〜現在) 在宅勤務の普及により内食回帰の傾向が強まったが、外出機会の回復とともに2022年以降は再び調理品支出が増加。特に2024年から2025年にかけては、物価上昇にもかかわらず、利便性を求める層による支出増加が顕著。


都市別の支出格差──高支出都市と低支出都市の背景

高支出都市の特徴(大阪市、富山市、浜松市など)

  • 共働き率が高く、調理時間の確保が困難

  • 都市部中心でスーパー・コンビニが充実

  • 生活時間帯が多様で、夜遅くまで営業する店舗の利用頻度が高い

  • 平均所得が中間〜上位水準で、多少の価格上昇でも購買が維持される

例:大阪市は+20.76%、富山市は+28.64%と急増しており、働く女性や高齢夫婦世帯の調理負担軽減のため中食を活用していると考えられる。

低支出都市の特徴(津市、京都市、大分市など)

  • 高齢化が進み、節約志向が強い

  • 地方で中食インフラ(惣菜店やコンビニ)の充実度が低い

  • 自炊文化が根強く残っており、外部調理品への依存が少ない

例:津市(-25.01%)、金沢市(-25.29%)などは、調理品支出の落ち込みが顕著であり、価格上昇の影響とともに、生活習慣としての“作る文化”が根強いと考えられる。


世代間の利用傾向の違い

  • 若年層(20〜40代) 共働き・子育て世代にとって、時間と健康志向の両立が重要。栄養バランスの取れた中食を好む傾向がある。高価格でも「手間の削減」を選ぶ消費スタイル。

  • 中年層(50代) 家計を意識しつつも、仕事や家事に追われることで、惣菜や弁当を頻繁に利用する。栄養と節約のバランスを見極めて選択。

  • 高齢層(60代以上) 年金生活に入ることで支出を抑えがち。また、調理習慣が強く残り、調理品の活用は限定的。生活習慣病予防や薄味嗜好の面からも自炊が多い。


今後の展望──中食市場と勤労世帯の支出の未来

  1. 物価上昇とのせめぎ合い 原材料費・人件費の上昇により中食価格が今後さらに高騰する可能性がある。これにより低所得層や高齢層での中食離れも懸念される。

  2. 健康・時短志向の深化 働き方改革が進む一方、完全な自炊は難しい現実もあり、調理品の「高たんぱく・低塩分・低脂質」などの機能化が進む見通し。

  3. 地域格差の固定化 都市部では中食市場の競争激化とともに品質も向上し、利用がさらに進む。一方、地方では供給側の高齢化・閉店が進み、調理品入手自体が困難となる「中食難民」の問題が浮上する可能性も。

  4. サブスクリプション型サービスとの融合 中食商品を定期配送する「食の定期便」型サービスが中間層に浸透すれば、支出額は安定し、地域差の一部緩和につながる可能性もある。


まとめ

勤労世帯の調理品支出は、働き方・ライフスタイル・地域性・物価と密接に結びついた指標である。都市部での支出拡大傾向は利便性と供給の豊かさを反映している一方で、地方では経済環境や供給体制の変化によって支出が減少している。今後は、消費者ニーズに応じた健康・品質志向の商品開発と、供給網の整備が重要な課題となるだろう。

 

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