二人以上世帯の「その他の消費支出」の地域差と今後の動向を詳しく解説

収入・支出



家計調査によると、2025年3月時点の「その他の消費支出」は全国平均で5.99万円。都市別では名古屋市の10.43万円が突出し、他都市との格差が顕著です。背景には地域経済、娯楽文化、世代構成の違いがあり、地方と都市部で支出傾向が大きく異なります。物価上昇や高齢化に伴い、今後も支出構造の変化が予想されます。本稿では動向と要因を章立てで解説します。

その他の消費支出の家計調査結果

その他の消費支出の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 名古屋市 山形市 広島市 盛岡市 高松市 千葉市 京都市 松山市 鹿児島市 大分市
最新値[万円] 5.99 10.43 8.833 8.616 8.367 8.035 7.885 7.84 7.188 6.66 6.585
前年月同比[%] +7.515 +99.83 +44.85 +43.5 +33.27 +27.03 +30.97 +43.55 +72.95 +3.482 -32.15

その他の消費支出の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 那覇市 神戸市 川崎市 佐賀市 和歌山市 秋田市 高知市 浜松市 津市 金沢市
最新値[万円] 5.99 3.251 3.702 3.904 3.971 4.062 4.114 4.274 4.359 4.474 4.579
前年月同比[%] +7.515 -25.29 -27.19 -53.66 -19.82 -28.42 -24.3 -38.68 -46.56 -34.1 -24.02

 

これまでのその他の消費支出の推移

その他の消費支出の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

その他の消費支出の現状と今後

「その他の消費支出」は、食料や住居、交通・通信といった基本的支出以外の、娯楽、交際費、教育、教養、趣味、文化活動などに使われる費用です。この項目は、家計の余裕や生活の質、地域社会とのつながりを反映する指標であり、可処分所得の増減やライフスタイルの変化に敏感に反応します。


これまでの全国的な推移

2008年から2025年までの期間で見ると、「その他の消費支出」は以下のような変動を経験してきました。

  • 2008年〜2012年:リーマンショックの影響やデフレ圧力により消費が控えられ、支出はやや低迷。

  • 2013年〜2019年:アベノミクスによる景気刺激策で消費心理が回復。文化的・娯楽的な支出が徐々に増加。

  • 2020年〜2022年:新型コロナウイルスの影響により、外出機会の減少やイベント自粛で支出が急減。

  • 2023年以降:コロナ禍からの回復とともに支出が急増。リベンジ消費や地域振興策の効果もあり、2025年時点では全国平均で5.99万円に達している。


都市別の支出格差の背景分析

高支出都市の特徴

名古屋市(10.43万円)、山形市(8.833万円)、広島市(8.616万円)など、上位都市では急激な支出増加が見られます。共通点として以下が挙げられます:

  • 地域イベントや観光業の回復:観光業やイベント関連支出の再開。

  • 中間層の活発な消費:世代交代や富裕層の消費が目立つ地域。

  • 高齢者世帯の割合:時間的余裕のある高齢世帯の趣味・文化支出。

特に名古屋市の+99.83%という増加率は、コロナ禍で抑えられていた娯楽消費の一気な解放を示唆しており、域内の経済活性化と連動している可能性があります。

低支出都市の背景

那覇市(3.251万円)、神戸市(3.702万円)、川崎市(3.904万円)などでは、支出が全国平均を大きく下回っています。以下のような背景が推察されます:

  • 物価上昇の影響を強く受けている地域:物価や光熱費の負担増で余暇支出が圧迫。

  • 若年世帯の割合が高い地域:貯蓄志向が強く、非必需支出を抑える傾向。

  • 都市構造の変化:都心部の再開発や住宅価格上昇による固定費の増大。

また、川崎市の-53.66%、浜松市の-46.56%などは、住宅ローン負担や教育費負担の増加によって、「その他の消費」に回す余力が減っていると考えられます。


世代間の支出傾向

「その他の消費支出」は世代によって大きく異なります。

  • 若年層(20~40代):住宅ローンや子育て費用が中心で、可処分所得に余裕が少ない。ネット動画や安価な趣味に集中。

  • 中高年層(50~70代):退職金や年金などを活用し、趣味や旅行、文化活動に多く支出。

  • 高齢者層(70代以上):交際費や医療以外の消費はやや抑制気味だが、一定の文化活動を維持。

よって、高支出都市では中高年世帯の厚みが支出を押し上げていると推定できます。


今後の動向と政策的な注目点

高齢化と支出構造の変化

日本の高齢化は進行しており、「その他の消費支出」は高齢層の文化・健康・教養支出の比重が高まると予測されます。一方、若年層の支出抑制傾向が続けば、地域によっては全体の支出額が鈍化する可能性もあります。

地域活性化政策の影響

観光促進や地方文化活動の助成、デジタル田園都市構想などの政策が地域に与える影響は大きく、「その他の消費支出」の地域差を拡大または緩和する要因となります。

インフレと賃金の関係

インフレの進行による生活コストの上昇が、「その他の消費」に影響を与えることは避けられません。今後は、実質賃金の推移がこの項目の維持や拡大に重要な要因となるでしょう。


まとめと展望

「その他の消費支出」は、生活の質や地域の文化的成熟度を映す鏡です。現在、名古屋市や山形市のような急増エリアと、那覇市や川崎市のような減少エリアとで二極化が進んでいます。この動向は単なる地域経済の差だけでなく、世代構成、価値観、行政支援の有無など複合的な要素によるものです。

今後は、地域ごとの需要特性に合った政策支援が求められ、特に高齢化が進む地域では、文化や健康関連支出をどう支えるかが重要な課題になるでしょう。社会全体の持続可能な発展のためにも、「その他の消費支出」の動向に注目していく必要があります。

 

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