世界のハーブ生産動向と主要国比較:インド主導と中東・中南米の成長展望

生産量

2023年の世界のハーブ生産量は2.83Mtで、前年比+3.465%の増加。インドが全体の7割近くを占め、他にトルコやメキシコ、ベトナムなどが続く。健康志向や自然食品の需要拡大が背景にあり、今後も安定成長が見込まれる。品質志向や持続可能性の流れが生産構造に影響を与えている。

ハーブの生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[Mt]全体比[%]前年比[%]
世界2.83100+3.465
1インド1.96169.28+4.45
2トルコ0.34212.07-1.532
3メキシコ0.1184.175+3.224
4ロシア0.08422.976-6.696
5イラン0.06162.175+0.476
6中国0.05231.849+0.313
7シリア0.04861.719+46.75
8エジプト0.03041.075+0.158
9モロッコ0.0291.026+0.819
10ベトナム0.01860.656+12.62
11ケニア0.01850.655+3.752
12アフガニスタン0.01790.633+0.141
13カナダ0.01240.439-0.39
14チュニジア0.01110.392+0.506
15アルゼンチン0.007580.268+2.612
16エチオピア0.004870.172+0.0329
17ウクライナ0.002460.0869-14.29
18グアテマラ0.002110.0746+0.418
19北マケドニア0.001550.0547+0.826
20タンザニア0.001340.0474-0.312
21リビア0.001270.0449
22オーストラリア0.001150.0405+0.0733
23セルビア0.000950.0336+0.214
24ボスニア・ヘルツェゴビナ0.00080.0283+0.889
25レバノン0.0003940.0139+14.43
26パレスチナ0.0001750.00618+34.07
27ブータン0.0001080.00382-5.135
28ジンバブエ8.4E-50.00297+0.527
29マラウイ8.28E-50.00292-0.493
30マダガスカル7.99E-50.00282-0.758
31ペルー4.5E-50.00159-24.24
32エクアドル1.09E-50.000383+0.649
ハーブの生産量
ハーブの生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

ハーブの現状と今後

2023年の世界全体におけるハーブの生産量は2.83Mt(メガトン)となり、前年比で+3.465%の増加を記録しました。ハーブという分類には薬用、香辛料、芳香用など多様な用途の植物が含まれており、健康志向の高まりや自然派製品の需要拡大が背景にあります。

この増加は単なる数量的な拡大というよりも、持続可能性や品質重視のトレンドによって支えられており、付加価値型の農業へと進化している様相がうかがえます。


主要生産国の個別動向と特徴

インド(1.961Mt|+4.45%)

世界全体のハーブ生産の約7割近くを占める圧倒的な中心地がインドです。伝統医療「アーユルヴェーダ」の土壌が強く、ターメリック、バジル、アシュワガンダなどの多種多様なハーブを商業的にも栽培。2023年は安定的な成長を記録しており、内需と輸出の双方に支えられた構造的強さが際立っています。

トルコ(0.342Mt|-1.532%)

トルコは地中海沿岸の温暖な気候を活かしてオレガノ、タイム、セージ、カモミールなどの香辛料系ハーブが盛んです。2023年は小幅な減少を見せましたが、輸出依存型の構造が高く、世界市場の価格変動や気象の影響を受けやすい特徴があります。

メキシコ(0.118Mt|+3.224%)

ラテンアメリカのハーブ大国であるメキシコは、香辛料・薬用用途・民間療法向けの多彩な需要を背景に安定成長を継続しています。特にバジルやオレガノの輸出が盛んで、北米市場との強いつながりがあります。

ロシア(0.0842Mt|-6.696%)

ロシアでは近年、ハーブの産業化が進みつつありますが、2023年は気象条件や経済状況の影響で大幅な減少となりました。広大な国土を活かして多様な気候帯のハーブを生産可能であり、将来的なポテンシャルは高い1方で、投資環境の不安定さが課題です。

イラン(0.0616Mt|+0.476%)

イランは古くから伝統医学(ユナニ医学)や香料文化が根付いており、ハーブ栽培は文化的にも経済的にも重要な位置を占めています。2023年はわずかな増加にとどまりましたが、乾燥地に適した種の開発や技術革新が進めばさらに伸びる可能性があります。

中国(0.0523Mt|+0.313%)

中国では主に漢方薬の原料としてのハーブが重視されています。生産は1部地域に集中しており、国内需要が強い1方、輸出は厳格な品質規制に対応する必要があります。成長は緩やかですが、医薬品・健康食品との連動によって長期的には拡大が見込まれます。

シリア(0.0486Mt|+46.75%)

大きな増加率を示したシリアですが、これは内戦や経済制裁などで1時的に低迷していた生産からの回復によるものです。伝統的なハーブ文化が根強く、地域経済の再建にも貢献しています。特にラベンダーやミントの需要が地域内外で高まっています。

エジプト・モロッコ(0.0304Mt, 0.029Mt|+0.158%, +0.819%)

両国ともに乾燥地農業におけるハーブ栽培が中心で、特にヨーロッパ向けの輸出が経済的に重要です。大規模ではないものの、品質の高さやオーガニック認証を取得する動きもあり、欧州市場との結びつきが強化される傾向です。

ベトナム(0.0186Mt|+12.62%)

東南アジアの中では急成長を見せている国のひとつ。料理用ハーブ(レモングラス、ミント、バジル)の国内外需要の高まりに加え、観光産業との連携も見られます。2023年の2桁増加は構造的な成長の兆しとも言えます。


ハーブ生産のグローバルな特徴と市場動向

アジア圏の支配的地位

インド、中国、イラン、ベトナムなど、アジア諸国がハーブ生産の中心となっており、伝統医学や料理文化と深く結びついています。特にインドは、量・種類・用途のいずれの面でも独走状態にあります。

持続可能性・オーガニック志向の高まり

先進国市場を中心に、オーガニックやフェアトレード認証付きのハーブが評価される時代になっており、これが生産地の栽培方法や品質管理に変化を促しています。

医薬・健康食品・化粧品との融合

単なる料理用ハーブにとどまらず、ハーブはウェルネス(健康増進)産業との融合が加速しています。健康志向の食品、サプリメント、スキンケア製品など、用途が広がることで新たな需要が生まれつつあります。


将来予測と課題

安定成長の見込み

健康・自然・エコロジーといった世界的価値観に合致する作物であるため、年2〜4%程度の安定成長が今後も見込まれます。インドを筆頭とする大国の継続的拡大に加え、ベトナムやシリアなど新興生産国の台頭も鍵となるでしょう。

生産と品質の2極化

ハーブは種類が多岐にわたるため、高付加価値(オーガニック・薬用)とローコスト大量供給型(料理・乾燥品)の2極化が今後進むと考えられます。これにより、生産国は市場ニーズに応じた差別化が求められます。

気候変動と生産地シフト

気候の変動により、水資源・気温・病害虫といった環境条件が変化しており、これが生産地域の地理的分布にも影響を与えつつあります。乾燥耐性のある品種やスマート農業技術の導入が将来的には不可欠です。

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