二人以上世帯の諸雑費支出の都市間格差と今後の動向を徹底解説

二人以上世帯における「諸雑費」は日用品や冠婚葬祭など多様な出費を含み、家計の中で柔軟に調整される項目です。最新データでは山形市や大分市で大きく増加し、逆に青森市や神戸市では大幅な減少が見られます。地方都市ほど支出の変動幅が大きく、物価や地元慣習、世帯構成の影響を受けています。今後も高齢化や社会構造の変化により、都市間格差は広がる可能性があります。

「諸雑費」とは、家計調査において分類される支出項目の中でも特に幅広く、具体的には日用品、冠婚葬祭費、交際費、雑貨、慶弔関連の支出などが含まれます。明確に目的が定まった支出ではなく、生活の中で発生する“その他の費用”とも言える存在です。そのため、経済状況や社会環境、文化・慣習の影響を強く受けやすい項目となっています。

都市別の支出差とその背景

高支出都市の傾向

山形市（5.282万円）を筆頭に、大分市、広島市、横浜市、盛岡市などが高水準となっています。これらの都市では以下のような背景が考えられます。

• 地域の慣習：冠婚葬祭における金品のやりとりが盛んな地域では、その分の支出が増えやすい。

• 高齢化率の高さ：高齢世帯では交際費や葬儀関連費用がかさむ傾向がある。

• 地域経済の相対的安定：消費に回せる余裕がある都市では「諸雑費」にも積極的に予算が割かれる。

特に山形市は前年比+32.77%、盛岡市+63.76%、長崎市+60.73%と大幅な伸びを記録しており、地域的な支出習慣や1時的なイベントの影響が大きかったと推察されます。

低支出都市の傾向

那覇市、秋田市、青森市、神戸市などでは「諸雑費」の支出が2万円以下と低水準です。青森市の-56.63%、秋田市の-33.88%など、著しい減少も見られます。

これには以下のような背景があります。

• 経済的余裕の欠如：景気の影響や高齢世帯の収入制限により、任意性の高い支出が抑えられている。

• 都市化によるライフスタイルの変化：核家族化・近所づきあいの減少により、交際費や慶弔費が相対的に少ない。

• 若年世代の増加や移住：支出に対してより効率を求める世代が中心の地域では、「無駄な支出」としてカットされやすい。

世代別の特徴と意識の違い

「諸雑費」の性質上、世代間での支出傾向に違いが見られます。

• 高齢世帯（60代以上）：慶弔関係・近所づきあい・仏事などの費用が多く、支出が高くなる傾向。

• 若年～中年世帯（30〜50代）：交際費や育児関連の雑費が中心。ただし家計全体のコントロールを重視し、削りやすい項目でもある。

• 共働き世帯：外注（家事代行、クリーニング）などの諸雑費がやや高め。

世代によって「何に使うか」「どこまでを諸雑費と捉えるか」という認識も異なるため、統計では同じ項目でも意味合いが変わります。

経済状況とインフレの影響

直近では全国的な物価上昇が続いており、これが「諸雑費」にも波及しています。とくに日用品価格の高騰や交際費の実質負担増加が家計に影響を与えています。

1方で、「節約志向」も強まっており、消費者の中には支出を抑えようとする行動が広がっています。結果的に、「削りやすい支出項目」である諸雑費が真っ先に見直されやすく、2極化が進行しています。

今後の推移と見通し

今後、諸雑費の支出傾向には以下のような変化が予想されます。

• 高齢化の進展：高齢者世帯の割合が増えることで、慶弔・仏事関連の支出が1定の水準で維持される可能性。

• デジタル化の影響：交際のオンライン化により、対面での交際費や贈答品などが減少。

• 地方と都市の格差拡大：冠婚葬祭や地域交流の頻度の違いにより、支出水準の地域差はさらに広がる。

• 物価高の影響持続：雑費に含まれる日用品や雑貨の価格が高止まりし、全体としては緩やかに増加傾向が続くと見られる。

おわりに

「諸雑費」は家計の中で柔軟に調整される1方で、地域の文化や家族構成、世代の価値観が色濃く反映される支出項目です。今後もその推移は、単なる物価や経済指標だけでなく、社会の変化や人々の暮らし方そのものを映す鏡として、注視すべき指標であると言えるでしょう。