住宅別の背広服支出は、住宅ローン世帯で高く、公営住宅など公共住宅では極めて低水準です。支出の多い層は現役就業世代が中心ですが、リモート勤務や節約志向、リユースの進展により、全体的に減少傾向が顕著です。今後も公営住宅では需要が消滅に近づく一方、ローン世帯でも緩やかに減少が続くと予測されます。
住宅別の背広服
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 持ち家のうち住宅ローン有り | 給与住宅 | その他 | 持ち家 | 民営 | 都市再生機構・公社等 | 公営 |
最新値[円] | 1013 | 1904 | 1663 | 1647 | 1065 | 627 | 148 | 40 |
前年月同比[%] | -25.06 | -3.448 | -51.09 | 58.98 | -11.4 | -49.72 | -70.22 | -84.19 |
これまでの住宅別の推移


詳細なデータとグラフ
住宅別の現状と今後
背広服の購入支出は、単に就業や年齢といった個人要因だけでなく、居住環境や住宅形態とも密接に関わっています。特に住宅別に見ると、経済的余裕や生活スタイル、雇用形態などが支出に表れ、物価や社会環境の変化にも敏感に反応します。本章では2002年から2025年3月までのデータをもとに、住宅形態別の背広服支出の傾向と背景、今後の見通しを詳述します。
支出が高い住宅層の特徴
-
住宅ローンを抱える持ち家層(1,904円) この層が最も高い支出を示しています。背景には、現役世代で収入が安定し、企業勤務・正社員としてスーツを着る機会が多い層が多く含まれることが挙げられます。住宅ローン返済中ということは、家庭を持ち、働き盛りの世代が多いことを示しており、就職活動や仕事上のスーツ需要が続いています。
-
給与住宅(1,663円)・その他(1,647円)も高水準 給与住宅は公務員などの社宅が主で、やはり定職に就いている人が多く、制服代わりにスーツが必要な職種が多いのが特徴です。その他住宅は社宅や借上げ住宅、二世帯住宅など多様な背景があり、家族構成や就業形態により支出のばらつきがあるものの、一定の需要があります。
支出が低い住宅層の特徴と変化
-
民営(627円)、都市再生機構・公社等(148円)、公営住宅(40円) この層では支出が著しく低く、公営住宅では40円という極端な数字が示されています。これは住民の多くが高齢者や低所得者層であり、スーツを新調する機会が限られていることを示唆します。さらに、スーツを要する仕事から既に離れている人が多く、支出がほぼゼロに近いことも少なくありません。
前年同期比の変動から見える課題
-
給与住宅・民営・都市再生機構・公営住宅で大幅減少 給与住宅(-51.09%)、民営(-49.72%)、都市再生(-70.22%)、公営(-84.19%)と急落しており、特に公共住宅関連では支出がほぼ消失しています。これは、リモートワーク定着や就業スタイルの多様化、さらには節約志向の強まりが要因と考えられます。
-
例外的に支出が増えた「その他」(+58.98%) 「その他」は多様な住宅形態を含むため、就職活動や冠婚葬祭など一時的な支出が発生した可能性があります。一方で、サンプル数の少なさによる統計的ゆらぎの影響も否定できません。
今後の見通しと社会的含意
-
住宅ローン世帯での支出は一定維持 今後も、現役世代の多い持ち家(ローンあり)層では、背広服需要は一定量残ると予測されます。とはいえ、私服勤務の普及やレンタルスーツの浸透などで年々減少していく可能性が高いです。
-
公共住宅層ではさらなる支出低下へ 高齢化と所得水準の影響を受け、今後もスーツ需要はほぼなくなると見込まれます。必要な場面には既存のスーツや中古品、レンタルの活用が主流となるでしょう。
-
リユースと所有の考え方の転換 すべての住宅層に共通して言えるのは、「新しく買う」より「持っているもので済ます」「借りる」という価値観へのシフトです。これは環境負荷の軽減や家計節約とも結びつき、社会全体の購買行動に影響を与えています。
コメント