世界の小麦生産は2023年に799Mtと前年比-1.529%の減少を示しつつも、中国、インド、ロシアなどが中心となって支えています。インドやオーストラリアは増加傾向にあり、気候変動や技術革新が今後の鍵となると予測されます。
生産量のデータとグラフ
小麦生産量の最大と最新
世界 | 中国 | インド | ロシア | アメリカ | オーストラリア | フランス | カナダ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2022年 | 2022年 | 2023年 | 2022年 | 1981年 | 2023年 | 2015年 | 2013年 |
最新値[Mt] | 799 | 136.6 | 110.6 | 91.5 | 49.31 | 41.2 | 36 | 31.95 |
最大値[Mt] | 811.4 | 137.7 | 110.6 | 104.2 | 75.81 | 41.2 | 42.75 | 37.59 |
前年比[%] | -1.529 | -0.8204 | 2.61 | -12.22 | 9.836 | 13.69 | 3.936 | -6.934 |
全体比[%] | 100 | 17.1 | 13.84 | 11.45 | 6.172 | 5.157 | 4.505 | 3.999 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
小麦生産量についての推移と展望
小麦は世界で最も重要な穀物の一つであり、食料安全保障、貿易、経済において中心的な役割を果たしてきました。1961年時点での世界生産量は約220Mt(メガトン)程度でしたが、農業技術の進展、灌漑設備の拡充、肥料の使用拡大、品種改良などにより、2023年には799Mtにまで拡大しました。
しかし、近年は気候変動、異常気象、戦争、物流の混乱などが影響し、伸び率の鈍化や減産傾向も見られるようになっています。実際、2023年の前年比では-1.529%となり、世界的にやや減少しました。
主要生産国の現在の状況と特徴
中国(136.6Mt/世界シェア17.1%/前年比 -0.8204%)
中国は世界最大の小麦生産国であり、自国内での食料自給を重視した政策のもとで生産が維持されています。耕地面積の制約や水資源の偏在が課題となっているものの、全体としては安定的に高い生産量を確保しています。
インド(110.6Mt/13.84%/前年比 +2.61%)
インドはここ数年で小麦の生産量を大きく伸ばしており、第二の小麦大国としての地位を確立しています。人口増加に対応するための政策支援や、穀物収穫後の損失削減も影響しています。
ロシア(91.5Mt/11.45%/前年比 -12.22%)
ロシアは世界有数の小麦輸出国でもありますが、2023年は干ばつや極端な気候、戦争の影響などで生産量が大きく減少しました。政策的には輸出制限なども影響しており、世界市場に不安を与える存在でもあります。
アメリカ(49.31Mt/6.172%/前年比 +9.836%)
アメリカでは穀物相場の変動や農業補助金政策によって、生産量の年次変動が激しい傾向があります。2023年は降水量の回復や収穫条件の改善により、前年比で大きく増加しました。
オーストラリア(41.2Mt/5.157%/前年比 +13.69%)
オーストラリアは輸出志向型の農業を行っており、豊作と干ばつを繰り返すサイクルの中で、2023年は比較的好天が続いたことから大幅な増産となりました。ただし、水資源と土壌の限界が課題です。
フランス(36Mt/4.505%/前年比 +3.936%)
フランスはヨーロッパの中でも小麦の主要生産国で、輸出力も高いのが特徴です。EUの農業補助制度の下、安定した生産が維持されています。
カナダ(31.95Mt/3.999%/前年比 -6.934%)
カナダは寒冷地における耐寒性品種を活用した小麦栽培が行われていますが、2023年は天候不順や一部地域での干ばつにより生産量が落ち込みました。
世界の課題とリスク要因
世界の小麦生産は以下のような課題に直面しています:
-
気候変動:異常高温・干ばつ・洪水などの影響が年々拡大。
-
地政学リスク:ウクライナ危機や中東情勢の影響で供給網が混乱。
-
農業従事者の高齢化:特に先進国で深刻で、若年層の農業離れも進行。
-
水資源の制約:灌漑用水の確保が難しい地域では生産量が不安定。
今後の展望と予測
将来に向けて、小麦の生産量は依然として世界的な需要の高まりに応じて増加する可能性がありますが、それには以下のような条件が必要です。
-
スマート農業の導入:AI、ドローン、精密農業の活用。
-
耐干ばつ・高収量品種の開発:バイオテクノロジーの進展。
-
農業政策の柔軟性:気候変動に対応した支援制度。
-
国際協調による食料安保体制の強化
特にインドやオーストラリアのように近年伸び率の高い国々が技術投資を進めることで、将来的に新たな世界の小麦供給の中核を担う可能性があります。
一方で、ロシアやカナダのように気象リスクや地政学的要因に左右されやすい国では、安定供給の仕組みを構築できるかが課題です。
コメント