世界のヤシの実生産の現状と国別シェア・将来展望

果物(南国)

2022年のヤシの実(ココナッツ)生産量は18.83Mtで前年比+3.8%。インドネシアやマレーシアが主力生産国だが、タイや中南米諸国も成長中。健康志向の高まりや輸出拡大を背景に、今後も緩やかな増加が見込まれる。

ヤシの実の生産量ランキング

2022年
降順昇順
各国最新値[Mt]全体比[%]前年比[%]
世界18.83100+3.816
1インドネシア10.9258+3.802
2マレーシア4.55124.17+3.02
3タイ0.7353.904+9.375
4ナイジェリア0.3651.939+2.817
5コロンビア0.3221.71+2.956
6メラネシア0.2091.11+5.556
7グアテマラ0.2091.11+8.854
8パプアニューギニア0.1870.993+5.65
9ブラジル0.180.956+9.756
10ホンジュラス0.1540.818+0.654
11ガーナ0.1470.781+2.083
12コートジボワール0.1340.712
13メキシコ0.1020.542+3.03
14コスタリカ0.0890.473+3.488
15カメルーン0.0880.467+4.762
16エクアドル0.0830.441-2.353
17コンゴ民主共和国0.0750.398
18ペルー0.060.319+15.38
19ギニア0.0530.281
20シエラレオネ0.03980.211+2.577
21フィリピン0.0350.186+6.061
22中国0.03320.176+0.0481
23ベナン0.0290.154+3.571
24アンゴラ0.02640.14+3.39
25カンボジア0.0250.133+4.167
26ニカラグア0.0240.127+4.348
27ベネズエラ0.02360.125-3.279
28ガボン0.02350.125+37.43
29ソロモン諸島0.0220.117+4.762
30ドミニカ共和国0.0180.0956+5.882
31パラグアイ0.0150.0798+0.144
32ブルンジ0.008860.0471+0.795
33トーゴ0.007580.0403+9.091
34セネガル0.007560.0402
35タンザニア0.007050.0375+0.219
36コンゴ0.006260.0333-0.308
37パナマ0.005890.0313-26.81
38リベリア0.0050.0266
39ギニアビサウ0.0040.0212
40ガンビア0.002480.0132-0.245
41赤道ギニア0.002410.0128-1.852
42サントメ・プリンシペ0.001360.00722+35.9
43マダガスカル0.001320.007+2.042
44中央アフリカ共和国0.0004490.00238-0.111
45スリナム2.4E-50.000128+0.125
ヤシの実の生産量
ヤシの実の生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

ヤシの実の現状と今後

ヤシの実、特にココナッツ(主にココヤシ由来)は、熱帯・亜熱帯地域に広く分布する重要な作物です。ココナッツは果実としての食用だけでなく、ココナッツオイル、コプラ(乾燥胚乳)、繊維、糖、建材用途まで多目的な利用ができ、”生命の木”とも呼ばれています。

2022年の世界全体の生産量は18.83Mt(1,883万トン)で、前年より+3.816%の成長を記録。長期的には気候変動のリスクがありつつも、需要は安定もしくは緩やかな上昇が続いています。


主要生産国ごとの動向と特徴

インドネシア(10.92Mt、+3.802%)

世界最大のヤシの実生産国であり、全体の58%近くを占める圧倒的シェアを誇ります。生産の中心地はスマトラやスラウェシなど。中小規模農家による栽培が多く、国内消費と輸出の両輪で成長しています。

近年は、老木の更新や品種改良の導入、アグロフォレストリー的管理が進み、安定的な増加傾向を示しています。将来的にも緩やかな成長・安定的供給が見込まれます。

マレーシア(4.551Mt、+3.02%)

パーム油の主要産地として有名ですが、ヤシの実の生産も盛んです。プランテーション型大規模農業が中心で、効率的な生産システムと輸出体制が整備されています。2022年は安定した成長を記録しており、今後も緩やかな増産と高付加価値化が進むと見られます。

タイ(0.735Mt、+9.375%)

