家計調査によると、2025年3月時点で勤労世帯の洋服支出は平均6510円。川崎市は1万7360円と突出しており、前年比+342.3%の急増。他方、佐賀市や仙台市では2000円台~3000円台と低水準で減少傾向。地域差や世代交代、消費志向の変化が影響し、今後は都心部での支出増と地方の抑制傾向が続くと予測される。ファッションの実用化、価格帯の多様化も進んでいる。
洋服(勤労)の家計調査結果
洋服(勤労)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 川崎市 | 富山市 | さいたま市 | 福岡市 | 大阪市 | 新潟市 | 水戸市 | 広島市 | 千葉市 | 鹿児島市 |
最新値[円] | 6510 | 17360 | 11500 | 11030 | 10620 | 9818 | 9716 | 9492 | 8850 | 8753 | 8715 |
前年月同比[%] | -1.6 | +342.3 | +106.4 | -11.35 | +161.2 | +41.47 | +158.1 | +74.39 | -17.34 | -4.412 | +4.521 |
洋服(勤労)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 佐賀市 | 甲府市 | 大津市 | 和歌山市 | 那覇市 | 仙台市 | 福島市 | 静岡市 | 宮崎市 | 秋田市 |
最新値[円] | 6510 | 1898 | 2435 | 2601 | 2860 | 3266 | 3429 | 3548 | 3651 | 3920 | 4106 |
前年月同比[%] | -1.6 | -59.12 | -19.34 | -32.44 | -63.18 | +15.86 | -65.59 | -54.35 | -15.21 | -28.8 | +8.711 |
これまでの洋服(勤労)の推移


詳細なデータとグラフ
洋服(勤労)の洋服現状と今後
勤労世帯とは、主に給与所得を得る勤労者によって構成される世帯であり、消費支出の中でも衣類支出は、個人の趣味・嗜好、季節変動、社会情勢の影響を受けやすい項目です。2000年以降の長期的データを見れば、勤労世帯の洋服支出は経済状況やライフスタイルの変化と密接に連動していることがわかります。
洋服支出の全国平均と近年の特徴
2025年3月時点での勤労世帯1世帯当たりの洋服支出は6510円で、これは過去平均に比べるとやや低水準です。2000年代初頭には1万円前後を推移していた時期もありましたが、ファストファッションの定着や節約志向の強まりにより、支出額は長期的に減少傾向をたどってきました。
1方、2024年以降には1部都市で急増する動きも見られ、消費の2極化が鮮明となっています。
地域別の特徴──川崎市の突出と地方の低支出
【支出が高い都市】
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川崎市(17360円):前年比+342.3%という極端な増加。首都圏に位置し、共働き世帯が多く、都市型のファッション消費が活発と考えられます。
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富山市・さいたま市・福岡市なども1万円前後で高水準。特に福岡市は前年比+161.2%と、若者人口の多さと都心回帰が影響しています。
【支出が少ない都市】
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佐賀市(1898円)、仙台市(3429円)、和歌山市(2860円)などは、いずれも支出が低く、前年同期比で大きく減少。
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仙台市は-65.59%、和歌山市は-63.18%と急落しており、物価高に伴う衣料支出の抑制、ネット購入への移行、または中古・リサイクル市場の活用などが背景にあると考えられます。
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世代間の消費志向の違い
勤労世帯の中でも、特に30代〜50代の世代交代が消費動向に影響を与えています。若年層(30代前半まで)はファッション性よりも「価格・機能・サブスク」に重きを置く傾向が強く、衣服支出が控えめです。1方で40代後半〜50代の働き盛り層は、仕事着やイベント着など「見せる場面」を意識した衣服支出があり、都市部では支出が増えやすい傾向です。
これまでの問題と背景
ファストファッションの浸透
ユニクロ、GU、H&Mなど低価格ブランドの普及により、衣類の「量」は保たれていても「金額ベース」での支出は減少しました。
リモートワークの普及
2020年以降のコロナ禍により、通勤着や外出用の衣服需要が大幅に減退。1時的な現象ではあったものの、その後も「在宅メイン」の働き方が続く世帯では、衣料支出の回復が鈍化しています。
購買チャネルの変化
実店舗での購入から、通販・メルカリ・シェアリングへと大きく変化。これにより、見かけの支出は抑えられているが、実質的な衣類の取得量はさほど変わらない可能性があります。
今後の推移と予測
【都市間格差の継続】
都市部では、可処分所得の高さやファッション感度の高さから今後も支出は安定して高水準で推移する見込みです。特に川崎市や福岡市のような成長都市は支出増加傾向が続くでしょう。
【地方都市の節約志向】
1方、人口減少や高齢化が進む地方では、衣服に対する支出は引き続き抑制される見通しです。生活必需品との優先順位の中で衣料品は後回しになりやすく、物価高の影響を強く受けます。
【新たな価値観の台頭】
中古市場・シェアリングエコノミー・サブスク型衣料サービスが1般化すれば、家計調査上では支出が低く見えても、体感的な「衣類の充足」は高まる現象が続く可能性があります。
おわりに
勤労世帯の洋服支出は、ただの金額の上下ではなく、都市の発展状況・家族構成・仕事環境・流通の変化が複雑に絡んでいます。データからは都市ごとのライフスタイルの違い、支出意識の差が浮き彫りになっており、今後の政策や企業戦略にも影響を与える重要な指標となるでしょう。
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