家計調査によると、2025年3月時点で勤労世帯のシャツ・セーター支出の全国平均は2,528円。広島市や水戸市など都市部を中心に支出が高騰している一方で、北九州市や堺市では大幅に減少しています。背景には働き方の多様化、ビジネスカジュアル化、季節変動、新型コロナ以降の衣料購入行動の変化が関係しています。今後もリモートワーク定着や経済環境次第で支出は都市ごとに分化する可能性があります。
シャツ・セーター(勤労)の家計調査結果
シャツ・セーター(勤労)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 広島市 | 水戸市 | 相模原市 | 山口市 | 松山市 | 富山市 | 宇都宮市 | 川崎市 | 福岡市 | 津市 |
最新値[円] | 2528 | 5794 | 4126 | 4111 | 3974 | 3892 | 3635 | 3522 | 3492 | 3431 | 3374 |
前年月同比[%] | +7.137 | +78.44 | +99.81 | +45.52 | +29.19 | +37.04 | +17.75 | +9.108 | +26.94 | +61.99 | -0.0592 |
シャツ・セーター(勤労)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 北九州市 | 和歌山市 | 堺市 | 佐賀市 | 秋田市 | 札幌市 | 青森市 | 仙台市 | 前橋市 | 宮崎市 |
最新値[円] | 2528 | 952 | 1080 | 1229 | 1347 | 1466 | 1523 | 1540 | 1665 | 1674 | 1733 |
前年月同比[%] | +7.137 | -51.82 | +13.09 | -55.89 | -64.06 | +38.43 | -32.55 | -46.53 | -40.26 | -52.19 | -19.62 |
これまでのシャツ・セーター(勤労)の推移


詳細なデータとグラフ
シャツ・セーター(勤労)のシャツ・セーター現状と今後
2025年3月時点での勤労世帯におけるシャツ・セーター支出の平均は2,528円。この水準は、2000年代初頭と比較して安定的に推移しているように見えるものの、近年の変動は大きく、特に都市別で明確な差異が浮き彫りになっています。
要因としては以下の変化が挙げられます:
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ビジネスウェアのカジュアル化:ノーネクタイ、ジャケット不要の職場が増加
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気候の温暖化:冬物のセーター需要の減少
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コロナ禍の影響:リモートワーク普及により衣料支出が減退
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ファストファッションの普及:安価な衣料での代替が可能に
これらの複合的要因によって、支出額は「所得」よりも「働き方や職場文化」に強く影響されるようになりました。
支出上位都市に見るトレンドと共通点
支出額が特に高かった都市は以下の通りです:
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広島市(5,794円、+78.44%)
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水戸市(4,126円、+99.81%)
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相模原市(4,111円、+45.52%)
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山口市、松山市、富山市など
これらの都市では、以下のような要素が支出を押し上げています:
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地元企業の制服・ドレスコード維持:地方中核都市では、比較的保守的な服装規定が残っており、フォーマルウェアの需要が持続。
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中小企業中心の経済構造:制服支給ではなく自己負担での衣類購入が多くなる傾向。
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季節要因と地理的条件:寒暖差のある地域では、春秋に適した衣類購入が繰り返される。
特に広島市の急増は、前年の水準が1時的に低かった反動や、転勤族・公務員の多さが関係していると考えられます。
支出下位都市に見る低迷の構造
1方で支出額が著しく低かった都市には以下のような特徴があります:
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北9州市(952円、-51.82%)
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堺市(1,229円、-55.89%)
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佐賀市(1,347円、-64.06%)
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仙台市、札幌市など大都市圏も含まれる
これらの地域では、以下のような事情が背景にあります:
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リモートワークの定着率が高い:特にITや行政関連が多い都市では、私服勤務が増加し、衣料支出が不要に。
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高齢化による勤労世帯の縮小:家計調査での「勤労者世帯」の数自体が減少している可能性。
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所得の2極化と生活防衛意識:消費支出の中でも衣料は真っ先に削られやすく、安価な代替手段(古着、アウトレット)が活用されている。
佐賀市のような著しい減少(-64.06%)は、調査対象期間内における偶発的要因(セールの影響や購入タイミングのずれ)も考慮すべきです。
世代間の価値観と衣類購入行動の差
同じ「勤労者世帯」であっても、世代間の価値観は大きく異なります。
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若年層(20代~30代):オンライン購入中心、低価格志向、実用性重視
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中年層(40代~50代):見た目・ブランド志向が強く、出費を惜しまない傾向
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シニア勤労層(60代前半まで):高品質で長持ちするものを選ぶ傾向があり、価格よりも耐久性に価値を置く
このように、年齢とライフステージによって「同じ支出額」でも衣類の選び方が異なる点は重要です。
今後の動向と予測
今後のシャツ・セーター支出は、都市ごとの働き方の変化や経済情勢によって、さらに2極化が進むと予測されます。
プラス方向への要因:
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オフィス回帰による衣料需要の回復
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デジタル衣類(発熱・冷却・伸縮性素材など)への投資拡大
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地方移住促進による地域衣料文化の多様化
マイナス方向への要因:
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賃金の実質目減りによる生活防衛意識の高まり
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ユニフォーム制度の導入による個人購入機会の減少
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サブスク型衣料サービスの普及で「買わずに借りる」層の増加
総じて、支出額自体は都市単位で上下する可能性がある1方で、全国平均は横ばいから微減傾向が続くと見られます。
まとめ
勤労者世帯におけるシャツ・セーターの支出は、単なる所得や物価だけでなく、働き方改革、地域経済、企業文化、世代価値観のすべてが交錯する指標です。今後も地域ごとの詳細な分析が、消費トレンドや政策設計に不可欠な材料となるでしょう。
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