2023年の世界のラズベリー生産量は941ktで、ロシア、メキシコ、セルビア、ポーランドなどが主力国として生産を牽引している。ロシアとメキシコが成長を見せる一方で、ヨーロッパ諸国やアメリカでは減産傾向が見られ、気候変動や労働力不足、市場価格の変動が背景にある。今後は新興国での生産拡大や高付加価値品種の需要増が鍵となるだろう。
生産量のデータとグラフ
ラズベリー生産量の最大と最新
世界 | ロシア | メキシコ | セルビア | ポーランド | セルビア・モンテネグロ | アメリカ | モロッコ | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2005年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2022年 | 2023年 | 2023年 | 2018年 | 2016年 | 2002年 | 2015年 | 2023年 |
最新値[kt] | 941 | 219.3 | 190.4 | 98.67 | 96.1 | 84.33 | 62.64 | 61.18 |
最大値[kt] | 959.8 | 219.3 | 190.4 | 127 | 129.1 | 94.37 | 119.3 | 61.18 |
前年比[%] | -1.959 | 3.315 | 6.573 | -15 | -8.389 | -8.061 | -14.27 | 8.478 |
全体比[%] | 100 | 23.31 | 20.24 | 10.49 | 10.21 | 8.962 | 6.657 | 6.502 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
ラズベリー生産量についての推移と展望
ラズベリーは冷涼気候を好む果実として、主に北半球の温帯・冷帯地域で栽培されてきた。1960年代には欧州中心に生産が集中していたが、2000年代以降は気候対応品種や施設栽培の進展により、アジア、北アフリカ、中南米でも拡大が見られる。2023年には世界の総生産量は941ktに達したが、前年比では-1.959%の減少となっており、気候や市場要因の不安定さも浮き彫りになっている。
最大生産国ロシアの堅調な成長
ロシアは2023年に219.3ktの生産量を記録し、世界全体の23.31%を占めている。近年は家庭菜園や小規模農園からの供給が商業生産へと移行しつつあり、国内需要の高まりとともに持続的な拡大を続けている。前年比+3.315%と成長を見せており、東欧の気候と地元消費を活かした安定供給体制が背景にある。
しかし、課題もある。特に長距離輸送のインフラ整備や加工技術の不足、市場の国際化への遅れが今後の輸出拡大に制約を与える可能性がある。
メキシコの急成長と南国型ラズベリー生産の革新
メキシコは2023年に190.4ktを生産し、世界シェアは20.24%、前年比で+6.573%の成長を記録している。中南米の中で特に施設園芸と輸出志向の農業モデルを成功させた事例であり、米国市場向けの供給拠点としての地位が確立されている。
メキシコの強みは、冬季も温暖な気候と高原地帯の冷涼な朝晩を活用した二毛作型の栽培体系にある。また、農業輸出企業による大規模投資と労働力の安定供給により、生産効率も高い。一方で、水資源の枯渇や農薬使用への懸念、労働環境の問題が国際社会で指摘されており、持続可能性の確保が課題となる。
セルビア・ポーランドを中心とした欧州の伝統と苦境
セルビア(98.67kt)とポーランド(96.1kt)は長年にわたりラズベリー輸出大国としての地位を維持してきたが、2023年はそれぞれ前年比-15%、-8.389%と大幅な減産に見舞われた。セルビア・モンテネグロ(84.33kt)も-8.061%と減少しており、欧州全体での気候変動の影響や収穫期の高温、極端な降雨の影響が指摘される。
また、EU域内における労働力不足や若手農業従事者の減少も大きな要因となっている。価格の低迷により農家の離農が相次ぎ、今後の生産継続が危ぶまれる地域もある。
アメリカの減速と再構築の兆し
アメリカはかつて西海岸を中心にラズベリーの大規模生産国として存在感を示していたが、2023年には62.64ktと前年比-14.27%の大幅減となった。カリフォルニア州の干ばつや農地価格の高騰、労働力不足が主因とされる。また、オーガニック認証や環境規制への対応がコスト増を招いている。
とはいえ、アメリカでは高付加価値品種や冷凍加工技術に強みがあり、今後は国内消費向けの品質重視型生産への転換が進むと見られる。
モロッコなどアフリカ勢の台頭
モロッコは2023年に61.18ktを記録し、前年比+8.478%と高い伸びを示した。温暖な気候と安価な労働力、欧州市場への地理的近さを背景に、輸出型農業として急速に成長している。
今後は、チュニジアや南アフリカなど他のアフリカ諸国もラズベリー市場に参入する可能性があり、生産地の多極化が進むことが予想される。
今後の予測と持続可能性への鍵
ラズベリーの世界市場は今後も堅調な需要を維持する見込みであり、とくに冷凍果実、スムージー原料、オーガニック製品としての需要が伸びると見られる。
しかし、供給側では気候変動、水不足、労働力確保、輸送インフラなどの課題が山積している。特に、欧米では生産コストの上昇により生産国の地理的移行が進むと予測される。将来的には、室内型農業やAIによる収穫支援技術の導入、遺伝子改良による高耐性品種の開発が鍵を握る。
まとめ
ラズベリーの生産は、冷涼果実でありながら熱帯・亜熱帯地域でも栽培可能となり、世界中で多様な発展を見せている。一部地域での減少はあるものの、新興国の生産拡大や市場多様化がその空白を補い、グローバルな果実市場の中で重要性を高めている。今後は、気候変動とどう向き合いながら持続可能な供給体制を構築するかが問われる。
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