家計調査から見る保健医療サービス支出の地域差と将来の動向分析

保健医療



家計調査に基づく「保健医療サービス」支出の動向を見ると、都市間で大きな格差があり、熊本市や福井市など地方都市での支出が高まる一方、千葉市や相模原市など都市圏での減少が目立ちます。背景には高齢化の進行、地元医療機関への依存、自治体ごとの制度差などがあり、今後は地方高齢世帯を中心に支出増加が続く可能性があります。一方、都市部では予防重視や保険制度の活用により支出が抑えられる傾向も見られます。

保健医療サービスの家計調査結果

保健医療サービスの多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 熊本市 福井市 東京都区部 徳島市 鹿児島市 さいたま市 名古屋市 長野市 新潟市 北九州市
最新値[円] 7761 13720 13680 12110 11690 11670 11440 11290 11230 11000 10630
前年月同比[%] -9.261 +31.13 +67.72 -3.05 +91.26 +56.86 -36.23 -8.38 +84.43 +135.8 +15.99

保健医療サービスの少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 松江市 秋田市 松山市 甲府市 千葉市 高知市 相模原市 津市 佐賀市 和歌山市
最新値[円] 7761 4623 4656 4711 4750 5124 5124 5293 5377 5514 5637
前年月同比[%] -9.261 +5.452 -21.28 -2.986 +19.26 -20.32 -24.76 -33.7 -45.38 -29.92 +48.85

 

これまでの保健医療サービスの推移

保健医療サービスの推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

保健医療サービスの保健医療現状と今後

「保健医療サービス」とは、病院・診療所での診察、リハビリ、介護に近い医療的処置、訪問看護など、物品購入以外の人的サービスを含む分野であり、医療機関との接触頻度や制度利用の有無が支出額に大きく影響する。特に高齢者人口の多い地域ではこの項目の支出比率が高まる傾向がある。

全体平均の推移とその背景

2008年から2025年までの家計調査のデータを見ると、保健医療サービスへの支出は、平均でおおむね緩やかに上昇してきた。直近の2025年3月では平均7761円。これは物価上昇や医療費の増加、また訪問看護・在宅医療の利用増が背景にあると考えられる。新型コロナウイルスの影響により1時的に受診控えが起きたものの、2023年以降は回復傾向。

都市別の支出額上位とその特徴

熊本市(13720円)、福井市(13680円)、東京都区部(12110円)などが上位を占める。これらに共通するのは以下のような要因:

  • 高齢者比率が高い(熊本、福井):通院頻度が多く、慢性疾患の継続的な治療が行われる。

  • 医療資源の集中(東京):専門病院への通院や自費診療が選ばれやすい傾向。

  • 地域密着型医療の浸透:徳島市や鹿児島市など地方での支出増も見られ、医療機関との距離が近く、気軽に受診しやすい環境がある。

福井市の前年同期比+67.72%、新潟市+135.8%、長野市+84.43%などは急増が目立ち、後期高齢者の人口比率上昇が影響しているとみられる。

支出額下位都市の事情

松江市(4623円)、秋田市(4656円)、松山市(4711円)などでは全国平均の半額程度の支出にとどまっている。これには以下のような理由が考えられる:

  • 人口規模が小さい:医療機関の数が限られ、アクセス頻度が減少。

  • 自己負担を抑える地域政策:子育て世帯や高齢者に対する医療費助成が手厚いケース。

  • 予防意識や健康志向の差:特に都市圏近郊では、予防医療や軽症時の受診控えが支出を抑制している。

また、相模原市(5293円)や津市(5377円)など都市圏でも支出が低い例があり、これは共働き世帯の多さや時間的制約により医療機関への通院が後回しにされる傾向も影響している。

世代間の支出傾向と意識の差

  • 高齢世帯:慢性疾患の管理や通院が頻繁で、医療サービス支出が高くなる。

  • 現役世代(30〜50代):仕事や子育てで受診時間が限られ、支出は相対的に少ない。

  • 若年層(20代以下):予防医療への意識は高いが、実際の医療機関利用頻度は少なく、支出額は最も低い。

特に都市部では、健康診断や遠隔診療といった新しい医療の形態を活用し、保健医療サービスに直接的に費用をかけないスタイルが広がっている。

今後の予測と政策的課題

今後、保健医療サービスへの支出は以下の傾向で推移する可能性がある:

  • 地方圏では支出増加が続く:高齢化の進行と医療依存度の高まりにより、通院や訪問看護等のサービス利用が増える。

  • 都市部では支出の2極化:富裕層は自由診療や先進医療を選び、1般層は予防志向によって支出抑制へ。

  • 世代間格差の拡大:高齢層の支出は医療ニーズに比例して伸び、若年層は経済的負担を避ける傾向が継続。

政策的には、医療費抑制のための予防医療推進、地域医療の再整備、また低所得高齢世帯への医療支援拡充が重要となる。

まとめ

保健医療サービス支出は、都市の特性や世帯構成、年齢層によって大きく異なる。高齢化の進む地方では支出が顕著に増加しており、医療制度の持続可能性や地域医療体制の再設計が課題となる。1方、都市部では医療に対する選択と集中が進み、より個人志向の医療消費が見られるようになっている。今後は医療サービスの質と量のバランスをとりつつ、全世代が安心して利用できる制度設計が求められる。

 

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