中部・北越のたまねぎ市場では、金沢市が156.3円/kgで高値ながら数量増、名古屋市は122.3円/kgと安値だが流通量最大。金沢は価格変動が大きく、名古屋は安定傾向。生産地からの供給回復や流通の違いが価格差に影響している。
たまねぎの市場価格
市場 | 卸売価格[円/kg] | 前年同月比[%] | |
---|---|---|---|
1 | 金沢市 | 156.3 | -18.86 |
2 | 名古屋市 | 122.3 | -7.557 |
市場価格の推移

中部・北越の卸売数量
市場 | 卸売数量[kt] | 前年同月比[%] | |
---|---|---|---|
1 | 名古屋市 | 4.246 | -9.851 |
2 | 金沢市 | 0.293 | +31.98 |
卸売数量の推移

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詳細なデータとグラフ
たまねぎの卸売り市場の現状と今後
2025年6月時点において、中部・北越地方でのたまねぎ市場価格は、金沢市が156.3円/kgと全国平均(138円/kg)を大きく上回る高値を記録しています。1方、名古屋市は122.3円/kgと全国平均を下回り、地域内で顕著な価格差が見られます。
前年同月比での変動を見ると、金沢市では-18.86%と大幅な価格下落、名古屋市では-7.557%の下落となっており、金沢市のほうが調整幅が大きく、これまでの高騰の反動が強く出ている状況です。
卸売数量とその都市別の構造的違い
卸売数量は名古屋市が4.246ktと圧倒的に多く、愛知県・岐阜県・3重県など周辺の生産地からの集荷に加え、関東・関西・北海道からの移入も多く、広域流通拠点としての役割を担っています。前年同月比では-9.851%の減少であり、出荷の1時的な抑制または価格調整によるものと見られます。
1方、金沢市の卸売数量は0.293ktと小規模ながら、前年同月比では+31.98%と大幅に増加しています。これは北陸地方の生産回復や、近年の地域内消費志向の高まりにより、地場流通が活発化している可能性を示唆しています。
価格差の背景にある都市別の市場構造
金沢市の特徴:
金沢市市場は、流通規模が限られている分、価格が供給変動の影響を受けやすく、地元産の比率が高いため、作況に応じて価格が上下しやすい特徴があります。2025年の価格下落は、卸数量増加と需給の緩みが原因と考えられます。
加えて、金沢市は北陸地方という地理的特性上、他地域からの輸送にコストがかかりやすく、価格が上昇しやすい構造もあります。過去には輸送混乱や供給減により200円近い高値を記録した年もありました。
名古屋市の特徴:
1方、名古屋市は中京圏最大の消費地であり、流通量が非常に多く、価格は相対的に安定しています。2025年6月時点での価格が全国平均を下回っているのは、物流網の発達、仕入れ先の多様性、大量取引による価格競争が影響しているためです。
また、東海地方では地場産に加えて、北海道・兵庫・9州産のたまねぎがバランスよく流通しており、需給変動に対する耐性が強い点も安定の理由といえます。
価格高騰とその後の調整の要因
たまねぎ価格は2022〜2023年にかけて全国的に高騰し、その影響は中部・北越地域にも及びました。とくに金沢市では、流通量が限られているなかで全国的な供給不足の影響を直接受け、消費地での高値が顕著となりました。
しかし、2024年以降は北海道産の豊作や、保管・輸送技術の改善により安定供給が進んだ結果、金沢市を含む全国的な価格下落が起こっています。名古屋市はもともと流通が安定していたため、価格の下落幅も小さく抑えられました。
生産動向と中部・北越地域の位置づけ
たまねぎの国内生産は北海道が主力であるものの、中部・北越地域でも1部の県(新潟県、長野県、富山県など)で小規模ながら生産されています。特に近年は、温暖化対応型の品種導入や、春植え・秋取りの切り替えなど、農業経営の工夫によって生産の裾野が広がっています。
ただし、生産規模そのものは全国シェアにおいては限定的であり、同地域の市場は主に北海道や西日本からの移入品に依存しています。そのため、流通コストや仕入れ先の価格動向が市場価格に与える影響が非常に大きいのが特徴です。
今後の展望と課題
中部・北越地域では、今後も名古屋市を中心とする広域流通型の安定市場と、金沢市のような地域密着型の変動市場という2つの市場構造が共存していくと見られます。
地場流通の強化や、農業のスマート化による効率化、輸送費削減への取り組みが進めば、金沢市のような市場でも価格の安定が期待されます。1方、名古屋市のような大市場は引き続き需給調整機能を果たしつつ、周辺地域への供給の要としての役割を担い続けるでしょう。
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