住宅形態による国内パック旅行費支出は大きな差が見られ、持ち家や「その他」の住宅では比較的支出が多く、給与住宅や公営住宅では支出が抑制されています。物価高や住宅費の増加が旅行支出に影響し、特に住宅ローン世帯では支出減少が顕著です。今後は旅行支援策や住宅政策が、支出格差の是正と旅行需要の回復に重要な役割を果たすと考えられます。
住宅別のパック旅行費(国内)
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
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名称 | 平均 | その他 | 持ち家 | 持ち家のうち住宅ローン有り | 民営 | 公営 | 給与住宅 |
最新値[円] | 1754 | 3050 | 2297 | 1910 | 1597 | 1033 | 217 |
前年月同比[%] | -7.198 | 58.44 | -3.039 | -16.85 | 47.87 | 5.086 | -79.91 |
これまでの住宅別の推移


詳細なデータとグラフ
住宅別の現状と今後
住宅の所有形態や住環境は、家計支出の構造に大きく影響を与える要素です。特に旅行費用のような「裁量的支出」(必要不可欠ではない支出)は、住まいにかかる固定費の影響を強く受けます。2004年1月から2025年3月までのデータを踏まえると、住宅別に国内パック旅行費の支出傾向は明確に分かれています。ここではその背景や問題点、将来的な推移を整理して考察します。
住宅別支出の現状と特徴
「その他」の支出が突出(3050円/+58.44%)
「その他」に分類される住宅は、明確な分類が困難なケースや特異な住環境(例:シェアハウス、セカンドハウスなど)が含まれ、可処分所得の大きな層が一定数いる可能性があります。前年比+58.44%という高い伸び率は、物価上昇のなかでも旅行に積極的な姿勢がある世帯を示しており、生活コストが低く抑えられている、または高所得層である可能性が示唆されます。
持ち家世帯:旅行費支出は高いが減少傾向
持ち家全体の平均支出は2297円と高めですが、前年比では-3.039%の減少。特に「住宅ローン有り」の持ち家では1910円とやや低く、前年比-16.85%と大きく減少しています。これは、ローン返済負担の重さが裁量支出を圧迫しているためです。加えて、住宅ローン金利の上昇や、固定資産税・光熱費の上昇が旅行に回す余力を削いでいると考えられます。
民営住宅:支出が増加傾向(1597円/+47.87%)
賃貸住宅の中でも民営住宅に住む世帯は、比較的所得水準が高いか、もしくは生活に柔軟性があることから、旅行に対して前向きな傾向が見られます。物価上昇下でも、旅行への支出意欲が高まり、前年比で大幅な増加を記録しています。
公営住宅・給与住宅:支出は低く、特に給与住宅で大幅減(217円/-79.91%)
公営住宅や給与住宅に住む世帯は、経済的支援を受けている層や、公的な住宅供給制度の恩恵を受ける層です。公営住宅でも支出は1033円と低く抑えられ、給与住宅に至っては217円と極端に低く、前年比では80%近い減少です。これは物価高による生活費の上昇が直撃しており、旅行どころではない状況を反映しているといえるでしょう。
旅行支出と住宅支出のトレードオフ
住宅コストが家計を大きく圧迫する構造の中で、旅行支出は真っ先に削られやすい項目です。住宅ローン返済中や賃料の高騰に直面している世帯では、日常生活の維持が優先されるため、旅行は「ぜいたく品」として遠ざけられる傾向が強くなります。特に固定費が大きい住宅形態(ローンあり持ち家など)ほど、旅行に充てる余裕がなくなりやすいのです。
今後の見通しと政策的課題
経済格差の反映
住宅形態と旅行支出の差は、住宅コストによる生活格差を明確に映し出しています。今後もこの傾向は強まり、自由に旅行を楽しめる層と、生活を維持するだけで精一杯な層との間で支出格差が拡大する可能性があります。
旅行支援政策の必要性
物価高が続く中、観光業の活性化のためには低所得層にも届く旅行支援が必要です。Go Toトラベルのような施策も、一部の住宅形態(特に公営住宅や給与住宅世帯)では十分な恩恵を受けられていない実態があるため、世帯の実情に応じた柔軟な施策が求められます。
働き方・住まい方の多様化と支出傾向
今後、リモートワークや地方移住の進展によって「住まい方」が多様化すれば、旅行支出の形も変化する可能性があります。住む場所と旅行先の境界が曖昧になり、「移動型ライフスタイル」を採る層が増えれば、住宅分類そのものが実態に合わなくなることも考えられます。
まとめ
住宅別のパック旅行費支出には、生活費の余力や経済的自由度が色濃く反映されます。「その他」や持ち家層では比較的支出が多く、一方でローン返済中や公的住宅に住む世帯では旅行支出が大幅に抑制されています。今後も住宅費の負担が旅行需要に影響を及ぼすと考えられ、支援策や社会的インフラの整備が旅行消費の回復には不可欠です。
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