2008年から2025年までの家計調査データをもとに、二人以上世帯の洋服支出の推移を都市別・世代別に分析。川崎市や富山市など一部都市で急増が見られる一方、佐賀市や那覇市などでは大幅減少が目立つ。こうした変化には物価上昇、ライフスタイルの変化、購買チャネルの多様化、地域の産業構造や気候条件などが影響しており、今後の洋服支出も所得格差やEC化の進展により地域差がさらに広がる可能性がある。
洋服の家計調査結果
洋服の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 川崎市 | 富山市 | さいたま市 | 広島市 | 盛岡市 | 大阪市 | 京都市 | 山形市 | 水戸市 | 福岡市 |
最新値[円] | 4796 | 11620 | 8575 | 7951 | 7699 | 7647 | 7032 | 6978 | 6943 | 6805 | 6658 |
前年月同比[%] | -0.536 | +147.1 | +97.99 | -15.41 | +2.763 | +9.524 | +39.08 | +28.96 | +25.05 | +48.87 | +79.85 |
洋服の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 佐賀市 | 甲府市 | 那覇市 | 大津市 | 福島市 | 仙台市 | 堺市 | 秋田市 | 和歌山市 | 静岡市 |
最新値[円] | 4796 | 1559 | 1822 | 2056 | 2225 | 2473 | 2610 | 2614 | 2752 | 2777 | 2818 |
前年月同比[%] | -0.536 | -66.47 | -48.24 | -29.15 | -32.62 | -48.84 | -62.55 | -60.45 | +3.967 | -38.29 | -8.979 |
これまでの洋服の推移


詳細なデータとグラフ
洋服の洋服現状と今後
2025年3月時点での洋服の平均支出は4796円となっており、これは2008年以降の長期的な傾向を踏まえると、中間的あるいはやや下振れした水準といえる。リーマン・ショック直後やコロナ禍では衣料品全体の支出が落ち込み、特に外出機会の減少が大きく影響した。しかし2022年以降は再び緩やかな回復傾向が見られている。
都市間の支出差—川崎市と佐賀市の極端な対比
支出が多い都市
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川崎市(11620円、前年比+147.1%)
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東京都心への通勤層が多く、ファッション消費意識も高い
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高所得世帯や共働き世帯比率が高く、支出余力がある
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リモートワーク緩和後の衣類需要の再燃も影響
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富山市(8575円、前年比+97.99%)
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地場百貨店・セレクトショップの充実や寒冷地での衣類需要
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1時的な催事やセールによる消費拡大の可能性
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支出が少ない都市
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佐賀市(1559円、前年比-66.47%)
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地方都市特有の物価抑制傾向、消費抑制志向
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EC利用比率の高さにより店舗での支出が反映されにくい
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那覇市(2056円、前年比-29.15%)
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年間を通じて温暖な気候のため、衣類購入の頻度が少ない
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カジュアル需要が中心で、高価格帯衣類の購入が限定的
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支出傾向にみる世代間の特徴
洋服支出の傾向は、都市の年齢構成や家族構成にも左右される。以下が特徴的なポイントである。
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若年層が多い都市(例:川崎市)
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ファッショントレンドへの感度が高く、購買意欲も強い
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ECサイトやブランド店舗へのアクセス性が良好
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高齢化が進む都市(例:佐賀市、福島市)
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消費全体が抑制され、衣料品の新規購入頻度が低下
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機能性や実用性を重視し、支出額が限定されがち
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オンライン購買とリアル店舗の2極化
都市によっては、EC化の進展が洋服支出の地域差に表れている。オンライン中心で購入する地域ほど、家計調査に反映される「支出」は少なくなりがちである。
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都市部:店舗購入とECを併用、支出が家計調査に反映されやすい
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地方:EC偏重、特にユニクロ・Amazon・楽天などが主流
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地方では宅配インフラの進展と相まって店舗離れが進む
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今後の洋服支出の展望と課題
短期的な予測(〜2026年)
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2024年度以降の賃上げの定着次第では、都市部中心に支出増加の可能性
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春夏物需要やインバウンド再活性による1部地域の衣料販売活況
中長期的な見通し(〜2030年)
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気候変動とカジュアル化が進み、衣類の「買い替え」頻度が減少傾向に
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サステナブル消費(中古市場、リサイクル品など)への移行が進む
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高齢化の進展により「おしゃれより快適」を志向する支出が増加
政策的・社会的示唆
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消費喚起策としての地域クーポンやファッションイベントの活用が求められる
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地域の百貨店や衣料店の役割見直しと、若年層向け商品展開が鍵
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生活コスト全体の上昇を踏まえた、コスパ重視型商品ラインナップの整備
このように、2人以上世帯における洋服支出は、単なる嗜好の違い以上に、地域の気候、世代構成、所得水準、購買チャネルの変化などが複雑に絡み合って決まっている。今後もこの傾向は続き、地域ごとの支出格差がより顕著になることが予想される。
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