2023年の世界のバナナ生産量は139.3Mtで、インドが26%超を占め最多。中国、インドネシア、エクアドルなども主要生産国だが、ナイジェリアやフィリピンは減少傾向。病害や気候変動が課題となる一方、多様化と持続可能な農業が今後の鍵となる。
生産量のデータとグラフ
バナナ生産量の最大と最新
世界 | インド | 中国 | インドネシア | ナイジェリア | エクアドル | ブラジル | フィリピン | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2023年 | 2023年 | 2013年 | 2015年 | 2022年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 |
最新値[Mt] | 139.3 | 36.61 | 12.06 | 9.335 | 7.308 | 7.198 | 6.826 | 5.871 |
最大値[Mt] | 139.3 | 36.61 | 12.37 | 9.496 | 8.016 | 7.931 | 7.329 | 9.227 |
前年比[%] | 2.784 | 6.041 | -0.5447 | 0.9713 | -8.831 | 17.57 | -1.408 | -0.4796 |
全体比[%] | 100 | 26.29 | 8.661 | 6.703 | 5.247 | 5.168 | 4.901 | 4.216 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
バナナ生産量についての推移と展望
バナナは熱帯〜亜熱帯気候で栽培される果物で、1961年から2023年までに世界の生産量は劇的に増加してきました。2023年の世界生産量は139.3Mt(メガトン)に達し、果物としてはトップクラスの生産量を誇ります。
バナナは以下の理由で世界的に重要な農産物となっています:
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日持ちするため国際貿易に適する
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安価で栄養価が高く、主食に準じる果物として位置づけられる国もある
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農業雇用創出や地域経済の柱としての役割
インド―世界最大のバナナ生産国
インドは36.61Mtで世界の26.29%を占める最大の生産国であり、前年比は+6.041%と好調です。国内の広大な耕作地、熱帯・亜熱帯の気候条件、人口の多さによる内需の強さが成長の背景です。
特徴としては以下の点が挙げられます:
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国内消費が圧倒的で、輸出量は少ない(「非輸出志向型」)
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小規模農家の栽培が多く、雇用吸収力が高い
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加工品(バナナチップス、ジュースなど)への需要も増加中
ただし、モンスーン依存や病害リスクへの対策が必要で、インフラ整備と技術導入が持続的発展の鍵となります。
中国―経済発展とともに拡大する内需型生産
中国は12.06Mt(8.661%)で世界第2位の生産量ですが、前年比は-0.5447%と微減傾向です。中国南部(広西、雲南、海南など)を中心に生産されています。
特徴は以下の通り:
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輸入量も多く、国内生産と輸入を併用する需給構造
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消費者の嗜好が変化し、高品質・無農薬バナナのニーズが拡大
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農業機械化・ICT導入が進み、生産効率の改善が続いている
今後は食の多様化とともに、品種開発やブランド化によってさらなる付加価値が期待されます。
インドネシア・ナイジェリア―国内供給と所得源としてのバナナ
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インドネシア(9.335Mt、6.703%)は前年比+0.9713%で微増。国内消費向けが中心で、島嶼部を含む各地で自給的にも生産されており、安定成長が見込まれています。
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ナイジェリア(7.308Mt、5.247%)は前年比-8.831%と大幅減。気候変動による干ばつや土壌劣化の影響が指摘されており、農業インフラと政策支援が急務です。
両国とも、都市化と人口増加により果物需要が伸びるなか、持続可能な生産体制の構築が課題です。
エクアドル・ブラジル・フィリピン―世界市場を支える輸出国
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エクアドル(7.198Mt、5.168%)は前年比+17.57%という驚異的な増加を見せました。世界最大級の輸出志向型バナナ生産国で、欧米・アジア諸国への輸出が重要な収益源です。輸出インフラと海運網が整備されており、品質管理と国際基準への適応が進んでいます。
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ブラジル(6.826Mt、4.901%)は前年比-1.408%。国内消費向けが中心であり、インフラや気候リスクによって生産変動が起きやすい状況です。
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フィリピン(5.871Mt、4.216%)は前年比-0.4796%。日本や中国、韓国などへの輸出が多く、外貨獲得手段として国家的に戦略性が高い産業です。ただし、近年は台風やバナナ疫病(TR4:パナマ病)への対策が重要な課題です。
バナナ産業が抱える世界的課題
世界のバナナ生産は大きく伸びていますが、深刻な問題も多く存在します:
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パナマ病(TR4)などの真菌性疾患:カヴェンディッシュ種への依存が高いため、遺伝的多様性が乏しく、感染拡大のリスクが大きい。
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気候変動の影響:干ばつ・豪雨の両極端が生産性に悪影響を与えている。
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労働環境と搾取問題:輸出型大規模プランテーションにおける低賃金労働や労働者の健康問題が報告されている。
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価格変動と流通コスト:国際市場での価格競争が激しく、生産者の利益が圧迫されやすい。
今後の展望―多様性・持続性・付加価値が鍵に
将来のバナナ生産は以下の方向に進むと予想されます:
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品種多様化と耐病性強化:TR4に強い品種開発が世界的に進められており、栽培地の拡大も視野に入る。
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加工・付加価値商品の拡大:バナナ粉、スムージー、健康食品への転用が進むことで、消費パターンの多様化が見込まれる。
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フェアトレード・環境配慮型農業の推進:消費国において倫理的・環境的観点での選好が進んでおり、持続可能性の高い生産が競争力となる。
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