2025年6月の中部・北越の桃市場では、金沢市・名古屋市ともに価格が上昇し、数量は減少。原因は気候変動や人手不足、輸送コスト高騰など。高品質志向が強まる中、生産の不安定さが価格に直結しており、持続的な供給体制の構築が課題。
桃の市場価格
市場 | 卸売価格[円/kg] | 前年同月比[%] | |
---|---|---|---|
1 | 金沢市 | 1653 | +18.69 |
2 | 名古屋市 | 1238 | +10.8 |
市場価格の推移

中部・北越の卸売数量
市場 | 卸売数量[kt] | 前年同月比[%] | |
---|---|---|---|
1 | 名古屋市 | 0.17 | -27.04 |
2 | 金沢市 | 0.013 | -40.91 |
卸売数量の推移

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詳細なデータとグラフ
桃の卸売り市場の現状と今後
2008年から2025年6月にかけて、中部・北越地域における桃の市場は、価格の上昇と数量の減少という明確な傾向を見せています。特に2020年代に入り、気候変動による収量減や人手不足、物流コストの増大が重なり、2025年6月時点で金沢市では1,653円/kg(前年比+18.69%)、名古屋市では1,238円/kg(前年比+10.8%)と大きく価格が上昇しました。1方、卸売数量は、名古屋市が0.17kt(−27.04%)、金沢市が0.013kt(−40.91%)と、出荷量が大きく減少しています。
都市別の特徴と価格構造
金沢市は、北陸地方において高品質果実の需要が高い都市で、ギフト需要や観光需要に支えられています。桃の供給が限られる中、選りすぐりの品に対する評価が高く、市場価格が全国でも上位に位置します。1方、名古屋市は中部地方の物流・経済の中心であり、果実取引の量が多く、地元生産地(長野・山梨・愛知など)との距離も近いため、比較的安定した供給体制を持つことが特徴です。それでも2025年は−27%と出荷量が大きく減っており、供給不安が広がっています。
価格高騰の背景
中部・北越地域の桃価格が上昇している背景には、次のような複合的な要因があります:
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生産量の減少:長野県や福井県など主要産地で、霜害や高温障害による作柄不良が頻発。
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② 輸送・人件費の高騰:特に小ロット取引での輸送コスト増が価格を押し上げている。
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③ 高品質志向の強化:贈答用や観光地での消費を意識した、糖度・外観重視の仕入れが中心。
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④ 中規模市場の縮小傾向:金沢のような地方中核都市では取引量が減り、需給の不均衡が価格上昇を助長。
生産地の状況と中部・北越市場への影響
この地域に流通する桃は、主に長野県南部、山梨県、福井県、岐阜県東部などから供給されます。いずれも気温差のある内陸性気候を活かした高糖度の品種に強みがありますが、近年は春先の低温や降雹、干ばつリスクが増加しており、生産量の安定性が大きく揺らいでいます。また、農業従事者の高齢化と後継者不足が進み、収穫・出荷における人手の確保も難しくなっているため、安定供給が困難になりつつあるのが実情です。
今後の課題と展望
中部・北越における桃の市場は、今後以下の対策が求められます:
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契約栽培や需要予測の高度化による安定流通の確立
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スマート農業導入による省力化と品質安定
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中継地としての市場機能強化による流通の効率化
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観光消費との連携による地産地消型の需要創出
とくに金沢などでは、高価格帯の果実を扱う市場の特性を活かし、小規模でも高付加価値化を図る流通モデルの構築が重要といえるでしょう。
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