日本の家屋の設備・修理費は地域差が大きく、北海道や四国では大幅な支出増が見られる一方、東海や北陸では減少傾向にある。支出した世帯の割合も1.97%と少なく、高齢化住宅や物価高、職人不足が修繕需要に影響している。今後はリフォーム需要や自治体支援の拡大が支出を押し上げる可能性がある。
家計調査結果
家屋の設備・修理費の相場
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 北海道 | 中国 | 小都市B | 中都市 | 四国 | 近畿 | 北陸 | 九州・沖縄 | 全国 | 東海 |
最新値[万円] | 35.33 | 64.27 | 42.71 | 41.05 | 39.65 | 38.19 | 36.66 | 33.86 | 33.38 | 32.67 | 32.13 |
前年同月比[%] | +6.832 | +114.6 | -2.766 | +15.28 | +5.118 | +73.08 | +4.08 | -19.43 | +49.7 | -4.447 | -16.35 |
家屋の設備・修理費支出の世帯割合
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 東海 | 北陸 | 四国 | 関東 | 中国 | 中都市 | 全国 | 大都市 | 小都市B | 小都市A |
最新値[%] | 1.967 | 2.66 | 2.59 | 2.24 | 2.11 | 2.07 | 2.05 | 1.97 | 1.96 | 1.95 | 1.91 |
前年同月比[%] | +2.646 | +35.03 | -20.06 | +67.16 | +5.5 | +6.701 | +4.061 | +2.073 | +3.158 | +18.18 | -9.048 |
家屋の設備・修理費の推移


詳細なデータとグラフ
家屋の設備・修理費の住宅関係現状と今後
住宅関係の家屋の設備・修理費は、居住空間の維持・快適性向上・老朽化対策に欠かせない支出であり、生活インフラの根幹をなす重要な費目です。2025年4月時点での全国平均は353,300円で、比較的高い水準にありますが、地域別に見ると大きなばらつきがあり、地域の住宅事情や気候、経済環境が反映されていることが読み取れます。
地域別の支出水準と特徴
支出額が最も高いのは北海道(642,700円)で、2位以下を大きく引き離しています。これは北海道の厳寒気候に起因し、暖房機器の更新や断熱リフォームといった高額な工事の必要性が高いためです。
次いで、中国(427,100円)、小都市B(410,500円)、中都市(396,500円)と続きますが、これらの地域はいずれも平均より大きく上回る支出となっており、都市インフラの老朽化や生活スタイルの変化、住民の年齢層の高齢化などが背景にある可能性があります。
1方、最も支出が低いのは東海(321,300円)で、全国平均(326,700円)を下回っています。北陸も338,600円と相対的に低く、雪国ではあるものの、耐雪構造が既に備わっている住宅が多く、大規模な修繕が必要な件数が限られている可能性があります。
支出の増減傾向と要因分析
前年同月比で見ると、北海道の+114.6%、4国の+73.08%、9州・沖縄の+49.7%と急増している地域がある1方、東海(-16.35%)や北陸(-19.43%)のように支出が大幅に減少している地域も存在します。
このような地域差の背景には、災害(地震・台風・大雪)などによる突発的な修繕需要や、助成制度の有無、地元工務店の価格水準、住宅ストックの築年数分布など、複数の構造的要因が考えられます。
また、全国平均としては+6.832%の増加ですが、支出した世帯の割合は1.967%と依然として低く、家屋の設備・修理を行っているのは限られた世帯であることが明らかです。つまり、高額支出をしている1部の世帯が平均を押し上げている構図とも言えます。
支出世帯の割合の変化と地域性
支出世帯の割合について見ると、中都市(2.05%)や中国(2.07%)が最も高く、比較的活発な修繕活動が行われていると考えられます。逆に、北海道(1.2%)や近畿(1.36%)は割合が低く、費用は高くとも修繕を行う世帯は限定的です。
前年同月比での支出世帯割合の変化では、小都市B(+18.18%)や中国(+6.701%)が増加しており、潜在的な修繕需要が顕在化し始めている兆候と解釈できます。対照的に、北海道(-13.67%)、近畿(-25.68%)では支出世帯が減少しており、物価高や職人不足などの外的要因が修繕のハードルを上げている可能性があります。
直面する課題と背景
現在の家屋の設備・修理費における課題は以下のように整理できます:
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高齢化住宅ストックの増加:1980年代以前に建てられた住宅の割合が多く、今後修繕需要は確実に増加。
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職人不足・資材高騰:建設業界の人手不足や資材価格の上昇が、修繕費を押し上げる要因に。
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予防的修繕の未実施:支出世帯割合の低さから、多くの住宅で「壊れてから直す」後手の対応が多いことが推察される。
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地域格差:自治体によって助成制度の有無や住民の所得水準に差があり、修繕の実施可否に影響。
今後の展望と期待される変化
今後の家屋の設備・修理費は、次のような方向に進むと考えられます:
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リフォーム需要の拡大:高齢者向けのバリアフリー改修や、断熱性能向上による光熱費削減志向が、支出の下支えに。
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IT技術との連携:スマートホーム設備や省エネ装置の導入などで設備投資の性質が変化。
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地方自治体の支援拡充:人口減少対策として住環境の維持整備を促す政策の導入が進む可能性。
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サブスクリプション型住宅管理サービスの普及によって、1定額の支出で定期点検や軽微修理が実施されるスタイルへの移行もありうる。
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