日本の世帯における任意自動車保険料の月間支出は、2025年4月時点で平均3.008万円。四国や北陸では特に高く、関東も前年より大幅増となっています。保険料支出世帯の割合は全国平均で15.3%と比較的高く、小都市で高め、大都市では1割を切っています。全体として支出額・割合ともに増加傾向にあり、物価上昇や補償内容の充実が背景にあります。今後はデジタル化や保険商品の多様化が価格変動の鍵を握るでしょう。
家計調査結果
自動車保険料(任意)の相場
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 四国 | 北陸 | 東海 | 近畿 | 小都市A | 関東 | 中国 | 全国 | 小都市B | 中都市 |
最新値[万円] | 3.008 | 3.614 | 3.566 | 3.402 | 3.39 | 3.266 | 3.237 | 3.066 | 3.012 | 2.987 | 2.976 |
前年同月比[%] | +3.375 | +9.42 | +16.63 | +4.972 | -0.443 | +7.209 | +16.02 | -7.417 | +4.5 | +0.184 | +7.865 |
自動車保険料(任意)支出の世帯割合
2025年4月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 北海道 | 東北 | 九州・沖縄 | 北陸 | 小都市B | 小都市A | 中都市 | 東海 | 中国 | 全国 |
最新値[%] | 15.3 | 24.17 | 20.86 | 17.66 | 17.16 | 16.44 | 15.43 | 15.35 | 15.2 | 14.75 | 13.8 |
前年同月比[%] | +5.279 | +17.73 | +6.755 | +12.77 | +6.32 | -5.245 | +1.58 | +10.91 | +0.93 | +10.9 | +4.863 |
自動車保険料(任意)の推移


詳細なデータとグラフ
自動車保険料(任意)の自動車関連現状と今後
任意自動車保険は、自賠責保険ではカバーできない損害(物損や相手方の車両、自己の車両損害、弁護士費用など)を補償するための保険であり、自動車利用者の大多数が加入しています。補償範囲や特約の有無、車種や等級、地域などにより保険料は大きく変動するため、世帯支出の差も自賠責より顕著です。
全国平均と地域別支出の現状
2025年4月時点での月間平均支出額は3.008万円。地域別に見ると以下のような分布になっています。
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高額地域:
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4国:3.614万円
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北陸:3.566万円
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東海:3.402万円
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近畿:3.390万円
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低額地域:
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中都市:2.976万円
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小都市B:2.987万円
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最も高い4国と最も低い中都市では月間約6,000円以上の差が生じており、年間で見ると7万円超の差が家計に生じる計算です。
背景要因:
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4国・北陸の高水準:車両保有率が高く、かつ降雪地域で事故リスクが高い地域では保険料も高額になる傾向。
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都市部の抑制傾向: 公共交通が発達し、運転距離が短い地域では、事故リスクが相対的に低く保険料も控えめ。
支出額の増減とその要因
前年同月比で全国平均+3.375%の増加。北陸(+16.63%)や関東(+16.02%)の急騰が目立つ1方、近畿(-0.443%)や中国(-7.417%)では減少が見られます。
主な要因:
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物価上昇による契約保険料の改定保険会社の支払いコスト(部品価格、修理費、人件費等)の上昇が、保険料の値上げにつながっています。
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補償内容の見直しや拡充事故発生時のトラブルへの備えとして、弁護士特約や対物超過特約の追加加入が進んでおり、支出額が上がるケースが増えています。
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事故率や保険金支払い実績による料率改定地域ごとの保険使用頻度が保険料に反映されているため、近年事故が増えた地域では顕著な増加が見られます。
保険料支出世帯割合の変化とその意味
最新データでは、保険料を支出した世帯の割合は平均15.3%。全国的に広く普及していることが分かります。
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割合が高い地域:小都市B(16.44%)、小都市A(15.43%)、中都市(15.35%)
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割合が低い地域:大都市(9.91%)、近畿(10.24%)
都市部ほど任意保険への加入率が低い傾向にあるのは、カーシェアやレンタカー利用の拡大、車離れの進行、あるいは世帯の若年層比率の高さが影響していると考えられます。
前年同月比:
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増加傾向:大都市(+9.624%)、中都市(+10.91%)、中国(+10.9%)
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減少傾向:4国(-13.88%)、小都市B(-5.245%)
4国では支出額が増えたにもかかわらず支出世帯割合が減少しており、家計の負担感から保険を見直す動きが出ている可能性があります。
現状の課題と今後の見通し
保険料の上昇と家計圧迫のリスク
保険料は年々じわじわと上がっており、可処分所得が伸びない世帯にとっては支出の見直し対象になりやすくなっています。必要最低限の補償に絞るなど、保障の質を落とす動きも今後進行するかもしれません。
地域差の拡大と格差の固定化
事故率や使用環境に応じた料率制度は合理的ですが、地域間の負担感が大きく異なる現状では、特に高齢者の多い地域で深刻な課題となり得ます。
保険商品の多様化と選択の複雑化
「安いが補償範囲の狭いプラン」「走行距離に応じた従量課金制」など、保険商品の多様化が進む中で、適切なプランを選べない世帯が過剰な支出をしているケースも考えられます。
今後のデジタル保険と動的料率の可能性
スマートフォンの運転アプリやコネクテッドカーを活用し、運転状況に応じて保険料が決まる「テレマティクス保険」が徐々に浸透しつつあります。事故を起こさないドライバーにとっては保険料が下がる可能性もあり、保険料抑制と安全運転の両立が期待されます。
まとめ
任意自動車保険は、事故やトラブルへの備えとして多くの世帯が加入しており、月間支出は平均3万円程度に達しています。近年は物価上昇とともに支出額も上昇傾向にあり、地域によっては保険料の急増や支出割合の減少という形でその影響が顕在化しています。
今後は、保険料の上昇がどこまで続くか、どれだけ合理的な設計が普及するかが鍵となります。家計への負担軽減と保険本来の安心確保をどう両立するかが、社会全体で問われるテーマになるでしょう。
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