近年急成長を遂げている生産国で、2022年には前年比+9.375%の増加と高い伸び率を示しました。これは観光地でのココナッツ需要の高まりや、農村支援政策による作付け拡大の成果と見られます。中小農家主体ですが、今後は加工・輸出産業への展開も期待されています。

ナイジェリア(0.365Mt、+2.817%)

西アフリカにおける主要生産国であり、国内市場向け需要が旺盛です。家庭での伝統的な利用に加え、都市化による需要拡大が背景にあります。徐々に生産性向上が進んでおり、将来的には緩やかな上昇が予測されます。

コロンビア(0.322Mt、+2.956%)

コロンビアでは主にカリブ沿岸部を中心に栽培されています。生産拡大は輸出志向の農業政策やオーガニック需要の高まりと連動。2022年も堅調な増加を記録し、中長期的な成長ポテンシャルを持つ国といえます。

メラネシア(0.209Mt、+5.556%)

パプアニューギニア、フィジー、ソロモン諸島などの島嶼国で構成される地域で、伝統的に生活と密接な作物です。市場規模は小さいものの、自然循環型農業との親和性が高く、気候変動への適応にも1定の強みがあります。

グアテマラ(0.209Mt、+8.854%)

中米の新興勢力として注目されています。前年比+8.854%の高成長は、新規農地開発や輸出向け栽培の拡大が進んでいることを示します。将来はアメリカ市場や欧州市場向けのサプライヤーとしての存在感が高まる可能性があります。

パプアニューギニア(0.187Mt、+5.65%)

生活密着型作物として定着しており、2022年も増加傾向にあります。農業インフラの整備や技術導入が今後の課題ですが、地場経済における持続的成長の支えとして不可欠な存在です。

ブラジル(0.18Mt、+9.756%)

比較的新興のプレーヤーながら、2022年には約10%の成長を記録。北東部でのココナッツ栽培は伝統的に行われてきたが、飲料・健康食品向けの需要増に伴い商業化が進展中です。今後も持続的成長が見込まれます。

ホンジュラス(0.154Mt、+0.654%)

生産量は控えめながら、2022年もわずかに増加。中米内の小規模市場向け供給や、自家消費型栽培が主です。将来的には高付加価値品(オーガニックオイルなど)への転換が鍵となるでしょう。


地域別の傾向と課題

東南アジア(インドネシア、マレーシア、タイ)

  • 世界最大の生産地帯。

  • インフラ整備、流通網、加工産業が成熟。

  • 老木更新と持続可能な栽培技術への移行が課題。

  • 近年は国際認証取得による輸出強化も進行。

中南米(ブラジル、コロンビア、グアテマラ、ホンジュラス)

  • 商業化の段階に入りつつあり、成長余地が大きい。

  • 市場の多様化(北米、欧州向け)と連動。

  • 気候変動に対するレジリエンス構築が課題。

アフリカ・オセアニア(ナイジェリア、メラネシア、パプアニューギニア)

  • 伝統的・生活密着型作物として定着。

  • 気候適応性が高く、環境と共存した農業モデルの核。

  • 小規模農家支援や国際市場への接続が今後の焦点。


将来の展望と戦略的課題

予測される成長要因

  • 健康志向によるココナッツ製品(オイル、水、シュガー)の需要増

  • アジア以外の新興地域(中南米、アフリカ)の生産拡大

  • アグロフォレストリー的栽培による環境共生型農業の広がり

懸念されるリスク

  • 気候変動による台風・干ばつなどの自然災害

  • 老木化による収量低下と生産者の高齢化

  • 市場価格の不安定さと流通構造の脆弱性

  • 単1品種依存と病害リスク(リトルリーフ病など)


まとめ

ヤシの実は、世界の熱帯地域において、食料・産業・文化のすべてに関わる重要作物です。インドネシアやマレーシアなどの主要生産国が引き続き世界の供給をリードしつつ、中南米・アフリカの新興国も徐々に生産量を増やしつつあります。

2022年には世界生産量が18.83Mtに達し、前年比+3.816%の成長を見せたことからも、今後の需要と生産の拡大余地が伺えます。特に健康・美容・サステナブル志向の市場ニーズと合致している点で、今後も注目の農産物であり続けるでしょう。

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