家計調査に基づく最新データでは、二人以上世帯の外食支出は平均1.408万円で、東京都区部やさいたま市など都市部を中心に高水準となっています。外食支出は地域格差や世代構成、地域経済、物価、生活様式の変化に大きく影響されており、今後は高齢化と物価上昇を背景に支出構造が変化すると予想されます。特に地方都市では外食控えの傾向が強まり、都市圏との格差拡大が懸念されます。
外食の家計調査結果
外食の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 東京都区部 | さいたま市 | 名古屋市 | 熊本市 | 千葉市 | 宇都宮市 | 京都市 | 鳥取市 | 静岡市 | 大阪市 |
最新値[万円] | 1.408 | 2.16 | 2.101 | 1.856 | 1.845 | 1.749 | 1.711 | 1.68 | 1.679 | 1.656 | 1.636 |
前年月同比[%] | +7.158 | +5.238 | +11.75 | +13.54 | +12.21 | +15.14 | +32.8 | -1.685 | +34.77 | +18.27 | +8.042 |
外食の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 青森市 | 神戸市 | 宮崎市 | 堺市 | 山口市 | 福島市 | 長崎市 | 徳島市 | 和歌山市 | 新潟市 |
最新値[万円] | 1.408 | 0.756 | 0.821 | 0.935 | 1.017 | 1.027 | 1.039 | 1.049 | 1.086 | 1.098 | 1.115 |
前年月同比[%] | +7.158 | -13.12 | -30.72 | -4.671 | -21.85 | +4.074 | +21.52 | -3.726 | -18.37 | -3.557 | +1.308 |
これまでの外食の推移


詳細なデータとグラフ
外食の調理品・外食現状と今後
二人以上の世帯における外食支出は、リーマンショック後の2009年以降一時的に落ち込んだものの、2010年代半ばから徐々に回復基調に入りました。とくに2015年以降は共働き世帯の増加、高齢者の外出機会増加、そしてデリバリーやテイクアウトの多様化が背景となり、外食への支出は堅調に推移してきました。
2020年の新型コロナウイルス感染症の流行では、外食支出は一時的に大きく減少しましたが、その後は生活様式の適応、店舗側の対策導入などにより回復。2025年3月時点では全国平均で月1.408万円と、コロナ前を上回る水準に達しています。
都市別に見る外食支出の多寡とその背景
外食支出の高い都市
1世帯あたりの支出が高い都市には以下のような傾向があります:
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東京都区部(2.16万円):外食の選択肢が多く、単身赴任や共働き家庭が多いため需要が高い。
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さいたま市(2.101万円)、名古屋市(1.856万円):首都圏・中京圏の住宅都市で外食の利便性が高い。
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熊本市(1.845万円)、宇都宮市(1.711万円):地方中核都市として、外食文化が根付いている。
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千葉市、鳥取市、静岡市なども高水準で、意外な都市が含まれている点が注目されます。
特に宇都宮市(+32.8%)や鳥取市(+34.77%)の急増は、地元経済の回復や新規飲食店の増加、観光客の戻りなどが要因として考えられます。
外食支出の低い都市
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青森市(0.756万円)、神戸市(0.821万円):支出の落ち込みが顕著で、特に神戸市は前年比-30.72%と大幅減。
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堺市、宮崎市、長崎市、和歌山市など:地方圏の中でも消費抑制が強く出ている地域。
これらの都市では、高齢化率の上昇、若年層の人口流出、外食よりも自炊を選ぶ家計行動が影響していると考えられます。また物価高騰の影響で、外食回数自体を減らす傾向がある地域とも言えるでしょう。
都市間の支出差を生む要因
都市ごとの外食支出には以下のような要因が重なっています:
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所得水準:収入が多い都市ほど、外食頻度も高くなる傾向。
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交通利便性・商業集積:駅周辺に飲食店が集まる地域では支出が伸びやすい。
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世帯構成とライフスタイル:共働き世帯や子育て世代は、時間節約のため外食を選びがち。
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地域文化:例えば、沖縄や福岡では安価で手軽な外食文化が根付いており、支出額よりも回数が重視されている傾向があります。
世代間の違いと外食の選び方
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若年層(20〜40代):外食への依存度が高く、SNS映えする飲食店を重視。特に都市部では「食事=外出・娯楽」と捉える層が多い。
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中高年層(50代〜):健康志向の高まりとともに、外食回数は減少傾向。価格よりも内容や安心感を重視する。
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高齢者世帯:自炊能力や意欲の低下により、手軽な外食や宅食を利用するケースが増加。
このように、年齢層ごとに外食の「質」と「頻度」が大きく異なる点が、マーケティング戦略や地域支援政策に影響を与えています。
今後の外食支出の推移と課題
今後、外食支出は都市部と地方で二極化が進むと見られます。要因は以下の通りです:
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物価上昇と賃金格差:都市部では可処分所得が高いため外食継続が可能だが、地方では節約志向が強まりやすい。
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高齢化と人口減少:地方では高齢単身世帯の増加で外食よりも宅食ニーズが拡大。
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新しい飲食業態の普及:サブスク型レストラン、スマホ注文・無人店舗の拡大により、都市部の外食頻度は今後も底堅く推移。
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観光需要の復活:京都や鳥取など観光都市では、国内外からの訪問客の消費が地域の外食支出に大きく貢献するようになる。
一方、地方圏では外食産業の担い手不足や店舗の減少もあり、選択肢が乏しくなることで支出自体が抑制されるリスクもあります。
外食産業・自治体への提言
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外食産業:
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高齢者・単身者向けの小規模・低価格帯メニューの開発
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デジタル注文や宅配強化による利便性向上
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地元食材を活かした差別化戦略
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自治体:
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地元の飲食店支援(補助金、観光連携)
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高齢者への外食券配布など福祉施策との連携
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フードデリバリー事業へのインフラ整備支援
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都市・世代・ライフスタイルの違いをふまえた「多層的な外食戦略」が、地域経済や住民の生活満足度にとって今後ますます重要になります。
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