勤労世帯における「他の社会保障給付」は近年急増しており、2025年3月時点で全国平均は6467円。児童手当や介護関連給付などが主で、地域差が非常に大きい。自治体の福祉政策や高齢化率の違いが影響し、今後はさらなる格差と政策対応の重要性が増す見通し。
他の社会保障給付の家計調査結果
他の社会保障給付の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 新潟市 | 熊本市 | 静岡市 | 鹿児島市 | 横浜市 | 甲府市 | 津市 | 長崎市 | 長野市 | 鳥取市 |
最新値[円] | 6467 | 19350 | 15870 | 11050 | 10600 | 10300 | 9517 | 9156 | 8973 | 7485 | 5820 |
前年月同比[%] | +14.08 | +15.16 | +204.3 | +219.4 | +145.4 | +76.4 | +356.9 | +218.9 | -1.048 | +36.91 | -46.75 |
他の社会保障給付の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 京都市 | 千葉市 | 和歌山市 | 川崎市 | 福島市 | 青森市 | 岐阜市 | 宮崎市 | 富山市 | 大分市 |
最新値[円] | 6467 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 362 | 391 | 420 | 642 |
前年月同比[%] | +14.08 | -100 | -100 | -100 | -100 | -95.95 | -88.97 | -80.23 |
これまでの他の社会保障給付の推移


詳細なデータとグラフ
他の社会保障給付の現状と今後
家計調査における「他の社会保障給付」とは、公的年金以外の政府・自治体による現金給付を指します。主な内訳には児童手当、出産・育児1時金、生活保護、失業給付、介護保険関連給付、障害福祉給付、就学支援金などが含まれます。これらは世帯の年齢構成や地域の社会構造により大きく影響されるため、勤労世帯であっても受給が発生することがあります。
長期的推移:2000年から2025年までの変化
2000年代初頭の「他の社会保障給付」は、主に児童手当や失業給付が中心でしたが、少額かつ限定的なものでした。しかし育児支援の拡充、生活保護の高齢化、介護保険制度の導入・定着などにより、徐々に勤労世帯にも波及する構造となってきました。特に2020年以降は、コロナ禍を背景とした臨時給付金や自治体の独自支援が増加したことも影響し、2025年3月時点での全国平均は6467円と大きく拡大しています。
都市別の大きな格差:高給付都市の特徴
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新潟市(19350円):高齢世帯比率が高く、介護保険給付や障害福祉関連支援の受給者が多いことが1因と考えられます。児童関連給付も1定数存在。
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熊本市(15870円)・静岡市(11050円)・鹿児島市(10600円):これらの都市はいずれも地方都市で、生活保護世帯や高齢者介護世帯の割合が相対的に高いと見られます。
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甲府市(9517円)・津市(9156円)・長崎市(8973円):地域福祉政策が手厚く、地方自治体が独自に行っている給付策が統計に反映されている可能性があります。
これらの都市では、高齢化と福祉依存度の高さ、または子育て世帯向け支援策の充実が、数値の高さにつながっていると考えられます。
少給付都市の構造:なぜ低いのか
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岐阜市(362円)、宮崎市(391円)、富山市(420円)、大分市(642円):これらの都市では、そもそも該当する給付対象が少ない、または集計時期のズレや政策変更の影響が大きいと見られます。
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千葉市・和歌山市・川崎市・青森市(いずれも-100%):これは給付停止や統計上の反映漏れ、1時的な政策終了の影響が考えられます。たとえば特定の助成が終了したことで1気に0円となった場合などです。
低給付都市では、自治体の支援姿勢の差、申請率の違い、年齢構成の若さ、生活保護や介護給付の受給率の低さが反映されている可能性があります。
勤労世帯で社会保障給付を受ける要因
勤労世帯においても、「働いている=無給付」ではありません。次のようなケースで「他の社会保障給付」が発生します:
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子育て中の世帯:児童手当・出産1時金・保育助成など。
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高齢者との同居・介護者世帯:介護保険給付・高齢者福祉給付。
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障害者や就学支援対象者がいる世帯:障害福祉給付や教育費助成。
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1時的な失業・病気による休職:雇用保険による失業給付や傷病手当金など。
このように、「就労」していても、社会保障の対象となる要因は多様であることが分かります。
今後の動向と課題
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児童手当の拡充議論:少子化対策としてさらなる給付拡大が検討されており、今後の勤労世帯への影響は大きい。
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介護・障害福祉の給付対象の広がり:高齢者の扶養を担う現役世帯への給付が拡大すれば、勤労世帯でも金額が増える可能性がある。
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自治体間格差の顕在化:独自給付制度の有無や福祉政策の積極性により、今後も都市間格差は拡大する恐れ。
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統計の時期依存性:1時的な給付(コロナ給付、臨時手当等)により1時的に跳ね上がる場合もあるため、継続的な推移を注視する必要がある。
世代間格差と政策のジレンマ
若年層に対する支援が拡充される1方で、高齢者扶養を担う現役世帯への支援が制度的に曖昧な状態が続いています。とくに介護保険制度は高齢者本人への給付が中心であり、実際に支える家族の負担軽減に直結していない面もあります。こうした制度の再設計なしに勤労世帯への給付を増やしていくことは難しく、世代間の公平性をどう確保するかが問われています。
まとめ:勤労世帯にも浸透する社会保障給付
「他の社会保障給付」は、かつては非就労世帯や高齢者世帯を主な対象としていましたが、今や子育て、介護、障害、教育といった生活支援を通じて勤労世帯にも深く関与するものとなりました。この流れは今後さらに拡大する可能性が高く、家計調査においても、労働収入だけでは把握できない「現金給付による補完」が1層重要になっていくと見込まれます。
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