家計調査によると、2025年3月時点の勤労世帯の自転車購入費は全国平均で1,062円と低水準にありますが、高松市では9,188円と突出した数値を記録。一方、佐賀市や大阪市などでは支出ゼロとなり、都市間格差が顕著です。本稿では2000年以降の推移や購入動機の変化、都市特性や世代別の傾向を丁寧に分析し、今後の需要動向についても予測を交え解説します。
自転車購入の家計調査結果
自転車購入の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 高松市 | 名古屋市 | 堺市 | 松山市 | 松江市 | 水戸市 | 東京都区部 | 高知市 | 鳥取市 | 千葉市 |
最新値[円] | 1062 | 9188 | 5449 | 4404 | 4276 | 4231 | 2952 | 2935 | 2602 | 2506 | 2305 |
前年月同比[%] | +27.49 | +177.5 | +242.1 | +54.8 |
自転車購入の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 京都市 | 佐賀市 | 前橋市 | 北九州市 | 和歌山市 | 大分市 | 大阪市 | 奈良市 | 宇都宮市 | 富山市 |
最新値[円] | 1062 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
前年月同比[%] | +27.49 | -100 | -100 | -100 | -100 | -100 | -100 |
これまでの自転車購入の推移


詳細なデータとグラフ
自転車購入の現状と今後
自転車購入費は、耐久消費財の一部として家計調査に記録される支出項目です。交通費の一部とされることもありますが、実態としては交通・健康・レジャー・教育といった複合的な動機によって購入されるため、都市や世帯の性格によって変動しやすい特徴があります。
全国平均の推移とその背景
2000年以降のデータを見ると、全国平均の自転車購入費はおおむね低水準で推移してきました。以下の要因が影響しています:
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耐久性の向上:買い替え頻度が減少。
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中古市場や譲渡の一般化:家庭内・地域内での再利用が定着。
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少子化の影響:子供向け自転車の需要が減少。
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都市化と公共交通の発展:自転車が必須ではない世帯が増加。
ただし、パンデミック下の2020年前後には「密を避けた移動手段」として一時的に購入が増加した地域も見られました。
都市間で見られる顕著な格差
高支出都市(高松市・名古屋市など)
高松市(9,188円)や名古屋市(5,449円)などでは全国平均を大きく上回る支出が見られます。主な理由として:
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生活圏の広さと公共交通の限界:徒歩より遠く、車を使うまでもない距離での移動に自転車が有効。
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学生の多い都市構造:通学用としての需要。
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近年のシェアサイクル整備:意識喚起による自転車購入意欲の向上。
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イベント・環境意識の高まり:地域でのサイクルイベント開催や自転車通勤促進施策。
低支出都市(佐賀市・大阪市など)
一方、佐賀市や大阪市など6都市では自転車購入費が「0円(前年同期比-100%)」となっています。これらの都市では:
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公共交通機関の整備度が高い:地下鉄・バスなどが主要な移動手段。
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都市構造の変化:中心部での居住が増え、徒歩・電車で完結。
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高齢化と安全意識:高齢層が自転車から遠ざかる傾向。
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供給面の影響:特定期間に購入が集中せず、記録が統計上「ゼロ」になることも。
世代間の傾向と変化
若年層(20~30代)
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健康志向や通勤・通学の手段として一定の需要あり。
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ただし、カーシェアや電動キックボードなど新興モビリティにシフトしつつある。
中年層(30~50代)
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子ども用自転車の購入が中心。保育園・小学校への送り迎えを背景に電動アシスト付き自転車へのニーズが高い。
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働き盛りのため通勤用クロスバイク・ロードバイクなど趣味性の強い購入も。
高齢層(60代以上)
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安全性への不安や体力の低下から自転車離れ。
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ただし、三輪タイプや電動アシスト自転車への関心は一定数存在。
今後の展望 ― 需要の二極化と新たな価値軸
増加が期待される要素:
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電動アシスト自転車の普及:高齢者や子育て世代の利便性向上。
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サステナビリティ意識の高まり:脱炭素社会への貢献手段。
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シェアサイクルからの派生購入:日常化に伴う“自分用が欲しい”ニーズ。
減少が懸念される要素:
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少子化と都市化の進行:通学用・家族用自転車の減少。
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道路環境の未整備な地域での安全意識の高まり:特に高齢者の自転車離れ。
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新モビリティとの競合:電動キックボードや超小型EVとの市場分散。
まとめ
自転車購入費は一見地味な家計項目ですが、その変動には都市構造、公共交通、年齢構成、さらには地域の気候や文化まで複雑に関係しています。2025年現在、高松市のような高水準都市と大阪市のようなゼロ支出都市が同時に存在することは、その多様性を如実に示しています。今後は高齢化や環境配慮型社会の進展により、自転車への期待と役割は新たな形で再定義されていくでしょう。
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