家計調査における勤労世帯の下着類支出は、2000年代以降ゆるやかに推移してきたが、都市によって支出額や増減率に大きな差が見られる。広島市や盛岡市では支出額が急増しており、一方で奈良市や和歌山市では大幅減少が続く。背景には生活習慣、購買スタイル、地域の物価や人口構成の違いがある。今後は物価上昇、ファストファッション志向、EC利用増加などが支出傾向に影響を与えると考えられる。
下着類(勤労)の家計調査結果
下着類(勤労)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 広島市 | 盛岡市 | さいたま市 | 津市 | 千葉市 | 岡山市 | 松山市 | 佐賀市 | 堺市 | 長野市 |
最新値[円] | 789.6 | 1489 | 1373 | 1368 | 1243 | 1220 | 1127 | 1090 | 1055 | 1050 | 1021 |
前年月同比[%] | -7.244 | +179.9 | +36.35 | +17.63 | -33.67 | -25.56 | +24.81 | +43.61 | +4.043 | -23.86 | +33.29 |
下着類(勤労)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 奈良市 | 和歌山市 | 前橋市 | 宮崎市 | 山形市 | 川崎市 | 青森市 | 大津市 | 福井市 | 神戸市 |
最新値[円] | 789.6 | 278 | 290 | 350 | 371 | 418 | 426 | 461 | 472 | 484 | 489 |
前年月同比[%] | -7.244 | -72.8 | -56.06 | -56.41 | -57.5 | -68.12 | -75.35 | +6.467 | -26.13 | -22.44 | -29.84 |
これまでの下着類(勤労)の推移


詳細なデータとグラフ
下着類(勤労)の下着類現状と今後
家計調査において「下着類(勤労)」とは、勤労者世帯における日常衣料費のうち、肌着やインナー、ソックスなどの下着類にあたる支出を指す。このカテゴリは、衣料全体の中では比較的小さな比率を占めるが、生活必需品として季節・年齢・ライフスタイルに大きく左右される。支出の多寡には地域差が顕著であり、都市ごとの生活習慣や経済事情が反映されている。
過去から現在への支出推移
2000年から2025年にかけて、下着類(勤労)の全国平均は大きな変動はないものの、物価や所得の変化、ファッションのトレンド、生活様式の変化などによって波がある。特に2000年代前半は堅調に推移し、リーマンショック後や消費増税の影響で1時的な落ち込みを見せたが、その後は徐々に回復。最近のインフレ傾向もあり、2025年3月時点での平均支出は789.6円と過去平均に対してやや上昇傾向を示している。
都市間格差の実態
支出の高い都市を見ると、広島市(1,489円)、盛岡市(1,373円)、さいたま市(1,368円)などが上位に名を連ねている。1方、支出の少ない都市として奈良市(278円)、和歌山市(290円)、前橋市(350円)が目立つ。
この格差の背景には以下のような要因があると考えられる:
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広島市・盛岡市の高支出要因
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地場系百貨店や総合衣料品店の活性化
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比較的中高年層が多く、衣類に安定した支出傾向
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雪国・寒冷地では下着の重ね着需要も高い
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奈良市・和歌山市の低支出要因
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高齢化が進み支出自体が抑制傾向
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ECシフトによる「家計調査で捉えにくい支出」化
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若年層の減少に伴う衣料品消費の縮小
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都市の産業構造や人口動態の違いが、こうした支出差に直結しているといえる。
世代間・ライフスタイルによる影響
勤労世帯の下着類支出は、世代別に見ると20~30代の子育て世代では子供関連費が優先されやすく、自己衣料への支出が抑制される傾向がある。1方、40~50代は体型の変化や健康志向もあり、機能性下着や高品質インナーへの支出が増える。
また、ファッションのトレンドも無視できない。若年層はファストファッションやユニクロ・GUなどの低価格帯を好む傾向が強く、これも平均支出を抑える1因となっている。
支出減少都市の共通課題
奈良市や和歌山市、宮崎市、山形市など支出の少ない地域では、前年同期比でも大幅な減少が見られる。これは以下のような要素が絡む。
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地方百貨店・商店街の衰退により購買機会そのものが減少
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若年層人口の都市流出により購買層が縮小
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ネット通販の拡大で、実店舗を経由しない支出が家計調査で反映されにくい
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必要最小限主義(ミニマリズム)傾向の浸透
特に-70%以上という急激な落ち込みを見せた奈良市などは、単なる1時的な減少ではなく、構造的な購買行動の変化とみるべきだろう。
今後の予測と注目点
今後、勤労世帯における下着類支出は以下のような方向で推移すると予測される:
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インフレによる単価上昇
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物価上昇が続けば、単価の高い下着への支出が増える。ただし量は変わらない可能性もある。
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EC比率の増加
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Amazonや楽天、ZOZOなどでの購入が定着しており、家計調査で捕捉されにくくなる。
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高機能・高付加価値下着の需要増
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吸湿性、保温性、抗菌加工などの高機能下着が中高年層に人気。
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ジェンダーレス化の影響
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下着市場の1部で性別を問わないアイテムが増加し、カテゴリの再定義も進む可能性。
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これらの流れを考慮すると、支出額自体は大きく増加しないが、下着に対する価値観や購買ルートが大きく変化していくと見られる。
まとめ
勤労世帯における下着類の支出は、都市ごとに大きな格差が存在し、生活様式や購買チャネルの変化に大きく影響を受けている。高支出都市では地元流通の強さや中高年層の存在が支出を支えており、低支出都市では高齢化やECの普及が要因となっている。今後は支出額以上に、「どこで」「どのように」購入されるかという行動の変化が注目されるだろう。
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