人参・カブの世界生産動向と今後の予測：中国の独走と変化の兆し

世界の人参やカブの生産は1960年代以降拡大してきたが、2023年には減少傾向が見られた。中国が生産量の約45%を占めており、主導的立場を維持。一方、ウズベキスタンやアメリカは大幅減少、ウクライナやロシアは増産を示すなど、各国の動向に差がある。気候変動、輸送・保管の課題、需要変動が今後のカギとなり、持続可能な農業政策と技術革新が今後の成長を左右する。

人参とカブは世界中で愛される根菜類であり、ビタミンや食物繊維が豊富な健康野菜としても重宝されている。保存性が高く、多様な料理に用いられることから、家庭菜園から大規模農場まで広く生産されている。

世界全体の生産推移（1961年〜2023年）

1961年から世界の人参・カブの生産は一貫して拡大傾向にあったが、2023年には41.39Mt（百万トン）と前年比-1.535%の減少が見られた。これは気候変動による作柄不良や市場の需要変化、収益性の問題などが影響していると考えられる。

主要国別の生産状況と特徴

中国（18.46Mt／44.6%）

世界最大の生産国であり、機械化と集約農業によって高い生産効率を維持している。前年比-0.3313%とやや減少だが、依然として圧倒的なシェアを誇る。国内消費に加え、加工食品や輸出も堅調。

ウズベキスタン（3.45Mt／8.334%）

中央アジアの新興農業国。過去数年で急成長を遂げたが、2023年は前年比-11.91%と大幅な落ち込み。気候変動や水資源の管理問題、流通の未整備が背景にある。

ロシア（1.403Mt／3.389%）

前年比2.999%と増加。国内自給自足と食品価格抑制政策の影響で根菜類の生産が重視されている。

アメリカ（1.332Mt／3.217%）

前年比-8.462%と大きく減少。農地の転作や収益性の問題が影響している可能性がある。大規模農業が主体だが、労働力不足や極端気象の影響も指摘される。

ウクライナ（0.8444Mt／2.04%）

前年比12.75%と大幅な増加。戦争下での農業支援策と地域内需要の増加が影響したとみられる。

イギリス（0.8228Mt／1.988%）

前年比-5.709%。コスト高や労働力問題が続き、生産者が減少傾向にある。

ドイツ（0.7968Mt／1.925%）

前年比2.083%。環境配慮型農業の推進と地域ブランドの強化が成果を上げている。

現代農業が直面する課題

• 気候変動：干ばつや大雨、気温の変動により根菜類の品質と収量に悪影響が出ている。

• 人手不足と高齢化：特にヨーロッパやアメリカでは農業人口の減少が深刻。

• 収益性の低下：市場価格が安定しないことや、コスト増加が生産意欲を削いでいる。

• 物流と保存技術：収穫後の流通・保存技術が整備されていない地域ではロスが大きい。

今後の見通しと予測

• 中国は安定した供給力を維持しつつも、国内需要の変化による微調整が続くと予想される。

• ウズベキスタンは気候対応策と輸出インフラが整えば再成長が見込める。

• ロシア・ウクライナは内需中心に安定成長する可能性があるが、地政学的リスクは高い。

• 欧米諸国では環境型農業や高付加価値化（有機、人手栽培、地域ブランド化）による生産の選択と集中が進む。

• 気候スマート農業（Climate-Smart Agriculture）やAI・ドローンを活用した効率的農業が今後の鍵となる。

まとめと提言

人参やカブの世界生産は、依然として一部の国に偏りがあるものの、地域ごとに独自の課題と強みを抱えている。今後持続可能で多様な生産体制を築くためには：

• 科学的な気候対応技術の導入

• 農業機械化と若手育成の推進

• 国際的な食料連携と貿易ルールの整備

• 地元消費と輸出を両立するバランス戦略

こうした包括的な取り組みによって、人参やカブは今後も世界中で健康と経済を支える重要作物であり続けるだろう。