世界のミルク生産の動向と国別特徴|米中ブラジルの成長と課題

生産量
生産量



世界のミルク生産は2023年に76.56Mtに達し、ブラジルや中国での成長が著しい。気候変動や飼料価格高騰、動物福祉などの課題を抱える中、今後はアジアの需要増と技術革新による持続可能な生産体制が鍵となる。

生産量のデータとグラフ

ミルク生産量の最大と最新

世界 アメリカ ブラジル 中国 インド アルゼンチン パキスタン オーストラリア
最新 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年
最大期 2023年 2022年 2023年 2023年 2023年 2009年 2023年 2015年
最新値[Mt] 76.56 12.29 11.16 7.542 4.47 3.287 2.379 2.236
最大値[Mt] 76.56 12.89 11.16 7.542 4.47 3.378 2.379 2.662
前年比[%] 1.508 -4.688 7.826 4.774 2.759 4.322 3.39 19.07
全体比[%] 100 16.05 14.58 9.851 5.838 4.293 3.107 2.921

 

これまでの推移

ミルクの生産量
最新の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

ミルク生産量についての推移と展望

牛乳をはじめとするミルク製品は、世界の食糧供給において中心的な役割を果たしている。タンパク質やカルシウムを豊富に含み、多くの国で主要な動物性食品とされている。1961年以降、世界のミルク生産は一貫して増加しており、2023年には76.56百万トン(Mt)に達した。ここでは、その長期的推移、主要生産国の構造的特徴、課題、そして将来展望について詳述する。


世界のミルク生産の推移と全体像

世界のミルク生産は、1960年代から工業化や冷蔵・輸送技術の進歩とともに拡大してきた。人口増加と所得水準の向上により、特にアジアや南米での需要が増加し、グローバルな生産拠点も分散する傾向にある。2023年は前年比+1.508%と緩やかな増加を見せており、成長の持続性が窺える。


主要生産国の特徴と変化

  • アメリカ(16.05%) 世界最大のミルク生産国。高度な機械化と品質管理で国際的な競争力を持つが、2023年は前年比-4.688%と減少傾向。高温や飼料コスト増大が影響しているとされる。酪農場の集約化と動物福祉の規制強化が今後の課題。

  • ブラジル(14.58%) 近年急成長を遂げている生産国で、前年比+7.826%と最も目立つ伸びを見せる。南部の温暖な気候が牧草地の発展を促進。国内消費に加え、将来的には輸出国としての地位確立を狙う。

  • 中国(9.851%) 都市部を中心に乳製品の需要が拡大。農村部の中小酪農家と都市型の大規模農場が混在。前年比+4.774%と高成長を継続。食の安全や品質向上への取り組みが進められている。

  • インド(5.838%) 国内需要が非常に高いが、生乳の品質や冷蔵インフラに課題を抱える。前年比+2.759%と安定的な伸びを示す。伝統的な酪農形態が残る一方で、大都市周辺では近代化が進展。

  • アルゼンチン(4.293%) 乳製品の輸出を経済の柱とする。前年比+4.322%と堅調に伸長しており、国際市場向けの生産拡大が期待される。ただしインフレと為替不安が課題。

  • パキスタン(3.107%) 地場消費が中心で、未加工乳の市場が依然として主流。前年比+3.39%と安定成長だが、インフラ整備や衛生管理面における改善の余地が大きい。

  • オーストラリア(2.921%) 前年比+19.07%と突出した増加率。天候条件の改善や輸出回復が背景。アジア市場への輸出強化とブランド戦略に注力。


直面する課題とリスク

  • 気候変動の影響 干ばつや猛暑により、牧草や飼料の確保が難しくなり、特にアメリカやオーストラリアで生産に影響が出ている。

  • 飼料コストの高騰 トウモロコシや大豆価格の上昇が乳価に反映され、採算性が圧迫されている。輸入依存の国ほどリスクが高い。

  • 動物福祉・規制強化 欧米諸国ではケージ飼育や過剰搾乳への批判が高まり、持続可能な酪農への転換が求められている。

  • 貿易摩擦と市場制限 関税や規制の変化が国際取引に影響を及ぼし、安定供給に課題が生じるケースもある。


今後の展望と予測

  • アジア中心の消費増加 中国・インドなどで乳製品の消費が急増。都市化と中間層の拡大が需要のドライバーとなる。

  • 持続可能な酪農技術の普及 AIやロボット搾乳、バイオフィードなどの導入により、環境負荷の軽減と生産性の向上が期待される。

  • 代替乳市場の成長 オーツミルクやアーモンドミルクなど植物由来のミルク代替品が若年層中心に浸透。従来の乳業界との競合が今後激化する可能性。

  • 地域間の格差拡大 先進国と発展途上国の技術・インフラ格差が生産効率に大きく影響。支援や国際協力の必要性が高まる。

 

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