日本における住宅の給排水関係工事費は平均14.39万円で、北陸や中都市で特に高額化が進んでいます。全国的には前年比+9.544%の増加で、特に北陸(+153.3%)や関東(+62.81%)などの上昇が目立ちます。一方で支出世帯の割合は横ばいか減少傾向にあり、老朽住宅の増加や人口減少地域での需要の偏在が見られます。今後は高経年住宅のリフォーム需要や省エネ型設備導入の拡大を背景に支出増加が見込まれる一方で、格差や業者不足への対策が重要となります。
家計調査結果
給排水関係工事費の相場
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 北陸 | 中都市 | 関東 | 東北 | 中国 | 東海 | 全国 | 大都市 | 小都市B | 九州・沖縄 |
最新値[万円] | 14.39 | 23.28 | 20.95 | 18.14 | 16.75 | 16.53 | 16.29 | 15.06 | 14.8 | 13.53 | 12.57 |
前年同月比[%] | +9.544 | +153.3 | +47.8 | +62.81 | -19.03 | +25.98 | -8.171 | +8.414 | -5.852 | +51.05 | +31.88 |
給排水関係工事費支出の世帯割合
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 中国 | 小都市B | 小都市A | 関東 | 近畿 | 大都市 | 東北 | 全国 | 東海 | 四国 |
最新値[%] | 1.656 | 2.29 | 2.23 | 1.95 | 1.89 | 1.81 | 1.78 | 1.77 | 1.72 | 1.69 | 1.36 |
前年同月比[%] | +1.935 | +44.94 | +21.2 | +1.563 | +11.18 | +22.3 | +28.06 | +9.259 | +6.173 | -5.587 | -19.53 |
給排水関係工事費の推移


詳細なデータとグラフ
給排水関係工事費の住宅関係現状と今後
給排水関係工事費とは、住宅における水道管や排水設備の設置・交換・修繕に要する費用を指し、住宅の基本的なインフラを支える重要な支出項目です。経年劣化や設備の更新周期に応じて発生するものであり、住環境の安全性や衛生状態を維持する上で不可欠です。水漏れや詰まりといった緊急対応だけでなく、キッチン・浴室・トイレのリフォームの1環としても計上されることが多いです。
最新データに見る支出の地域差と傾向
支出額の地域差
全国平均は14.39万円ですが、北陸(23.28万円)や中都市(20.95万円)、関東(18.14万円)がそれを大きく上回る1方で、9州・沖縄(12.57万円)や小都市B(13.53万円)など比較的低水準の地域もあります。これは、以下の要因に起因すると考えられます:
-
寒冷地での凍結防止施工(北陸・東北)
-
老朽住宅の多い地域での本格的な配管交換工事
-
都市部の価格上昇圧力と施工業者の競争状況
前年比の変動
前年比での全国平均は+9.544%と増加傾向にあり、特に北陸(+153.3%)、関東(+62.81%)、中都市(+47.8%)などでの急騰が顕著です。これは、物価や資材費の上昇、人件費の高騰、施工件数の増加など複合的な要因が関係していると考えられます。
1方、東海(-8.171%)、東北(-19.03%)など1部地域では支出減となっており、緊急工事の発生件数の減少や、DIY志向・簡易工法の利用が進んだ可能性があります。
支出世帯の割合と背景
給排水関係工事に支出した世帯の割合は平均で1.656%と、ややニッチな支出項目となっています。地域別に見ると、近畿(1.81%)や大都市(1.78%)が高く、北海道(0.99%)や9州・沖縄(1.2%)が低めです。
前年同月比では全国平均+1.935%と微増ですが、北海道(-26.12%)、北陸(-31.35%)などで大きく減少しています。これは、以下のような事情が考えられます:
-
1定期間でまとまった工事が完了し、需要が1巡した
-
経済的理由から工事を先送りする世帯が増加
-
高齢世帯による住み替え・空き家化の進行
問題点 ― 高騰・不均衡・施工格差
給排水工事費を巡る最大の問題は、費用の地域差と施工単価の上昇です。地方では業者数が限られることによる施工単価の上昇、都市部では人件費や材料費の高騰が工事費を押し上げています。また、配管の老朽化が進む中で「放置された配管」が多く、緊急対応による高額請求の問題も増加傾向にあります。
さらに、住民の工事に対する知識不足や、悪質業者による不適切な請求がトラブルの温床となっており、制度的なサポートの必要性が高まっています。
今後の推移と期待される展開
支出の増加が見込まれる要因
-
築年数30年以上の住宅の増加に伴い、老朽化した給排水設備の交換が不可避になる
-
水道法改正・自治体の検査強化によって、定期的なメンテナンスが義務化・促進される
-
節水型トイレや給湯機器の普及によるリフォーム需要の増加
新しいサービスの普及による支出の平準化
-
定額リフォームサービスやローンの活用により、1度の支出負担を軽減する動きが拡大
-
IoT機器による漏水検知システムの導入で、事前対策型の支出が定着する可能性
懸念点
-
業者不足による施工予約の困難化
-
資材費のさらなる上昇に伴う価格不透明化
-
所得格差によるインフラ維持の2極化(都市部 vs 地方、持ち家 vs 賃貸)
まとめ ― 「見えない住宅インフラ」の更新は社会課題
給排水関係の工事は目立たないながらも住宅の生命線を担っており、これからの日本における住宅政策の中で欠かせない分野となります。支出のばらつきが激しい今こそ、住民が工事の必要性や費用感を理解し、適切なタイミングで対応できるような環境整備が重要です。
住宅インフラの更新は個人の責任でありながら、社会全体の安全にも関わる問題です。今後は行政・業界・市民が連携して、持続可能で公平な給排水工事のあり方を模索していくことが求められます。
コメント