総務省の家計調査によると、2025年3月時点の勤労世帯における「他の世帯員収入」は全国平均で月1.317万円と依然として限定的だが、都市によって大きな差がみられる。福井市や富山市、川崎市では3万円を超える一方、高知市や神戸市では1,000円未満にとどまる。これは世帯構成や女性・高齢者の労働参加状況、地域経済の構造に左右される。今後は共働きや副業の増加、高齢者就労の拡大によって、緩やかな上昇傾向が見込まれるが、地域間格差や就労環境の整備が課題となる。
他の世帯員収入の家計調査結果
他の世帯員収入の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 福井市 | 富山市 | 川崎市 | 福島市 | 仙台市 | 徳島市 | 宇都宮市 | 札幌市 | 浜松市 | 高松市 |
最新値[万円] | 1.317 | 3.956 | 3.893 | 3.82 | 3.59 | 2.827 | 2.577 | 2.556 | 2.547 | 2.547 | 2.368 |
前年月同比[%] | -2.292 | -23.82 | +8.985 | +26.88 | +78.22 | +202 | +1120 | +3.068 | +34.7 | +288.1 |
他の世帯員収入の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 奈良市 | 岡山市 | 松江市 | 高知市 | 神戸市 | 長崎市 | 大分市 | 那覇市 | 松山市 | 広島市 |
最新値[万円] | 1.317 | 0 | 0 | 0 | 0.0672 | 0.167 | 0.176 | 0.279 | 0.298 | 0.303 | 0.385 |
前年月同比[%] | -2.292 | -100 | -100 | -100 | -98.56 | -89.62 | -87.48 | -90.57 | -80.22 | -56.05 | -62.05 |
これまでの他の世帯員収入の推移


詳細なデータとグラフ
他の世帯員収入の現状と今後
「他の世帯員収入」とは、世帯主以外の収入、すなわち配偶者・子・同居親などが得る賃金や報酬の合計を指します。これは専業主婦(主夫)世帯か共働き世帯か、高齢者が就業しているかなどの違いを如実に反映します。
この収入は、世帯収入全体に占める割合としては小さいですが、共働きの拡大、高齢者の就労機会増加、副業の一般化により、その注目度は年々高まっています。
都市別に見る「他の世帯員収入」の傾向
2025年3月時点のデータによれば、全国平均は1.317万円ですが、都市間で大きな差があります。
上位都市の特徴
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福井市(3.956万円)や富山市(3.893万円)は、製造業を中心とした共働き比率の高い地域です。
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川崎市(3.82万円)は、東京都心部への通勤圏内で高所得の共働き家庭が多く、世帯員全体の就労率が高い。
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福島市、仙台市といった地方中核都市も上位に入っており、特に仙台市は前年比+202%と急増しています。これは、学生のアルバイトや高齢者の就労増加など、非正規的な収入の増加によると推測されます。
下位都市の特徴
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高知市(0.067万円)、神戸市(0.167万円)などは1,000円未満にとどまっており、ほぼ他の世帯員の就労収入が存在しないに等しい状況です。
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神戸市のような大都市で低水準なのは、高齢者単身世帯や専業主婦世帯の割合が高い可能性、あるいは就労意欲と機会のミスマッチが影響していると考えられます。
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これらの地域では前年からの増加率も著しくマイナスで、堅調な労働参加の流れに逆行しています。
世代間の違いと労働参加構造の変化
「他の世帯員収入」は世帯構成と世代によって大きく左右されます。
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若年世帯では、共働きや副業が進み、世帯員のうち少なくとも1人が就労していることが多い。
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中高年世帯では、子どもが成長し就労を始めることで一時的に収入が増える傾向がある。
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高齢世帯では、世帯主以外の就労は少なく、収入がほぼ年金に限られる場合が多い。
ただし最近は、高齢者の就労延長・再雇用の制度化、また女性の再就職支援の拡充により、高齢世帯や女性の労働力参加が増加しつつあります。
「他の世帯員収入」が都市で大きく差が出る理由
都市による差異は以下のような要因に起因します:
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労働市場の有無と職種の多様性:地方は求人の幅が狭く、非正規や短期労働が中心。
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産業構造:製造業や医療福祉が強い地域では、女性や高齢者の就労がしやすい。
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教育機関の集中:大学のある都市では、学生アルバイトが「他の世帯員収入」として加算されることがある。
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家族構成:三世代同居や扶養人数の多い家庭では、世帯員が複数就労している可能性が高い。
今後の見通しと課題
緩やかな上昇の可能性
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女性の就業支援政策(保育の充実、短時間正社員制度など)により、他の世帯員収入は緩やかに増加していく見込み。
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副業解禁の流れも追い風となり、本業とは別に所得を得る世帯員が増える可能性が高い。
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高齢者就労の拡大は、定年後の家計維持を目的とした収入源として「他の世帯員収入」を押し上げる。
地域格差の拡大リスク
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地方では求人や職種の選択肢が乏しく、就労意欲があっても実現しにくい現実がある。
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ITやテレワークの拡充により一部都市では就労機会が増えるが、それが全国に均等に広がるには時間がかかる。
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就労可能な世帯員がいても、介護・育児負担などで労働参加できない構造的問題も依然として根強い。
まとめ:家計における「他の世帯員収入」は今後の鍵
「他の世帯員収入」は家計の安定化において今後ますます重要な役割を果たすでしょう。ただし、現時点では都市間や世代間での大きな格差があり、全国的な底上げには就労支援・地域経済の再構築・社会的インフラの整備が不可欠です。単に就業率を上げるのではなく、「働きやすさ」と「家庭内バランス」の両立を支援する政策が求められます。
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