二人以上世帯の男性用洋服支出、都市・世代で大きな格差と変化

洋服



家計調査によると、二人以上世帯の男性用洋服支出は平均1762円と低水準ながら、福岡市や新潟市などでは顕著な増加が見られる。一方、名古屋市や佐賀市などでは支出の大幅減が進行。都市ごとのライフスタイルや所得差、世代間のファッション意識の違いが影響している。今後は高齢化やミニマル志向、ネット通販の影響で、都市間格差が拡大しつつも全体的には緩やかな回復傾向が予想される。

男性用洋服の家計調査結果

男性用洋服の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 福岡市 千葉市 川崎市 神戸市 新潟市 富山市 山形市 北九州市 盛岡市 高知市
最新値[円] 1762 4337 3857 3844 3795 3687 3447 3279 3004 2956 2892
前年月同比[%] -6.577 +320.3 +117.7 +98.04 +125.1 +542.3 +59.36 +125.1 -25.53 +17.96 +294.5

男性用洋服の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 佐賀市 名古屋市 堺市 和歌山市 那覇市 岡山市 甲府市 宮崎市 前橋市 福島市
最新値[円] 1762 192 192 429 518 689 785 791 875 886 916
前年月同比[%] -6.577 -84.62 -93.72 -86.65 -84.09 -57.52 -55.52 -64.97 -44.97 -73.39 -62.58

 

これまでの男性用洋服の推移

男性用洋服の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

男性用洋服の洋服現状と今後

2008年以降、男性用洋服への支出は長らく減少傾向を示していた。要因には、リーマンショック以降の節約志向、ファストファッションの台頭、男性の消費意識の保守化などがある。2020年のコロナ禍によって外出機会が激減したことで、男性用洋服の支出はさらに低迷した。

しかし2023年頃から回復傾向が見られ、2025年3月の最新調査では平均1762円と若干の持ち直しが確認されている。ただし水準としては、2008年初頭の2,000円台前半と比べると依然として控えめである。


都市間格差 ― 福岡・千葉・川崎と佐賀・名古屋の対照性

最新の支出額トップは福岡市(4337円)、以下千葉市、川崎市、神戸市と続く。これらの都市に共通するのは以下の点である:

  • 都市圏で若年層や単身赴任世帯が多い

  • 百貨店やアパレルが集積しやすい都市特性

  • 所得水準が比較的高く、外見やビジネススタイルへの支出意識が残っている

1方で、佐賀市や名古屋市などは200円台と極端に低い水準である。名古屋市のような大都市で支出が減っている背景には、郊外志向、在宅勤務定着、ネット通販移行、シニア層の節約志向などが絡んでいると考えられる。


世代間の特徴 ― 若年層の“服より体験”志向と高齢層の買い控え

近年の若年層は「モノよりコト」志向が強く、洋服よりも体験型消費(旅行、趣味、グルメ)に予算を割く傾向がある。その1方で、SNS時代においては1部の若者が見栄え重視で高価格帯の服を選ぶなど、両極化も起きている。

高齢層は、「洋服は十分ある」「出かける機会が減った」といった理由から購入頻度自体が下がっている。特に地方都市ではこの傾向が顕著であり、佐賀市や和歌山市などでの低支出がこれに対応する。


構造的問題 ― ネット通販の普及と地場小売の衰退

AmazonやZOZOTOWNなどの台頭により、男性が洋服を「試着せずに買える時代」が本格化している。地方ではリアル店舗の撤退が進み、結果として購入機会そのものが減っている。この流通構造の変化が、地域差に拍車をかけている。

また、ユニクロやワークマンといった低価格・機能重視のブランドが支持を集める中で、「枚数は買うが金額は抑える」という購買行動も1般化している。


今後の予測 ― 格差拡大と回復への条件

今後の男性用洋服支出は以下の2つの方向に分かれる可能性がある:

  1. 都市部の支出回復と多様化

    • 外国人観光客やビジネス回帰によって服装意識が復活

    • シニア層でも“アクティブ高齢者”による新しい消費の芽

  2. 地方の支出停滞・構造的低迷

    • 地方経済の縮小と小売環境の悪化が服購入をさらに抑制

    • 高齢化と人口減少により構造的な低支出が続く

これらを総合すると、全体平均としては今後も緩やかな回復が見込まれるものの、都市間での格差はむしろ拡大する可能性が高い。


まとめ:服の価値観の再定義が進む時代に

「男性用洋服」はもはや生活必需品というよりも、「ライフスタイルの表出」としての意味合いを強めている。家計支出の中での割合は小さいが、そこには都市特性、世代観、流通構造の変化といった日本社会の縮図が表れている。今後は価格や枚数よりも、「なぜ服を買うのか」という意味への意識が、支出データの裏に見えてくる時代になるだろう。

 

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