他の魚介加工品の消費動向と地域差|家計調査から見る最新傾向

食料



総務省の家計調査によると、二人以上世帯における「他の魚介加工品」の消費額は地域間で大きな差があり、富山市や盛岡市などの内陸部で高く、徳島市や和歌山市などの西日本で低水準にとどまっている。価格変動や嗜好、流通状況、世代構成の違いがその背景にある。今後は高齢化や健康志向の高まりにより、魚介加工品の消費は緩やかに推移すると予測される。

他の魚介加工品の家計調査結果

他の魚介加工品の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 富山市 盛岡市 福島市 長野市 札幌市 奈良市 宇都宮市 甲府市 東京都区部 横浜市
最新値[円] 876.6 1352 1275 1244 1169 1165 1128 1124 1107 1086 1069
前年月同比[%] -2.107 +44.14 +31.44 +4.1 +14.38 -1.522 +55.8 -7.642 -18.3 +6.055 +4.191

他の魚介加工品の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 徳島市 和歌山市 松山市 熊本市 松江市 鳥取市 大津市 山口市 鹿児島市 大分市
最新値[円] 876.6 558 560 568 597 616 647 664 665 665 672
前年月同比[%] -2.107 -11 -28.02 -3.401 -20.61 -17.09 +5.892 +1.374 +5.723 -10.01 +5.66

 

これまでの他の魚介加工品の推移

他の魚介加工品の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

他の魚介加工品の魚介類現状と今後

「他の魚介加工品」とは、干物や佃煮、味付け貝類、昆布巻き、煮魚パックなど、刺身や練り製品とは異なる魚介の加工食品全般を指す。家庭での調理負担を減らす半調理品や、伝統的保存食の要素が強く、保存性や手軽さが特徴である。


2008年以降の全体的な動向と背景

2008年から2025年3月までの長期的なデータを見ると、「他の魚介加工品」は一貫して1世帯あたり800円台を中心に安定して推移してきた。これは、以下の要因が複合的に影響している:

  • 共働き世帯の増加:調理の手間を省ける加工食品へのニーズが拡大。

  • 高齢世帯の増加:少量で高栄養価の食品としての利用。

  • 健康志向の高まり:植物油加工品や調味を控えた加工品が普及。

ただし、コロナ禍以降は家庭内調理の増加と保存食への再評価も一時的に追い風となったが、原材料費やエネルギーコストの上昇により価格転嫁が進み、地域によっては消費が落ち込んでいる。


都市別消費水準と特徴

消費金額が高い都市の特徴:

  • 富山市(1352円)・盛岡市(1275円)・福島市(1244円) これらの内陸部都市では、海産物の新鮮な入手が難しいことから、干物や煮魚といった加工品の需要が根強い。冬季の保存食としての文化的要因も強い。

  • 奈良市(1128円)・宇都宮市(1124円) 高齢化率が比較的高く、健康志向や和食志向が影響していると考えられる。

  • 東京都区部(1086円)・横浜市(1069円) 人口規模が大きく、購買力も高いため、種類の豊富な高価格帯商品が選ばれやすい傾向がある。

消費金額が低い都市の特徴:

  • 徳島市(558円)・和歌山市(560円)・松山市(568円) いずれも漁業が盛んな地域で、新鮮な魚介類が安価に入手可能なため、あえて加工品に頼る必要性が低い。

  • 熊本市(597円)・松江市(616円)・大分市(672円) 地産地消の文化が根付いており、加工品よりも地元の生鮮魚介を使用した調理が一般的。


世代間の消費傾向の違い

  • 高齢世代(60代以上) 煮魚や佃煮、干物など伝統的な魚介加工品を日常的に取り入れる傾向が強い。

  • 中年世代(40〜50代) 共働きが多く、調理済み商品や個食向けパック商品を好む。スーパーの総菜コーナーの充実が影響。

  • 若年世代(30代以下) 魚介自体の消費が減少傾向にある。魚の臭みや骨の処理を嫌う傾向もあり、加工品も敬遠されやすい。


価格変動と消費への影響

2025年3月時点での全国平均は876.6円であるが、原材料価格の上昇(特に干物や煮付けの原料魚)が価格に反映されつつある。富山市で前年比+44.14%、奈良市で+55.8%といった大幅な上昇は、流通コストや地域における供給制約の影響も考えられる。

一方で、和歌山市(-28.02%)、熊本市(-20.61%)といった大幅な下落は、地場産業との競合や、消費控えによる価格調整の可能性がある。


今後の見通しと課題

  • 高齢化が進む地域では引き続き消費は堅調 特に中山間部や内陸都市では、加工魚介品の役割はむしろ高まる。

  • 若年層へのアプローチが鍵 魚介加工品に対する「古臭い」「面倒」といったイメージを払拭するため、現代的なパッケージングやレシピ提案が求められる。

  • 価格上昇への対応 量目の調整や、冷凍・冷蔵流通の見直しなど、企業の創意工夫が必要。

  • 地域ブランド化の可能性 伝統的な魚介加工品(例:富山の昆布巻き、福島のニシン煮など)を地域資源として活用すれば、観光土産としての展開も見込める。


まとめ

「他の魚介加工品」は、地域性・世代性が色濃く反映される食品カテゴリーである。今後は健康志向と共働き世帯の利便性ニーズに支えられつつ、地域ごとの特徴に沿った販促や製品開発が鍵を握る。長期的にはやや緩やかな上昇傾向で推移すると考えられるが、消費者との接点の工夫が問われる時代に入っている。

 

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