世界のハチミツ生産動向:国別特徴と環境課題・今後の展望

生産量

2023年の世界のハチミツ生産量は1.894Mtで前年比-0.746%。中国が圧倒的首位で、エチオピアやアメリカが大きく増加。一方、トルコやインド、メキシコは減少傾向。今後は気候変動や農薬対策がカギとなり、品質重視や地域ブランド化による発展が期待される。

ハチミツの生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[Mt]全体比[%]前年比[%]
世界1.894100-0.746
1中国0.47224.94+0.21
2トルコ0.1156.066-2.883
3エチオピア0.08464.467+15.69
4イラン0.08044.245+2.555
5アルゼンチン0.07343.876+0.477
6インド0.07093.741-6.447
7ロシア0.06453.406-3.735
8ブラジル0.06423.389+2.712
9アメリカ0.06293.319+10.56
10メキシコ0.0583.064-9.775
11ウクライナ0.05793.058-8.18
12カナダ0.04162.199+23.38
13タンザニア0.03161.669-0.799
14韓国0.02951.556-1.305
15ベトナム0.02471.302+3.576
16アンゴラ0.02351.239+0.0405
17ケニア0.01720.906-13.28
18中央アフリカ共和国0.01670.883-0.948
19ウズベキスタン0.01580.836+7.719
20チリ0.01220.643+0.792
21ニュージーランド0.0120.634-45.45
22タイ0.01180.621+3.423
23セルビア0.01130.599-20.26
24オーストラリア0.0110.581-3.535
25ウルグアイ0.01050.553+15.96
26イギリス0.009870.521+2.353
27キューバ0.008860.468-3.742
28コロンビア0.008550.452+22.18
29モロッコ0.0080.422+6.667
30チェコ0.00610.322-21.5
31グアテマラ0.006030.318+4.423
32アルジェリア0.006010.317+5.324
33ルワンダ0.00590.312+5.155
34リトアニア0.005670.299-5.833
35アルバニア0.005630.297+4.503
36ミャンマー0.005340.282+41.87
37パキスタン0.004740.25+0.777
38タジキスタン0.004730.25+2.666
39カメルーン0.004650.246-0.634
40アゼルバイジャン0.004550.24-38.89
41モルドバ0.004330.228-3.069
42ネパール0.004310.227-16.64
43ボスニア・ヘルツェゴビナ0.004280.226-9.322
44エジプト0.00420.222+5.503
45カザフスタン0.003990.211+2.007
46マダガスカル0.003990.211+0.0889
47シリア0.003850.203+8.89
48チュニジア0.003740.197+1.389
49セネガル0.00370.196+1.354
50イスラエル0.00350.185-22.22
51スイス0.003390.179-23.69
52北マケドニア0.002950.156-10.02
53キルギスタン0.002950.156-0.825
54イエメン0.002910.154-0.417
55日本0.00240.127-5.094
56ラトビア0.002320.122+0.738
57ベラルーシ0.002180.115+3.362
58ジョージア0.00210.111+5
59アルメニア0.00210.111-4.545
60パラグアイ0.001930.102+0.74
61エルサルバドル0.001920.101-5.519
62ニカラグア0.001690.0892+23.6
63ペルー0.001670.088+1.198
64ノルウェー0.001510.0797-10.65
65アフガニスタン0.00140.0739-7.639
66レバノン0.001160.0614-4.643
67南アフリカ0.001080.0573+0.0304
68ギニア0.001070.0564+1.874
69チャド0.001030.0542+0.209
70ブルンジ0.0010.0528
71コスタリカ0.0009380.0495+17.56
72トルクメニスタン0.0009150.0483+4.497
73ザンビア0.0008970.0474+2.808
74エクアドル0.0008840.0467+0.307
75メラネシア0.0008260.0436+15.13
76ジャマイカ0.0007650.0404+0.0288
77ドミニカ共和国0.0007520.0397-6.558
78スーダン0.0007450.0393+0.0188
79マリ0.0007340.0388+88.86
80リビア0.0007340.0387-5.936
81ボリビア0.0007010.037-0.191
82ベネズエラ0.0006860.0362+3.092
83コートジボワール0.0006240.0329+0.222
84オマーン0.0006230.0329+16.79
85モザンビーク0.0006020.0318-1.284
86東ティモール0.0005880.0311+0.32
87モンテネグロ0.0005310.0281+2.362
88フィジー0.0004860.0257+28.57
89シエラレオネ0.0004770.0252-12.66
90パレスチナ0.00040.0211-27.36
91プエルトリコ0.0003650.0193+4.283
92ヨルダン0.0003470.0183-11.65
93ポリネシア0.0003130.0165-2.906
94ハイチ0.0002850.0151-6.308
95ブルキナファソ0.0002670.0141-23.72
96モンゴル0.0002630.0139+50.48
97ニューカレドニア0.0001840.0097+0.366
98ギニアビサウ0.0001710.00903+2.163
99サモア0.0001680.00889-4.611
100パプアニューギニア0.0001550.00817-0.0968
101フランス領ポリネシア0.0001210.00641-0.97
102イラク0.0001090.00576-6.704
103サウジアラビア0.0001070.00566-5.343
104トリニダード・トバゴ0.0001070.00565+113.1
105パナマ9.32E-50.00492-29.3
106ガイアナ9.05E-50.00478+0.555
107ホンジュラス8.23E-50.00435-3.323
108ベリーズ6.3E-50.00333+3.279
109ブータン4.1E-50.00216+10.04
110スリナム3.49E-50.00184-14.16
111トンガ1.05E-50.000555-1.498
112ニウエ島7.2E-60.00038+0.139
113ツバル4.83E-60.000255+2.331
114バヌアツ1.5E-67.92E-5
115クック諸島9.8E-75.17E-5
ハチミツの生産量
ハチミツの生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

ハチミツの現状と今後

2023年の世界のハチミツ生産量は1.894Mt(メガトン)となり、前年から-0.746%の減少を記録しました。これは全体としては軽微な落ち込みですが、国ごとに増減幅が大きく、気候変動、植生、農薬の使用、蜜源植物の状況といった環境要因が生産に大きな影響を与えていることが示唆されます。


主要生産国の特徴と動向

中国(0.472Mt|+0.21%)

世界最大のハチミツ生産国。安定した気候帯と広範囲の養蜂地、加えて商業的な規模の大規模養蜂によって、年間を通して1定の生産を保っています。2023年もわずかながら増加しており、市場支配力の強さと価格調整能力を持っています。

トルコ(0.115Mt|-2.883%)

高地や山岳地帯の多様な蜜源植物が特徴。特に有名な「松のハチミツ」などの特殊品種もあり、品質面で評価される国です。2023年の減少は干ばつや花の不足が1因と考えられます。伝統的養蜂と近代化の共存が今後の課題です。

エチオピア(0.0846Mt|+15.69%)

アフリカ最大の生産国であり、近年急速に生産量を伸ばしています。小規模農家による伝統的養蜂の技術改善が奏功し、2023年は2桁成長。今後も国際市場向けの輸出強化が進めば、さらに存在感を増す可能性があります。

イラン(0.0804Mt|+2.555%)

山岳地帯と多様な生態系を持つイランは、品質の高いハチミツを産出することで知られています。2023年も増加傾向にあり、内需と輸出の両面で安定した市場を持つ点が強みです。地政学的安定と農業支援政策が成長の鍵を握ります。

アルゼンチン(0.0734Mt|+0.477%)

南米では最も重要な生産国。温暖な気候と草原地帯がハチに適しており、輸出志向の養蜂が盛んです。2023年はやや横ばいだが堅調。ヨーロッパ向け輸出市場の強さが今後の安定を支えるでしょう。

インド(0.0709Mt|-6.447%)

農村部の小規模農家による生産が多く、都市化・気候変動の影響を受けやすい構造にあります。2023年は大幅減少。ミツバチの健康管理と蜜源作物の確保が重要な課題となっています。

ロシア(0.0645Mt|-3.735%)

広大な森林資源と草原による自然養蜂が多いものの、気温の極端な変化や農薬問題が課題。2023年は減少。国土が広い割に養蜂業は分散的で、組織化や近代化が遅れている印象です。

ブラジル(0.0642Mt|+2.712%)

多様な熱帯性植物が蜜源として豊富で、アフリカナイズド・ミツバチの導入により生産効率も上昇。2023年は増加。今後も輸出向け高品質製品の開発と気候適応策の両立が求められます。

アメリカ(0.0629Mt|+10.56%)

生産量は減少傾向にあったものの、2023年は1転して回復。原因は好天と産業養蜂の効率向上。1方で農薬とミツバチ大量死の問題が継続しており、環境負荷低減と経済性の両立がテーマです。

メキシコ(0.058Mt|-9.775%)

ラテンアメリカ有数の養蜂国ですが、近年は天候不順や森林破壊の影響で変動が激しい。2023年は大きく減少。持続可能な養蜂と生態系保護が重要となります。


ハチミツの生産構造と環境依存性

ハチミツは他の農産品とは異なり、生産地の生態系の健全性に強く依存します。ミツバチの活動に不可欠な花粉植物の減少、気温の変化、農薬使用などが即座に生産量に跳ね返ります。

特に以下の要因が世界的に重要です:

  • 気候変動による蜜源植物の開花時期の変化

  • 農薬(ネオニコチノイド系など)によるミツバチへの悪影響

  • 都市化や森林伐採による蜜源の消失

  • ミツバチの病害虫(バロア病など)への対策不十分


将来予測と養蜂産業の可能性

持続的増産は困難だが需要は安定

世界のハチミツ需要は健康志向の高まりとともに増加傾向にありますが、生産側は環境依存性が高く、劇的な増産は困難と見られています。そのため、今後は以下の方向が重要になります:

  • 品質重視の付加価値製品の開発

  • 環境保全と蜜源の保護活動の促進

  • 養蜂技術の標準化・近代化

地域分散とローカルブランド化

中小規模でも独自の蜜源植物を活かしたハチミツを生産・販売する動きが世界各地で進んでいます。「地元で採れたハチミツ」のブランド化は、産業的にも観光資源としても今後の発展が期待されます。

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